第89話 仲間のオーラ

 漸くうちのロスちゃんを怖がる理由を知り、クラスも落ち着き(?)を見せた。


 波乱の自己紹介を終えただけで、昼休みを知らせるチャイムが鳴った。


 未だ僕を警戒しているクラスメイト達の視線に苦笑いしながら、一層にある食堂に向かった。


 食堂では既にティナとサリー達が待っていて、みんなで合流した。



「クラウド? 何だか顔が優れないけど何かあったの?」


 ティナにすぐばれてしまい、クラスであった事を話した。




「え!? お兄ちゃん。今まで『ステータス』見た事なかったの!?」


「そうなんだよ。サリーからもレベルとかステータスとか聞いたことなかったから」


「なんだ……てっきり知っているものかと……そっか~だからお兄ちゃんって『災害級魔物』を見ても気にしなかったんだね?」


「そうなんだよ」


 僕はテーブルの上に緩く伏せているロスちゃんの頭を撫でた。


「そう言えば、サリーもロスちゃんのあのオーラって見た事あるの?」


「もちろんあるよ? ティちゃんもでしょう?」


「ええ、才能開花した日に、ロスちゃんのオーラを少し感じてしまって、そんなロスちゃんを従えているクラウドがとても気になってたのよ?」


「…………あ~、辺境伯様とティナとの初対面の時、睨まれたっけ」


「睨んでないよ! 怖かっただけです! お父様も同じだったと思うわ」


「そうなんだ……エルドくんも初対面の時、ロスちゃんに師弟関係を申し込んでいたね?」


「はい、ロス師匠の凄まじいオーラを感づいてしまいましたね」


 エルドが懐かしむように話した。


 あの時は本当に驚いたものだ。


 いきなり弟子にしてくださいーなんて言われたからね。


「でもサリー達はどうして慣れたんだ?」


「ん~、お兄ちゃんの従魔でしょう? どんなに怖いオーラでもお兄ちゃんの従魔なら味方だから、ロクとかクロとかも全然平気だよ? クロの初対面はちょっと怖かったけどね」


「うんうん。クロの初対面が一番怖かったかな」


 そ、そっか。


 クロはオーラというか、本体が既に怖すぎるものな。


「それにしても、ステータスを開くまでオーラが見えてなかったのは、どういう理由があるのかな……」


「お兄ちゃんの話から推測するに、ステータスを開く事で、スキルやステータスを認識出来るようになるんじゃないかな。今まで赤ちゃんの頃・・・・・・に無意識で開いてない人がいるって記録されていなかったけど、もしかして、お兄ちゃんが人類初かも知れないよ?」


 ……。


 ……。


 ……。


 あああああ!


 思い当たる節しかありません!!


 前世の記憶があるまま生まれたから、無意識も何も、意識がバリバリありました!


 無意識で開くなんて、とても無理だよ!


「お兄ちゃん、凄い顔になってるよ?」


「へ? あ、あはははは…………」


「それにしても、お兄ちゃんが出来ない事があるなんて、珍しいというか、不思議といくか」


「ん? 僕だって何でも出来るわけじゃないからね。魔法も使えないじゃん?」


「魔法か――――お兄ちゃん実は魔法使えるんじゃない?」


「え? 魔法なんて使えないよ?」


「ん? お兄ちゃん使えるでしょう?」


「????」


 サリーとの会話が全くかみ合わない。


 使えるのが当たり前のように話しているけど、転生して真っ先に思ったのが、魔法って使ってみたい! という事だ。


 だって、向こうで生まれた人なら誰でもそう思うはずだ。


 でも使えなかったんだよね。


「あ! もしかして…………お兄ちゃん、次の授業はサリーと特別授業ね!」


「次の授業!? 先生に断りを入れないと……」


「私が言っておくから!」


「そ、そう? 分かった」


 何故か、次の授業がサリー先生との授業に決まって、僕達は食事を楽しんだ。


 ステータスを開いたおかげで、みんなのオーラを見れるようになったのも大きい。


 僕は初めて見るみんなのオーラを眺めた。



 アーシャは才能はないので、特に大きなオーラはないけど、イチが常に一緒にいるので、少しずつイチのオーラが染みてるように見える。


 エルドは激しい炎みたいなオーラだ。真っ赤に燃えていて、常に戦いを求めているかのような雰囲気が見て取れる。


 サリーは真っ青な炎がみたいなオーラで、とても静かに燃えている感じだ。中からは常に探求心を見て取れる。


 アレンは勇者らしく、光り輝くオーラだった。学園に入ってから女子生徒達がアレンを見かけると目で追っていたので、その理由も分かるなと思う。オーラですらイケメンって、うちのアレンは男の中の嫉妬の対象になってもおかしくないと思う。


 最後にティナ。


 一言でいえば――――美しい。


 その一言に尽きる。


 元々美人なのもあるけど、オーラは見る者全てを癒してくれるかのような、神々しいオーラだった。


 あのオーラで平手打ちヒールされたら、そりゃ……みんなイチコロな理由が分かった。



 お昼終わりのチャイムが聞こえ、サリーが職員室に、僕はサリーの指示通り実技訓練場に向かった。




 ◇




「お兄ちゃん、先生から寧ろ暫く来ないで欲しいってさ」


「ええええ!?」


「何でも、生徒のみんなさんがロスちゃんとお兄ちゃんを怖がっているみたいよ?」


「そ、そっか……それは仕方ないね」


「ふふっ、ではその間に、サリーとの訓練ね!」


「それは助かるな。サリー先生、よろしくお願いします!」


「はい! お願いされました!」


 実技訓練場には僕とサリーとティナの三人だけ残った。


 他のメンバーは普通の授業に行ったけど、ティナもこっちの方が気になるからとこちらに来たそうだ。


 アレンとティナは、完全自由が許されていて、サリーに関しては生徒というより、先生をお願いされているそうだ。


「ではサリー教室を始めます!」


 僕とティナがぱちぱちと拍手を送った。

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