第128話 意識改革

 クラウド達が住んでいる王国で、大きな変革が起きた。



 その日は、とある休日だった。


 現在、クテアブランドで急成長しているラウド商会により、本日とんでもない発表があると王国内に知らされる。


 そして、その日がやってきたのだ。




「見て見て! 聖女様よ!」


「きゃー! 可愛らしい!」


 王都に黄色い声が響き渡る。


 彼女達の視線の先には、聖女であるティナと、その義妹となるサリー達がファイアウルフでゆっくり引かれている荷車の上に立って衣装を宣伝していた。


 その衣装は、今まで王国民達が想像だにしなかったような――――――裾の短いスカートであった。


 この世界で女性がズボン以外で足を出す事は、あまり良い目では見られない。


 そもそも教会では肌を極力見せないというルールがある。


 男性も女性も出来る限り肌は見せない。


 最近になってようやく、コルネットと呼ばれている帽子が自由化になり、今では殆どの神父やシスターさんは帽子を付けていない。


 それに習って、多くの王国民もあまり肌を見せない生活を送っている。


 そんな王国民にとって、目の前に広げられているティナ達の衣装はあまりにも衝撃的で挑戦的なモノだった。


「来月の夏から販売予定の新しいスカートです~! ぜひ購入して試して見てください~! スカートの中には、新しくレギンスというモノも一緒に販売しておりますので、一緒に購入してください~!」


 サリーの可愛らしい声が周囲に響く。


 クラウドの従魔であるコメの魔法により、周囲に声が広がる魔法が響かせている。


 普通ならば、それは奇行として見られていたかも知れない。


 しかし、モデルになっているティナを始めとする、サリー、アーシャ、エマに加えて、教会でも有名なソフィアが清純で純白なワンピース型スカートを着ていて、その姿を知っている王国民だからこそ、多くの女性達に指示されるのであった。


 更に、その姿を遠目から見ている男性陣。


 全員鼻血を流すほどに素晴らしい光景に、喜びの声をあげたのは言うまでもない。



 王都をぐるっと回った一行は、貴族街に入る。


 貴族街を守っている兵士達も一行の美しさに息を呑んで見惚れてしまう。


 既に王様から止めない・・ように指令を受けている彼らは、通り過ぎる一行をただただ見つめた。


 美しい彼女達は笑顔で手を振る姿と、可愛らしいスカートから見える生足に全員が時間を忘れていた。


 貴族街では受けない――――と思われた一行だったが、予想は大きく外れる。


 バビロン学園に通っている生徒だけでなく、彼らと繋がりのある多くの貴族の子息達も応援に駆け付けていた。


 男性女性共に黄色い声援を送って、その姿に興味を持つ多くの貴族の貴婦人達も応援に駆け付け、エマの清純なスカートの魅力を堪能する。


 次第に貴族当主達もその姿に魅入られ、王城からの頼みで、王城にまで宣伝に向かう。


 意外にもその姿に、一番喜んでいたのは、いつも固い表情で威厳を保っていた王であった。



 こうして、裾の短いスカートを皮切りに、王国内のファッション事情が急速に成長する事となる。


 ティナ達は学園を二十日程休み、みんなで、王国全ての町を周り、王国全土にミニスカートを普及させる。


 その間、ベルン領では一足先にミニスカートが流行り始め、若い女性達がこぞってミニスカートを着るようになり、それはハイエルフ族やダークエルフ族にも広がる。


 元々美しい外見が多いハイエルフ族とダークエルフ族の綺麗な足を晒すと、ミニスカートの需要はますますあがる。


 実は、今回のミニスカートの流行りで出生率が低い事が悩みだったハイエルフ族とダークエルフ族の出生率が爆増するのだが、まだこの時には、それを予想出来た人は誰一人いない。


 その効果はハイエルフ族とダークエルフ族にだけに止まる事はなく、数年後の王国では空前のベビーブームが到来するのだが、それはまた少し未来の話だ。




 ◇




「や、やっと終わった……」


 最後の巡礼地ベルン領のスロリ街が終わり、僕達は久々のベルン家屋敷に帰って来た。


「みんな、お疲れ様~! 今日は宴会よ!」


 母さんが嬉しそうに次々美味しそうな料理と果実水を運んでくれる。


 …………あんなに頑張っていたのに、母さんってこんなにタフだったんだなと感心する。


「クラウド? 大丈夫?」


「う、うん! ティナこそ疲れたでしょう」


「ううん。私はとても楽しかったわ。最初は恥ずかしかったけど慣れるととても動きやすいし、可愛らしくてミニスカートはいいわ」


 う、うっ。


 未だティナの太ももが直視出来ないというか、視線が吸い込まれてしまう。


 出来るだけ見ないようにしているけど、どうしても目線が向かってしまう。


 女性の太ももをまじまじと見るのは失礼な事だろうから、気を付けないとね。


 その時、僕の前にサリーが仁王立ちする。


 丁度座っている僕と、仁王立ちしたサリーの可愛らしい太ももが目の前に来る。


「お兄ちゃん! サリーの太ももならいくらでも見ていいよ!」


「さ、サリー!?」


「っ! クラウド? 私はまじまじ見られても平気だからね!?」


「て、ティナ!?」


「クラウド~私も気にしないから、好きなだけ見ていいからね~」


「アーシャまで!?」


 三人の素足はとっても素敵なので、眼福なのだけれど、まだ刺激が強すぎるよ~!

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