第91話 スキルと専属武装

「お兄ちゃん、次の授業だよ!」


「次もあったのね」


「うん! 次はスキル! お兄ちゃんほどになると、きっと凄いスキルがあると思うの。そのスキルを選択するとスキルの詳細が見れるよ!」


「あ~、スキルもあったね。ちょっと見てくる」


「「いってらっしゃい~」」


 また目を瞑り、『ステータス』を意識すると、僕のステータス詳細画像が思い浮かんだ。


 そして、そこに書いてあるスキルは全部で四つ、それを一つずつ選択していく。



 神従。


 持ち主を敬うと思った者を従える事が出来る。


 種族に限界はない。


 ただし、相手の思い次第で発動する。



 このスキルは恐らく従魔の事なんだろうね。


 ロスちゃんもそうだけど、他の子達も僕を敬ってくれるとこれが発動して従魔になってくれるという事なのだろう。




 神教。


 太古(神)の知識を相手に与える事が出来る。



 やけに説明文が短い。


 知識を相手に与えるって、教えるって事かな?




 次元念話。


 神従した者と如何なる場所からでも念話を送りあえる。



 神従した者って従魔達の事ね。


 従魔達とは遠い距離でも念話が可能になっていたのが、このスキルのおかげなのね。




 従属組織。


 神従した者達を組織化して運用出来る。



 ロスちゃんから以前聞いた話では、従魔達の中でカースト制度が存在していると言っていた。


 だから誰も彼もが僕に念話を送って来れない。


 一番上のロスちゃん、ロク、クロ、コメ、イチだけが僕に自由に念話を送ってくる。


 子ウル達だったり、ティナ護衛のホリだったり、僕の従魔ながら僕ではない者に従う子もこのスキルが影響しているかもしれないね。




 スキルを全て見終えて、目を開いた。


「おかえり~お兄ちゃん」


「ただいま。おかげで、ちゃんとスキルも見れたよ。ありがとう」


 またサリーの頭を撫でてあげる。


「サリー、ちょっと聞きたいんだけど、僕から何かを教わると覚えやすい?」


「うん! すぐわかるよ!」


 これが……スキルの力!


 神教の内容がこれで確定したね。


「お兄ちゃんから教わらなかったら、魔法の意味も、詠唱の意味も、ひいては魔物と精霊の違いも分からなかったよ」


「そういや、そんなこともあったな。ロスちゃんとコメ達の時だね」


「うんうん」


 ロスちゃんとコメもすっかり仲良しだけど、初対面の時は喧嘩してたもんな。


 今ではロスちゃんの背中と頭の上にコメ達が乗っている光景を良く見かける。


 偶にロクとも一緒に飛んでいて、あんなに大きい鳥と、小鳥が一緒に飛ぶというとても不思議な光景だ。



「お兄ちゃん。賢者にもスキルが沢山あってね。中には『教え人』というスキルがあって、誰かに何かを教える時、相手が分かりやすくなるスキルがあるよ!」


「そっか! 僕が持っているスキルもそれに近いスキルがあるから、やっぱり間違いなさそうだね」


「えへへ、お兄ちゃんとお揃いスキル!」


 嬉しそうなサリーを見れて、僕も嬉しい。



「クラウド? スキルやステータスを認識したって事は、私みたいになるかも知れないからね?」



 ふと、気になったようでティナが注意してくれた。


「分かった。確かにオーラが見えるようになったおかげか、色んなモノの見え方が分かって来たよ。力とかも気を付けるようにしなきゃ」


「うん。もし駄目だったとしても練習して慣れて行けば、大丈夫だからね?」


「そうだな。ティナもずっと頑張って来たんだもんな。よしよし」


 サリーのなでなでが終わったので、今度はティナをなでなでしてあげる。


 僕もティナみたいに頑張らないとな――――。






 四年前、僕とティナが十一歳の頃。


 まだお互いの事をと呼んでいた頃の話しだ。



 偶々だったけど、アレンとエルドが模擬戦を行う事になった。


 わりと本気の模擬戦だったらしく、回復要員としてティナに待機して貰っていた。


 少し気になったので、僕も一緒にいると、サリーとアイラ姉ちゃんも一緒に見たいと皆で観戦した。




「そう言えば、お兄ちゃんの仲間・・で誰が一番強いのかな?」


 ふとサリーが口にする。


 なんとなくだろうけど、その事が意外な事に火を付ける事になった。


「ん~僕の見立てだと、アレンくんじゃないかな」


「え! アレンくんってもうそんなに強くなったの?」


 驚くサリー。


「そうだよ? 光の剣を複数召喚出来るようになってからは、僕が今まで見てきた人の中では一番強い気がするかな~」


「むぅ……いつの間に……サリーも頑張って強くならないとっ!」


「競うもんじゃないし、気にしなくていいと思うけどな~」


 丁度そのころ、アレンとエルドの模擬戦も増々激しくなったが、見るからにアレンが優位だ。


 光の剣を十個も召喚して戦っていて、まだ本人は動いてすらいない。


 対称にエルドはまだ余裕はあるが、決め手に欠けている感じだ。


「ん~、エルドくんも強くなったけど、サリーとどっちが強いかな~」


「ん~、至近距離で始まらないならサリーの方に分があるかな?」


「そうだね。サリーはフェイント魔法も上手だし」


「ふっふん~お兄ちゃんが魔法を囮にする事を考案してくれたおかげで、サリーは単体にも強いのだ!」


「アイラ姉ちゃんが本気出したら、どうだろう? 場合によってはアレンも危ないと思うけど」


「へ? 場合によって? ……クラウドくん。それってもしかして……」


「ん~、本来の武装? みたいなのがあれば、多分今のところ、うちの中では一番強そうだね」


「へぇー! アイラ姉、専属・・武装あるんだね!」


「え、ええ。…………クラウドくんにはもう見抜かれていたんだね……」


 アイラ姉ちゃんが困ったように笑った。


「あ! そう言えば、ティちゃんも専属武装ってあるんじゃないの?」


「え? わ、私? う、うん……あ、あるよ?」


「ティちゃんは凄いね。アレンくんはまだ展開出来ないらしいよ?」


「あ、あはは…………」


「ん? ティナ様、どうかしたんですか?」


「え!? な、な、何でもないわ!」


 『専属武装』。


 それは光の力の才能を持つ者だけが展開出来る神々の力を宿した武装を言う。


 武器や鎧などが現れるけど、その個人個人で力も内容も違う。


 『聖女』の専属武装は、聖女らしく『杖』が専属武装である事が多いようだ。


 でもティナの専属武装は『杖』ではなかった。


 その日、彼女はその事で悩み始める。


 本来なら回復を象徴する『杖』であって欲しかったけど、『杖』ではなかった彼女の専属武装に悩んでいたのだ。



 数日後。


「ティナ様。専属武装を見せて欲しいです」


「え!? ………………でも………………」


「それはティナ様の一部でしょう? だったら、隠さなくていいと思いますよ?」


「…………クラウド様は嫌いにならない?」


「嫌いになる訳ないじゃないですか!」


「…………」


 ティナは何かを決意したように、僕の前で『専属武装』を発現してくれた。




 彼女の両手に美しい『腕輪』が光り輝いていた。


 本人がそれを隠していた理由は、あの状態だとあまりにもが強くなるとの事だった。


 僕が思わず、「美しい……」と呟くと、真剣に向き合いたいからと、毎日使うようになった。




 ――――そして、稽古では一番強いアレンすら秒殺だった。

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