第46話 学校建設
「クラウド様、もう一つ質問があったと言っていたけど、何かしら?」
アルフレットさんから執事を紹介してくれると言われ、舞い上がっていた僕にティナ令嬢が首を傾げながら聞いて来た。
いかんいかん、執事が楽しみになっていて忘れていた。
「はい、一般的な平民達の字の読み書きや、計算ってどのくらい出来て、どのくらいの歳で学べるのですか?」
「教育についてですね。平民は基本的には15歳になるまでは何も学べません。商人の息子なら親から計算を覚えたりしますが、普通の平民となると簡単な計算を親から学ぶくらいですね」
ふむ……つまり、前世と比べてこの世界の教育普及率は低いという事かな?
「15歳になる前の貴族なら家庭教師を雇って学ぶのが一般的です。平民の中でも富裕層なら『学び舎』に通わせる家庭もありますが、一般的な家庭ですと学ばせる程の財力は厳しいでしょう」
「ご丁寧にありがとうございます! とても参考になりました!」
「ほっほっほっ、何かまた疑問がございましたら、いつでも聞いてくださいませ」
「ありがとうございます!」
こういう博識な人がいれば、情報が欲しい時に助かるかも……。
うちにも一人いるんだけど、一つ聞くと止まらなくなるから聞きづらいのよね。
「それにしても、クラウド様はどうして学び舎を気にするの?」
ティナ令嬢が不思議そうな眼差しで僕を見ていた。
「ええ、うちの町でしっかり計算が出来る人があまりいなかったので、ずっと気になってまして、今日サリーがティナ様に教えているのを見て思い付いたんですよ」
「思い付いた?」
「はい、他の教育はともかく、計算は非常に大切な知識なので、うちの町で必須にしようかなと思ってます」
「え!? 必須??」
「はい、僕やサリーがこれから
「ええ!? とても素敵! しかも、クラウド様自らやるのね!?」
「はい。まだサリーには相談してないけど……」
「お兄ちゃん! 私も大賛成! それやりたい!」
「ほっほっほっ、クラウド様はとんでもない事を考え付きましたね。話の流れから恐らく
勿論、町民達は無料にするつもりだ。
寧ろ、無料じゃなきゃ意味がないと思っているし、町民達が賢くなれば、それは返って僕の家にとっても得だからね。
以前、ビッグボアの詐欺の件もあったから、そういう場も設けたいとずっと思っていた。
「はい。寧ろ、無料でなければ意味がありませんからね。そのうち慣れてきたら昼は子供、夕方は大人達に教えるようにしたいなと考えてます」
「とても素敵な事だと思います。スロリ町民達がとても羨ましく思えて来ました、ほっほっほっ」
「まだ理想ですから、いざやってみると大変かも知れませんからね……いつか色んな事をタダで学べる学び舎なんて作れたら嬉しいかも知れませんね~」
その言葉を聞いたアルフレットさんが一瞬、何かを思う表情になったが、直ぐに笑顔になり、「クラウド様なら必ずや成し遂げれると思います。微力ながら、何か手伝える事がありましたら、何でもおっしゃってください」と言ってくれた。
隣で聞いていたティナ令嬢も「私も手伝う!」と張り切っていた。
また一つ目標を見つかった僕は、スロリ町に帰って来て、早速『学校』の設立に取り掛かった。
◇
次の日。
早速、町の空いていた平屋を改築し始めた。
カジさん擁する鍛冶組だったが、建築系統の才能を持っている人も多数いて、先日のスロリ森の村建設時、大きな力となっていた。
その時、ハイエルフ族にも建設系統の才能を持っていた人がいて、その中でもメアリーさんという女性の方が最も秀でな才能を持っており、カリスマ的な指揮を執っていた。
その事から、ベルン領の鍛冶組とは別に、建設組を作る事となり、リーダーをメアリーさんとしてハイエルフだけでなく、鍛冶組からも数人移籍して建設組が完成していた。
「クラウド、この建物でいいのかい?」
「はい! お願いします! お父さん!」
「ああ、では建設組はこの建物を改装して貰うよ。ここを――――――」
事前にこういう建物にしたいって要望をお父さんに伝えていて、お父さんが次々指示を出して、改築が始まるとメアリーさんが指揮を執った。
それにしても、お父さんってこういう指示を出す事がとても上手である。
いつもは気弱なお父さんなイメージがあったんだけど、こんな辺境の地スロリ町がここまで発展していたのも、お父さんの采配のおかげだと知った時には、今まで気弱なお父さんと思ってごめんなさいをした。
それにしても建築才能があると、とんでもない速度で家が建つというか、改築した。
まさか……たった一日ところか半日で完成するとは思わなかった。
「クラウド様、ご要望通り部屋は広めに取っており、椅子を中央に向かうように段差を付けて扇状にしました」
「メアリーさん、ありがとう!」
「いえいえ、それにしてもクラウド様は凄い事を考え付きましたね。こうやって中央を向かせる事でひな壇を顔を真っすぐに見れるのは、とても良い考えだと思います」
「ええ、わざわざ首を横にしないと見れないとなると、疲れますからね。それにひな壇から生徒を見た時もこっちの方が一目でみんな入りますからね」
「はい、これからの建築にもこの方法を取り入れさせて頂けませんか?」
「えっ! 勿論、良いですよ! これからも色んな建物を作って貰うと思うので、色んな方法を試しながら作ってください!」
「ありがとうございます」
メアリーさんが深々と頭を下げた。
彼女が頑張ってくれればくれるほど、ベルン領の為になるのだから、寧ろ大助かりだ。
建築は僕も大好きなので、これからメアリーさんには沢山お世話になりそうだね。
下げた頭を上げたメアリーさんの深い緑色の瞳は、これまで以上にやる気に燃えていた。
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