第94話 召喚の使い道
「クーくん!」
魔法陣から出て来た母さんは、目にも止まらぬ速さで僕を抱きしめてくれた。
「母さん。久しぶり」
「半月ぶりのクーくん成分充填~」
「あはは……まだ半月だよ?」
「半月もです! でもこれでいつでも会いに来れる事が分かったわ。これなら毎日来てクーくんにアーくんとサちゃんにも会えるわ」
母さんがとても嬉しそうだ。
屋敷から僕達が一斉にいなくなって寂しかったのかも知れないね。
「お義母様、お久しぶりです」
「ティナちゃん、いつもクーくんをありがとう」
ティナも挨拶を交わす。
そんな久しぶりの再会を遂げた所で、チャイムがなってお昼休みになった。
母さんがバビロン学園にいると色々ややこしくなるので、母さんにはスロリ街に帰って貰ったけど、コメが付いているのでいつでも
現在、コメが付いているのは、僕、母さん、ティナ、アーシャ、アレン、サリー、アイラ姉ちゃんの七人だ。
アイラ姉ちゃんと言えば、アレンの護衛だったけど、アレンが入学しているのでバビロン学園には来れず、護衛でうちに住むのかと思ったら、一旦護衛の任から教会に戻るそうだ。
教会と言っても、地域ごとに派閥が違うらしくて、王都とバルバロッサ領の教会はそれほど仲がよくないらしい。
なので、アイラ姉ちゃんが勝手に王都に来ると大変な事になるとの事だ。
アイラ姉ちゃんの情報だけど、なぜか王都教会には『勇者』の事は伏せているらしいけど、バルバロッサ領で『勇者』が生まれた事は既に広まっているけど、それがベルン家なのは知られてないみたい。
まあ、サリーが入学式で『勇者』という単語を言ってしまったので、いずれ王都中にもその名は広まるだろうと予想される。
休憩に入る前に、僕だけ職員室に向かい、アグナ教官に従魔
まあ、ともあれ無事学園内に従魔を召喚出来るようになって、楽になってよかった。
用事が終わったのでティナ達の元に向かっていた時。
「クラウド~」
後ろから慣れ親しんだ声が聞こえた。
「ん? アーシャ?」
「ここから行くって事は職員室?」
「うん。従魔を呼べるようになったからさ」
「そっか! 朝少し話していた事ね?」
「うんうん。無事出来たし、もっと大きな収穫があったから食事を取りながら教えるよ」
「分かった! 楽しみ~」
と、アーシャの後ろからこちらを恐る恐る見つめる人がいた。
「ん? アリアさん。昨日はロスちゃんの事で色々ごめんね?」
「はひ!? い、いいえ! だ、大丈夫でございます!」
なんか、凄く怖がられる……。
「あはは……そんなにかしこまらくて大丈夫だよ。僕もアリアさんと同じ年だし、クラスメイトだし。少しみんなが落ち着いた頃にまたクラスに行くよ」
「こほん、そ、そう? じゃあ、普通に…………」
「ふふっ、アリアちゃんがクラス委員長になったんだよ?」
「へぇー! 凄いじゃん!」
「むぐっ、く、クラウドくんがいない間に決めてしまって……」
「あ、僕はクラス委員長なんて柄じゃないから、僕がいてもアリアさんかアーシャを勧めたと思うよ」
「そ、そう? うん! 私頑張るね?」
「困った事があったらいつでも言ってね、クラスメイトだから遠慮しなくていいからさ」
「う、うん! その時はお願いします!」
90度の見事なお辞儀のアリアさん。
まだクラスメイト達と溝が埋まるまでは少し時間がかかりそうだ。
アリアさんを見送りながら、僕達もティナの所に合流した。
アーシャ、アレン、エルドに今日あった事を話すと、ものすごく驚かれ喜んでくれた。
それとティナから学園が終わったら、バルバロッサ領に行きたいとの事で、アーシャもそれならガロデアンテ領に挨拶に行きたいというので、夕飯はサリーが準備して、二人には挨拶に向かう事が決まった。
僕は一緒には行けないので、それぞれを領内屋敷に召喚してあげる。
一応何かあると困るので、ティナにはロスちゃんを、アーシャには変わらずイチを同行させた。
何かあったらすぐ連絡が来る事になっている。
二人が向かっている間、僕達はサリーの料理の手伝いをしながら、二人の帰りを待った。
二人は折角だからと屋敷で食事を取ってくるとの事で、久しぶりにベルン家だけの食事会となった。
「こうして四人で食事も随分と久しぶりだな」
「アーちゃんが来てからはティちゃんも来たからね~」
「それにハイエルフやダークエルフの皆さんも時々いらしてました。キルア殿は元気にしているのでしょうか?」
「エルドくんはキルアさんとよく稽古していたよね」
「はい。キルア殿はアレン様を凌ぐ方でしたから」
「キルアさんは本当に強かったんだよ? 兄さん」
「そっか。僕はキルアさんの戦いは見た事なかったな。アレンくんより強いなんてすごく強いんだな」
ダークエルフのキルアさんの意外な一面を知る事が出来た。
うちの領民となったダークエルフ族は、ずっと領内警備隊を担ってくれている。
中でもキルアさんが警備隊を纏める隊長として、防衛に励んでくれていた。
強い強いとは聞いていたが、今のアレンくんより強いって凄いね。
学園のイレイザ先生もそうだったけど、この世界にはまだ僕が知らない強い人が沢山いるんだなと改めに知る事になった。
「兄さん? 魔法が使えるようになったんだから、僕の光の剣、教えるよ」
「ん? でもあれは勇者魔法なんだろう?」
「そうだけど、兄さんは自由魔法が使えるんだから、きっと使えると思う」
「そっか。ならご飯の後、お願いしようかな?」
「うん!」
すっかりイケメンになったアレンが満面の笑顔になった。
爽やかな印象を持たせる甘い顔に、日頃鍛えているからこそ無駄のない体型、何より光り輝く勇者のオーラ。
うちの弟は世界一カッコいいと思う。
食事後、婚約者達が帰ってきて、僕はアレンに光の剣についてあれこれ教わった。
そして、気づけばアレンと同じ光の剣を使えるようになった。
「これで兄ちゃんとお揃いで光の剣が使えるよ!」
久々に嬉しそうにはしゃぐ弟が愛おしかった。
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