第111話 教会
ティナから衝撃的な事実を教えて貰い、アレンがソフィアさんに対する姿を見ていると、なるほど――とちょっとだけ納得する部分があった。
これが…………恋なんだ。
確かに、ソフィアさんを見ている時のアレンは、嬉しそうだ。
でも会って嬉しそうというより、とんでもないモノを見た時の反応じゃないの?
いまいち分からないや……。
ティナは「クラウドは気にしなくてもいいの。でも二人の邪魔はしちゃ駄目よ?」と話していた。
そこは、僕もちゃんと
ソフィアさんの案内で、僕達は教会を歩く事となった。
「ここは、礼拝堂でございます。多くの信者達が祈りをあげたり、司祭の礼拝を受けたりしております」
高い天井、広い礼拝堂には、沢山の横椅子が並んでいて、ちらほら信者さんが座っており、正面に立っている女神様の像に祈りを捧げている。
休日だからこそ、集まって祈りをあげているのかも知れないね。
「クラウド様」
ソフィアさんが真剣な表情で僕を呼び止めた。
「わたくしが師事している枢機卿から、此度の王国の『休日』を作ったのは、クラウド様だと聞いております。お陰様で沢山の信者の方々がこうして時間を作り祈りを捧げられる時間を作れるようになりました。教会を代表して感謝申し上げます。本当にありがとうございました」
「えっ!? い、いえいえ。僕というよりは、サリーちゃんの活躍の方が……」
「ううん! 『休日』は偉大なるお兄ちゃんの偉業だからね!」
「い、偉大なるお兄ちゃん!?」
「ふふっ、本当に仲が良い兄妹でございますね。本当にサリー様が羨ましい……」
「えっへん! うちのお兄ちゃんは誰にもあげないからね!」
それにしても、女神様の像って何だか神々しいね。
何処かで見た事があるような…………。
……。
……。
……。
「ティナ」
「はい~」
「ちょっと頼みがあるんだけど、いいかな?」
「いいのよ? 私は貴方の婚約者。なんでも言ってね?」
「う、うん。ちょっとあそこに立ってみてくれない?」
僕は女神様の像を指差した。
「それでいいの?」
「うん」
僕達はティナと一緒に女神様の像の前までやってきた。
それにしても、見れば見るほど似てるね。
「はいっ」
ティナが女神様の像の隣に可愛らしく立つ。
「「「「おおおお!!」」」」
礼拝堂に歓声があがった。
それもそうよね。
これは――――
「「「「女神様じゃ!!」」」」
皆さんが言っているように、女神様の像って、どこかティナの面影があった。
いや、逆か?
「やっぱりな。ティナ。女神様の像に似てるよ?」
「そうなの? 私には良く分からないかな~」
それにアーシャもサリーも似てると話すと、ティナはいたずらっぽく笑って「じゃあ、私は女神様だぞ~」って僕に猫のモノマネをする。
今更だけど……本当に可愛いな。
あれ?
「そ、ソフィアさん? どうしたんですか?」
ソフィアさんはそこに正座になり、涙を流して祈りを捧げていた。ティナに向かって。
「あら? ソフィアさん。私は女神様じゃないですよ~」
「こ、これは大変失礼しました。あまりにも女神様に似てらっしゃるので……本当に聖女様に相応しいです。ティナ様」
「ふふっ、ありがとうございます。でもその前に私はクラウドの婚約者ですから」
ううっ、ティナの笑顔がものすごく可愛らしい。
「皆様、大変失礼しました。では次の場所にご案内します」
アレンが心配そうに見守る中、立ち上がったソフィアさんが次の場所に案内してくれる。
僕達が消えるまでの間、信者達から「女神様の降臨じゃ!」と叫び声が飛び交っていた。
彼らの気持ちはとても理解出来る。
だって、似すぎるものね。
「こちらは修道院でございます」
「修道院?」
「はい。我々聖職者達が過ごしている場所になります。寝泊まったり、祈りを捧げたり、生活をしたりと、私達の家のような場所です」
確かに、多くのシスターさんや神父さんが行き来しているし、掃除をしていたり、広場には祈りを捧げている人もいる。
「ソフィアさん」
「はい?」
「…………えっと、答えにくいかも知れませんが、どうして皆さん、
ここで見える神父やシスターの着ている服がみすぼらしい事に気付いた。
「はい。教会では基本的に寄付金や、礼金で生活を賄っておりますが、出来る限り、前線にいらっしゃる聖騎士様方々に回しているのです。人々を守る為に」
「…………なるほど。だから節制生活を送っているのですね」
「はい。悲しい事に、中にはそういう生活よりも
同じ教会でも、派閥が違えばそうなるのかも知れないね。
でも僕としては、どっちが正しいなんて言い切る事は出来ないかな。
出来れば、両方両立できるように頑張った方がお互いにとって良い気がするからだ。
「では、最後になりますが、一番奥にございます『教皇の間』へどうぞ。教皇様がお待ちです」
ソフィアさん。
そこに真っ先に行くべきじゃなかったの?
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