第45話 サリーの完璧さんすう教室①

あけましておめでとうございます! 今年は去年以上に執筆を頑張って行きますので、これからも相変わらずの応援の程、よろしくお願いします!

――――――



 辺境伯様の屋敷のティナ令嬢の部屋に帰って来た。


 用事は終わったから帰ろうとしたけど、ティナ令嬢が一緒に食事したいって聞かなくて、仕方なく一緒に食事を取る事になった。


「……全く……クラウド様ったら……友人だなんて…………」


 聞こえないふりをした。




 ティナ令嬢の部屋のテーブルの上には何処かで見た事がある木の棒が沢山入った箱が置いてあった。


「ん? この木の棒って……」


「それはお兄ちゃんの『完璧さんすう教室』の木の棒だよ!」


「『完璧さんすう教室』…………??」


「うん! お兄ちゃんの偉大な功績なんだよ! このさんすう教室を終えたら魔法だって無詠唱で使えるようになるんだから!」


 えええええ!?


 たった小学生の勉強法でそんなとんでもない事が出来る事に驚きだよ!!


 しかも僕の偉大な功績なんて恐ろし過ぎるよ!!


 全てはサリーの功績でしょう!!


 隣で見つめていたティナ令嬢の目がますますキラキラしていた。


「あ、あはは……そんな事ないと思うんだけどな…………」


「お兄ちゃんは分かってない! これがどれだけ凄い事なのか!」


 十二分に分かっているから!


 寧ろサリーより分かり過ぎてるから!


 だから不安に思うんだよ!


「そ、そんな事より、それがどうしてここに?」


「んとね。前回森の村でティちゃんが魔法の詠唱を唱えていたから、お兄ちゃんの偉業を学べば無詠唱で魔法が使えるって言ったら、覚えたいって言ってたから、持って来たの」


「うん! 私……絶対にクラウド様の偉業をちゃんと学びたいの!」


「い、偉業……は取り敢えず置いておくとして、僕に出来るのは木の棒を数える事くらいしか出来ないんだけど……」


 ティナ令嬢がグイグイ押して来る。


 仕方なく以前サリー達に教えたように、足し算を教えた。


 数分しないうちに3桁を6つ足せるようになったティナ令嬢の頭の良さに恐怖を覚えながら、掛け算を教えた。


 基本を教えてすぐにサリーの訳の分からない解説が入り、今度は九九九を作り始めた。


 あとは僕が口出し出来る所はないので、そのまま九九九を見つめる。


 数十分して、ティナ令嬢は「分かった! 凄い!! クラウド様の偉業は本当に凄いわ!!」と喜んでいたのだけど……それってほぼサリーなんだよな……。


 九九九の説明が終わってすぐにアルフレットさんに呼ばれ、食事会となった。




「クラウドくん、いらっしゃい」


「辺境伯様、本日はお誘いありがとうございます」


「いやいや、何なら毎日来てくれてもいいのだがね」


「あはは……今度からはお邪魔した時にはお世話になります」


「おお~それは良かった。アルフレット。今度からはそのように頼むぞ」


「ハッ」


 ティナ令嬢と辺境伯様の笑顔が裏切れずについ食事を受けてしまった。


 これはお母さんにも伝えておかなくちゃ……。


 普段口に出来ないような高価な料理がずらりと並んだ。


 しかも……気づいてしまった。


 僕とロスちゃんの料理の大半が野菜料理である。


 僕に関してはこの世界でメインと言われているステーキとかもない。


 寧ろ美味しそうなキノコのようなステーキが並んでいた。


「ん! このキノコ? めちゃめちゃ美味しいです!!」


「ほほっ、気に入ってくれたのならまだ用意しよう」


「ありがとうございます!」


 お母さんの料理以外で、この世界で始めて美味しいと思った料理だった。


 キノコのステーキだけでなく、唐揚げの形をしている木の実のから揚げがとても美味しかった。


 肉しい木の実って面白い食感だね。


 食事中はあまり騒がず、上品に食事をしていたティナ令嬢だったが、メイン食事が終わり、デザートが運んできてから喋り始めた。食事のマナーみたいね。


 そして、ティナ令嬢から辺境伯様に僕の偉業が伝えられた。勿論詳しい中身は一切言っていない。


 どうやら、僕に関した情報は全て秘匿を徹底するみたい。隠すつもりはないんだけど……まだこの距離間が丁度いいかも知れないね。


 デザートも甘過ぎず、ほろ甘いプリンのようなモノがとても美味しかった。


 サリーも初めて食べる不思議なデザートにすごく喜んでくれた。


 急な食事会も終わり、帰る間際、ティナ令嬢と執事アルフレットさんが見送りに来てくれた。

 

 そこで二つほど疑問があったのでアルフレットさんに質問した。


「アルフレットさん」


「はい、いかがなさいましたか?」


「えっと、ちょっとだけ聞きたい事があるんですけど」


「はい、何なりとお申し付けください」


 柔らかな笑顔で答えてくれた。


「一つ目なんですけど、執事って何処で雇えますか?」


「ふむ……質問を質問で返すようで申し訳ございませんが、クラウド様は執事をお探しで?」


「ええ、サリー達の事もあるので、うちにもアルフレットさんみたいな優秀な執事がいたらな~とずっと思っていたんです」


「ほっほっほっ、そこまで評価してくださってありがとうございます。では質問の答えになりますが、三つございまして、一つは単純に自分で見つけて直接誘う事です。二つ目は執事もメイドも商業ギルドに登録している方が多いので、商業ギルドに募集の依頼をすればよいのです」


「商業ギルド……ふむふむ」


「最後になりますが、こちらが一番おすすめでございます」


「!? どんな方法ですか?」


「はい、それは執事を生業にしている一族から派遣して貰う事でその一族が育てた高い技量の執事を迎える事が出来ます」


「ふむ……その一族は商業ギルドには登録しないのですか?」


「ええ、中にはそういう一族もいたりしますが、大半の執事一族は登録致しません」


 アルフレットさんの表情が少し厳しい表情に変わる。


「執事にも仕えたい方を選ばせて頂いているのです」


 優秀な執事だからこそ、その言葉に重みを感じる。


「如何でしょう。クラウド様さえ宜しければ、わたくしの一族の者を紹介致しますが」


「本当ですか!? ぜひお願いいます!!」


 思わぬアルフレットさんの言葉に、嬉しくなり飛び跳ねるほどだった。


 そして、アルフレットさんからは「では、後日に一族の者を向かわせますので、試用期間に思う存分使ってやってください」と言われて、また一つ大きな楽しみが増えたのだった。

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