第75話 新たな領民
みんながそれぞれの目標に向かって頑張っていた頃。
遂にあの種族がやってきた。
【ご主人様! 南側から訪問者だよ~】
「ん? 分かった! 今から行くよ!」
ロクから訪問者がいると言われたので、スロリ町の南にやって来た。
スロリ町には南側にも小さな入り口があって、そこから少し平原があって、向こうに森がある。
その森を進んだ先にあったのが、『森の村』だったり、ずっと先に砂漠があったね。
その森の中から誰が来るのだろうか?
暫く待っていると――――
森の中から、肌が黒いエルフ達が出て来た。
「「「「クラウド様!!」」」」
森の中から現れたダークエルフ達が僕を見つけると、嬉しそうに声をあげた。
どうやらダークエルフ達が遊びに…………ではなさそう。
何故かみんな大荷物を持っていたりする。
…………まさか。
ダークエルフ達が僕の前にやってきて跪いた。
「クラウド様。我々ダークエルフ族、全員で参りました」
「ひ、久しぶりですね? 全員……?」
「はっ、これから我々一同クラウド様に忠誠を誓います」
「へ? あ、あはは…………もしかしてうちに引っ越す……とか?」
「はっ、これからクラウド様に精一杯仕えさせて頂きます」
あはは…………僕としては良き
「えっと、分かりましたけど、皆さんも森で住んでいたんですか?」
「はっ、森ならどこでも構いません」
「そっか…………ん~、じゃあイアにまた森作りをお願いしなくちゃ」
「イア……様ですか?」
「ええ、それじゃここにいても大変ですから、一旦スロリ森に向かいますか」
僕はダークエルフ達を連れて、スロリ森に向かった。
「クラウドくん!」
スロリ森に近づいた時に、ハイエルフ達が出迎えてくれた。
「レーラさん。こんにちは~丁度いいですね、ハイエルフ達を集めて貰えますか?」
「……わ、分かったわ」
ハイエルフ達は不安そうな顔で僕の後ろに控えているダークエルフ族を見つめて待っていた。
「あ、イア! いるかな?」
森の事でも相談があるからイアを呼んでみる。
ハイエルフ達の前に空から沢山の葉っぱが舞い降りた。そして、中から緑色の髪が見え、可愛らしい女の子の姿が現れた。
「クラウド様。お待たせしました」
「イア、久しぶり~、全然待ってないよ。今日はお願いがあったから来たんだ」
「そうみたいですね。クラウド様の後ろに控えている彼らの事でしょうか?」
「うん。ハイエルフ達を集めたら説明するつもりだけど、ダークエルフ達にもここで住んで貰おうかなと思っているよ」
「ふふっ、クラウド様は相変わらず容赦ないのでございますね」
イアが少しいたずらっぽく笑った。
そのタイミングで、ハイエルフ達の後方からハイエルフ族全員がやってきた。
向こうに待機させているダークエルフ達を見て顔色が曇る。
まぁ、元々敵対していたからね。
「はーい! みんなここに集まって!」
ハイエルフとダークエルフ達を一か所に集めた。
◇
「イア、スロリ森にダークエルフ達が住める場所は残っているかな?」
「無理矢理なら住めるとは思いますが、間違いなく両族で確執が生まれるかと思います」
「そっか…………森を広げる事は出来る?」
「可能でございますが、今のままでは無理です。私が既に管理しているスロリ森はほぼ限界の力になっています。ですので、新たなドライアードを連れてくる必要がございます」
「新たなドライアードか…………コメ達にお願いするしかないか」
その時、ハイエルフ族から元族長のヘリオンさんが前に出て来て、僕の前で跪いた。
「クラウド様」
「ヘリオンさん?」
「大変申し訳ないのですが、我々ハイエルフとダークエルフの共存は難しいかと申し上げたい……」
「ん? 掟なら撤廃したはずなんですが……」
「いいえ、掟ではなく、ハイエルフとダークエルフは決して相容れない種族なのです」
「相容れない種族? 何か理由があるのですね?」
「はい」
「……分かりました。ダークエルフ族のリーダーさん。代表して前に来てください」
するとダークエルフ族のリーダーさんと、もう一人、若いダークエルフが出て来た。
それを見たレーラさんも、すーっとヘリオンさんの隣に出て来た。
「初めての顔もいますから、まず自己紹介からしましょう。僕はクラウド。このベルン領の嫡男であり、ハイエルフ族の族長をしています」
「ハイエルフ族の副族長ヘリオンだ。こちらは娘のレーラだ」
「……ダークエルフ族の現族長ダリアンと申す。こちらは息子であり、我々ダークエルフ族の最強戦士キルアと申す」
キルアと紹介された若いダークエルフが大きく頭をさげた。
「初めまして、ダークエルフ族の次期族長候補でしたキルアです。本日はクラウド様にお会い出来、光栄でございます。父と兵達を助けて頂き、心から感謝申し上げます」
とても礼儀正しい方に見える。
「ではこれからハイエルフ族とダークエルフ族の会談を始めます。まず第一にダークエルフ族もスロリ領で住んで貰う方向で話し合いたいと思います」
ハイエルフ達は暗い表情に、ダークエルフ達が安堵した表情になった。
「ただ、僕はベルン領の嫡男でありながらハイエルフ族の族長です。ダークエルフ達には申し訳ないんですが、どうしてもハイエルフ族の肩を持つ事もあるでしょう。ただ、ハイエルフ族とダークエルフ族の間に何があったか分からないので、それをしっかり教えてください。それでお互いに話し合ってみましょう」
その場にいた皆が大きく頷いた。
その後、ダークエルフ達が来た事を嗅ぎ付けたお母さんとアレン、サリー、ティナ令嬢、アーシャ令嬢、ロスちゃんがやってきた。
「お兄ちゃん~」
サリーが楽しそうに手を振って来た。
ハイエルフとダークエルフの暗い雰囲気の中に、サリー達が混じる事で、少し明るい雰囲気となった。
こうして、僕達はハイエルフ族とダークエルフ族の長い長い過去の出来事を知る事となった。
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