第124話 人族と魔族

 全ての魔族がうちの領民になる事が急に決まった。


 たった一晩。


 全てはサリーとティナの仕業だった…………。


 寝て起きたら全員従属召喚してくれと言われて、不安な気持ちで使ってみると魔王領にいる全ての魔族が召喚出来た。


 うん。全ての魔族。


 その人数だけでも既に五千を超える。


 全員顔も見た事ないのにどうして従属召喚出来るのか、考えない事にしなくちゃ。



 それと、魔族最強のグラハムさんと他十傑と呼ばれた強い魔族が十人、僕の下で働きたいと申し出があった。


 十傑の一番、最強のグラハム。


 二番、神速のヴァレン。


 三番、魔道のリスタチア。


 四番、格闘のヒュイ。


 五番、暗殺のキロレン。


 六番、切断のヒイロ。


 七番、狙撃のクオン。


 八番、操作のマリオン。


 九番、沈黙のヘルゲン。


 十番、鉄壁のアイアン。


 そして、丁度この十人の下にハーゲルがいるようで、十傑が魔王の座がめんどくさくなり、ハーゲルに押し付けてやっているそうだ。


 今まで通り、ハーゲルには魔族を率いて貰うようにして、魔王と名乗らせようとしたら、本人が恐れ多すぎて大反対。


 そこにサリーから「では君は今日から、魔王ではなく、魔王(仮)だよ! これは決して魔王ではない。なのでいいでしょう?」と説得すると、すぐに承諾。


 こうして他の魔族達を纏める魔王(仮)はハーゲルに就任して貰い、魔族達全員領民というか、従魔になって貰った。


 魔物でも魔族でも従である事には変わらないからね。




 魔王領と呼ばれているこの地は『呪われし大地』と言われていて、大昔この場所で死んだ『暗黒竜』の死体により大地が呪われたらしい。


 定期的に強力な魔物モンスターが多数現れるから、その魔物を倒さないと人間領にまで溢れるとの事。


 これからは僕達が定期的に狩りに行くことにして、魔族達は住処を変えて貰うように話を進める。


 ベルン領の西側に広がっている森、元々ムジナ達が住んでいた森を急いで開発して魔族達が住める街にする計画を練った。


 大急ぎて、父さん、母さん、ハイエルフの重鎮やダークエルフの重鎮も集めて、大開発を進めるように話すと、すぐに工事を着手してくれた。


 数日後には魔族達の引っ越しが決まったので、僕はベルン領に一度戻る事にした。


 僕が行かなくても送れるけど、これだけの大人数を送るんだから、少しくらい立ち会わなくてはと思ったからだ。




 魔族が領民になって数日後。


 ベルン領の西側の森がまっさらな更地になり、凄い数の家(?)が建った。


 その家というのは、僕がずっと前から提案していた前世の記憶から研究を進めていた『マンション』である。


 最初に魔族達に住んでもらい、住み心地を聞いてみたいと思っている。


 まあ、言わば実験だね。


 でも五千人もの魔族を一か所に住まわせるにはこれが一番良いと思う。


 今回挑戦する『マンション』は、『一体型多機能マンション』と呼んでおり、一階と二階が物凄く広い建物で繋がっていて、広いショッピングモールのような作りになっている。


 そこから、それぞれのマンションが上部に建ち、マンションは三階から十二階(住処部分だけなら十階層分)になっていて、各階二十世帯が住めるように設計しているので、一棟で二百世帯が住める。


 そのようなマンジョンが全部で十五棟が並ぶ凄まじい光景が広がっている。


 それぞれ部屋は前世でいう『4LDK』だ。


 それが約三千部屋、三千世帯分だ。


 それにしてもうちの建設組と鍛冶組は凄まじいね~、こんな光景を数日で作れるなんて。


 前世ならこのような建物を作るとなると数年以上かかりそうなものなのに、魔法やスキルの力は偉大かも知れない。


 たしか……建設組のリーダーであるハイエルフ族のメアリーさんから、従魔達の働きが凄く大きいと言っていた。


 そんなこんな事があって、何とか魔族達を迎え入れる事が出来た。


 ――――超巨大な『一体型多機能マンション』を一目見た父さんは、貧血で倒れそうになっていた。




 ◇




 魔族達をベルン領に住まわせてから、僕はその足で王都に戻って来た。


 出来れば一回落ち着きたかったんだけど、まだ魔族達の事が解決したわけではない。


 僕は魔族代表としてグラハムと、みんなを連れて、一緒に教会に向かった。



「クラウド様、お待ちしておりました」


 教皇の間で教皇様が迎え入れてくれる。


 一足先に聖騎士団長ノアさんとソフィアさんが事情説明に来ているので、既に事情は知っているはず。


 その証拠に、教皇様は玉座には座らず、下に立って待っていた。


「教皇様。本日は話し合いに同意してくださりありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ、真実・・を教えて頂きありがとうございます」


 オーラは嘘をつかない。


 実は、オーラって人の感情によって形が変わる。


 攻撃的な時は攻撃的に、悲しい時には悲しく、嬉しい時は嬉しそうなオーラの形を灯す。


 教皇様が纏っているオーラからは、一つの嘘偽りを感じない。


 教皇様が僕に感謝を伝えると、今度は魔族の代表として同行したグラハムの前に歩いて行く。


 そして。


 グラハムの前で両手を地面に付き、土下座をする。



「知らなかったとはいえ、我々教会が今まで魔族にしてきた事、到底許される事ではないでしょう。謝っても謝りきれるとは思いませんが、現教会の代表として謝罪させてください。大変申し訳ございませんでした」



 深く頭を下げる教皇様。


「いや、我々魔族もいつの間にか人族に復讐心を抱いてしまった。此度のスタンピードで多くの騎士達が犠牲になったときく。俺も王の座が嫌になり退けた身、知らなかったとはいえ、謝らせてくれ。本当にすまなかった」


 教皇様に頭を深く下げるグラハム。



 これで、人族と魔族の間の悲しくも長い戦いが幕を閉じた。






――――【三章終了】――――


 日頃『転生してあらゆるモノに好かれながら異世界で好きな事をして生きて行く』を読んでくださる読者様、ありがとうございます!


 今回は3.5章という特殊編成も入れた章になりましたね。

 3.5章も込みで、皆様には楽しんで頂けたでしょうか?


 ここまで書いておいて思う事があるのですが、この作品、一応『スローライフ』を打ち出しているのに、全然スローライフしないじゃんって作者自身がなっておりますが、そこは気にせず書き進める事にしようと思います。


 ではこれからの本編も楽しみにして頂けたら嬉しいです!

 応援の方もぜひよろしくお願いします!


 【追記】

 実は執事ズは黙々と王都屋敷で働いている設定だったんですが、気付いたら一切の言及する場面や台詞もなかったので、執事ズはスロリ街の屋敷で働いていて、理由としましては、学園の中には入れない為、その間はエマママの執事ズとして働いている――――という無理矢理設定にしました……。なので卒業するまで執事ズの出番激減します!(血涙)


 わ、わ、わ、忘れた訳では…………決して………………がはっ!

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