第88話 みんなが怖がっている理由

「えっと、みんな? 落ち着いて? こんなつぶらな瞳のロスちゃんだよ?」


 僕は泣き叫んで震え上がっているクラスメイト達にロスちゃんを持ち上げて前に出した。


「「「「「全然つぶらな瞳じゃないよ!!」」」」」


 一斉にツッコミが入る。


 あれ?


 スロリ街では大人気なんだけどな……?


「く、クラウドくん……き、君は平気なのかい?」


 クラスメイトの一人、アギラくんが聞いて来た。


「ん? こんな可愛らしい子犬だもの。寧ろ可愛いんだけど……」


「えっと、えっと、…………見えてないの?」


 ん?


 見えてない?


 どういう事?


「何が見えてないの?」


「そ、その、その従魔様の――――オーラが」


「オーラ?? みんなはロスちゃんのオーラが見えるの?」


 全員が一斉に頷く。


 ロスちゃんを正面に持ち返ってつぶらな瞳を覗いてみた。


 全く何も見えないんだけど……?


「ロスちゃん」


【あい】


「なんか、オーラとか出してる?」


【うん】


「えええええ!? 出してるの!?」


【うん!】


「……それ消して欲しいんだけど」


【ご主人がそういうならいいよ~】


 すると、クラスメイト達から安堵の吐息が聞こえて、従魔達も漸く落ち着きを見せた。


 ん? ……何となくだけど、教室内にあった少し重い空気感的なモノがなくなった気がする。


「あ、少し重い空気みたいなのがなくなった気がする」


「あ~私もそう言われれば、そう感じるかな?」


 アーシャも同意してくれる。


 クラスメイト達はそれどころじゃないらしく、僕からどんどん離れて教室の端で固まっている。


 先生もすごく冷や汗をかいているように見える。


「えっと、うちのロスちゃんが何かしていたみたいでごめんなさい。でもこんなに可愛い子犬なので、愛嬌だと思って――――」


「「「「「そんな愛嬌があるか!!」」」」」


 既にクラスメイト達の謎の一体感が生まれていた。


 くっ……僕とアーシャだけ取り残されている感じがする。


「く、クラウドくん? 様?」


「普通に呼んでくれていいよ」


「そ、そう……その、子犬様はどんな魔物かしら?」


 アリアさんが恐る恐る聞いてくる。


 中には耳に手を当てている聞きたがらない子もいる。


「ロスちゃんはロスちゃんだよ?」


「そ、そう…………えっと、あのオーラは、クラウドくんには見えていないんだよね?」


「あ、そうだね。今まで見た事はないかな?」


「…………そんなに強い従魔を連れているのに、どうしてオーラが見えないのかしら……無才なら分かるけど」


「ん? 無才と何か関係があるの?」


「えっと、才能があるモノは、相手の何となくの強さが目で見えるの。それを総じて『オーラ』と言うのよ。そ、その子犬様のオーラは今まで見た事ないくらい恐ろしかったわ」


 なるほど!


 だからみんなその『オーラ』を見て怖がっていたのね?


 確かに、ロスちゃんは『災害級魔物』ケルベロスと言われていたけど、それが関係しているのかな?


「でも僕も才能はあるはずなんだけど、どうして見えないんだろう?」


「…………才能持ちでもレベルが1だと見えなかったりする事もあるみたい? 殆どの人は見えるけどね」


 あ!


 レベル!


 まだレベルの話が出て来た。


「えっと、そのレベルって何?」


「「「「「えええええ!?」」」」」


 安心の一体感。


 隣のアーシャも驚いていた。


「あら? クラウドくん。レベルって知らないの?」


「へ? アーシャは知ってるの?」


「もちろんよ? 世界に生まれし全ての者に与えられる加護。それが『ステータスの加護』であり、その中でも最も重要なのはレベルだわ。レベルが上がれば上がるほど強くなるからね」


「えっと……生まれて十五年経つけど、初めて聞く言葉かな……」


「「「「「えええええ!?」」」」」


「じゃあ、クラウドくんは今まで自分自身の『ステータス』を見た事がないの?」


「へ? 見れるの?」


「「「「「えええええ!?」」」」」


 僕以外全員から有り得ない事でも言われたかのような反応だ。


「心の中で『ステータス』を意識すれば、開けれる・・・・と思うわ」


 えっと、心の中で、『ステータス』っと。


 ……。


 ……。


 ……。



 名 クラウド・ベルン


 種族 人族


 才能 ちょうきょうし


 才能レベル 3/10


 レベル 165/1000


 ステータス SS


 スキル 神従(広範囲)

     神教

     次元念話

     従属組織


 ……。


 ……。


 あの。


 一つだけ言いたい。


 十五年間生きてて、こんな事出来るとは一度も思わなかったよ!!!




「あ、見れたよ……ありがとう、アーシャ」


「ふふっ、なんだかそれもクラウドくんらしいわね。それで、レベルとか見れたでしょう?」


「う、うん」


「ふふっ、他人の『オーラ』も見えるようになったんじゃない?」


 アーシャに言われて、周りを見渡す。


 今までは普通の見え方だったけど、『ステータス』を開いてからは、みんなの身体の周りに色んな色のいろんな形の『オーラ』が見えた。


「へぇー! これがオーラなんだ! 面白いね。アリアさんのオーラが一番強そう」


 クラスメイトの中ではアリアさんのオーラが一番色が濃くて大きい。


 オーラが見えるのに、視界は普通なとても変な感覚だ。




「あ、ロスちゃん。先のオーラ見せて」




 少し落ち着いていたクラスメイト達がまた全員で教室の端に移動した。


【い~よ】


 緩く話したロスちゃんが、『オーラ』を解放した。


 ――――――――。






「ロスちゃん!! それだめ! 絶対だめ!!」






 ロスちゃんから禍々しいどす黒い化け物のオーラが放たれていた。


 普段の可愛らしいロスちゃんからは想像も出来ないくらいであり、その恐怖さをいうなら見た人はたぶん一生悪夢に出てきそうだ。


 何となく、相手の強さが分かるようになった僕に一つ分かった事があった。





「あれ? ロスちゃんって実はめちゃくちゃ強い?」


 僕の視界に映っている全ての存在を足しても、ロスちゃんに勝てる気がしなかったのだ。




――――注意書き――――

 ここまで読んだ方に誤解がないようにするために書いておきます。

 ここにきて、ステータスを出したのは、思いついたから――ではなくて、本来の予定通りです!

 今までそれっぽい節があったのは、この日の為の伏線です!


 それとステータス先輩の出番はこの先ほぼないです。

 スキルは近いうちに説明の予定です!

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