第78話 召喚

 スロリ森が二倍に増えた。


 スロリ森の管理者イアのおかげで、ドライアードからもう一人来てくれることになって、イアに似た美人ドライアードがスロリ森の隣に新たなスロリ森を作り、大きな森が出来上がった。


 新たなドライアードは、ライアと名付けてイアと共に森の管理をお願いした。


 たった数時間で森が完成すると、建設組に頼みハイエルフ族同様、木の上にどんどん家を建てていった。


 ダークエルフ族の中には建設系才能持ちがいなかったようで、今まで簡素な家に住んでいたらしくて、出来上がった家には大袈裟に喜んでくれた。




 僕はハイエルフ族からヘリオンさんとレーラさんを、ダークエルフ族からダリアンさんとキルアさんを呼んだ。


「以前ダリアンさんが息子なら『風神の短剣』の持ち主で間違いないと仰っていましたね?」


「はっ」


「では、はい」


 僕は持っていた『風神の短剣』こと『召喚の短剣』をキルアさんに渡した。


「っ!? クラウド様? どうしてその短剣を僕に?」


「コメとイチが言うには、召喚さえしてしまえば後は持ってなくてもいいらしいですから。キルアさんが本当に召喚出来るなら、召喚しておいた方がいいと思いまして」


「…………かしこまりました。この試練。受けさせて頂きます」


 し、試練…………そんな重いモノではないんだけど。


 短剣を持ったキルアさんが真剣な表情で目を瞑った。


 集中し始めるキルアさん。


 その時。


 キルアさんの周囲に弱い雷が現れ始めた。


 その雷は段々と集まり、キルアさんの前にイチそっくりな精霊が一体現れた。


 イチは大型犬くらいの大きさがあるけど、キルアさんが召喚した精霊は片手に乗りそうな大きさだった。


「なっ!? キルア!! 雷の精霊様を召喚したぞ!!」


 ダリアンさんが嬉しそうに叫んだ。


 目を開けたキルアさんは小さな精霊の前に跪く。


 すると、ちいさな雷の精霊ミンクがキルアの肩に飛び乗った。


「クラウド様。此度の『召喚の短剣』。感謝申し上げます。これで我々ダークエルフ族も救われるというモノでございます……本当に…………ありがとうございます」


 大きな涙を浮かべたキルアさんが感謝を口にした。


「いえいえ、これもキルアさんがダークエルフ族を一身に背負って頑張った結果です。ダークエルフ族も族長を僕にしたいと申し出てくれたので、既に族長は僕ではありますが、ダークエルフ族を率いるのはキルアさんです。これからもダークエルフ族の為にも頑張ってくださいね」


「ははっ! これからもクラウド様に忠誠を尽くします!」


 また忠誠を誓われたけど……最近言われ過ぎてて、もはや挨拶なのではないのかと思うようになった。


「では次は――――レーラさん」


「へ?」


「レーラさんもどうぞ?」


「……えええええ!? わ、私!?」


「はい」


「えっ!? でも、私は無理だよ? 『風神の短剣』は、村にいた頃に挑戦した事あるけど……シルファ様は出て来てはくれなかったわよ……?」


「でもそれは昔でしょう? 今なら出来るかも知れないですよ? それとも――――ダークエルフ族だけが召喚して、実はハイエルフ族からは召喚出来ずに、ただ『風神の短剣』を守っただけの種族と言われますか?」


「っ!? や、やらせてください!」


「はい。どうぞ」


 恐る恐る短剣を受け取ったレーラさん。


 レーラさんは短剣を握り、祈るかのように握り閉めて目を瞑った。


 以前は発現しなかったと言っていたけど、それは昔の事であって、今ではない。


 一度失敗したからといって、そこで終わりなはずはないのだ。



 祈るように短剣を握り震えているレーラさん。


 しかし、何も起きない。


 少し時間が経つと、レーラさんが肩を落として目を開けた。


「…………やっぱり私では…………」


 その時、空から一筋の光がレーラさんを照らした。


「……えっ?」


 皆が空を見上げる。


 空の上にちいさな雲から光が降り、その中からコメとそっくりな小鳥が一匹、降りてきた。


 その小鳥ことシルファがレーラさんの頭の上に乗った。


「レーラ!! シルファ様が顕現なさったぞ!!」


 ヘリオンさんが思わず叫んだ。


 それを聞いて漸く現状に気付いたレーラさんの目には、大きな涙が溢れ出た。


「や、やったよ!! シルファ様が!」


 コメそっくりな、そのシルファは、コメと性格が似てるようでドヤ顔を決めていた。


「シルファ様もミンク様も、ハイエルフ族とダークエルフ族をお願いしますね?」


 二人の精霊にそう話すと、凄い驚いた表情になって、僕の前に出て来て頭を下げた。


「えええええ!?」


【主様~この子達は、精霊の中でも下の下だよ? 私達のように精霊王に近い僕達を召喚した主様に『様』で呼ばれると恐れ多すぎるんだよ~?】


「あ、あはは……二人ともごめん。ちゃんと両種族をお願いね?」


 何故か自分が召喚した訳ではない精霊様から、「「ははっ」」って答えた聞こえた気がした。




 ◇




「サリー先生~」


「ふふっ、何だかそれ久しぶりね、お兄ちゃん」


「最近色々あったからね」


「そうね~サリーの目が離れたらすぐに婚約者が増えているし~」


「あ、あれは……で、でもまだ婚約者じゃないよ?」


「へぇー、お兄ちゃんはお兄ちゃんが好きでこんな辺境の地に来てくれた辺境伯令嬢を捨てるんだ?」


「す、捨てたりはしないけどさ……。そ、その、なんだ……サリーにも許可を貰わないと……」


「へ? あたし?」


「そ、そりゃ……サリー達の目に適う人じゃないと、ベルン家のお嫁さんにはなれないからね」


「えっ…………う、うふふ、えへへへ」


 サリーが凄く嬉しそうに笑い出した。


 そんなサリーの頭を優しく撫でる。


 気付かない間にこんなに大きくなって……僕だけじゃなく、弟と妹もちゃんと大きくなっているなと思う日だった。






――――【二章終了】――――

 日頃『転生してあらゆるモノに好かれながら異世界で好きな事をして生きて行く』を読んでくださる読者様、ありがとうございます!

 気付けば二章も終わりました……毎日投稿していると意外に速いものですね。

 二章は少しシリアスパートが多かったと思いますが、また三章からもこの作品らしい面白さを出せるように頑張りたいと思います。


 三章からですが、なんと、クーくんたちが急成長します!(身体的に)

 そして、新たに始まる学園生活……つまり三章は学園編になります。


 とんでもない(?)展開と、クーくんたちの愉快な学園生活をお楽しみに~!


 それとロスちゃんの喋り口調がわりとバラバラなんですけど……そこはご愛嬌ってことで…………(血涙)



 あっ!

 まだ作品フォロー、★3つ、作者フォローがまだの方はぜひお願いします!

 これからも毎日投稿を頑張って行きます!

 応援の程、よろしくお願い致します!

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