第23話 スライム

 僕は赤いスライムを前に、スライムの巣がギガントクロコダイルによってボロボロにされた経緯をみんなに説明した。


 まずサリー。


「お兄ちゃん、そのスライム燃やしていいかな?」


 アレン。


「兄ちゃん、僕、最近『光の剣』を練習しているんだけど、斬ってみていいかな?」


 エルド。


「クラウド様、ギガントクロコダイル殿のように踏んでみてもいいですか?」



 って、みんな斬る気満々じゃないか!


【お、お許しを……既に食べたやつらは全員亡くなってまして……最後に残ったは僕だけなんです。どうか命だけは……】


「ふむ、この子は食べてないらしいよ。食べたやつらは全滅しているってさ」


「ふぅん……、お兄ちゃん。ちょっと」


 サリーが僕の耳を引っ張り、何かコソコソと話し始めた。


「分かった。聞いて見よう。――――スライム。君は何でも食べれるって聞いたけど、それを僕の役に立てる気はあるかい?」


【ありますとも! なんでも仰ってください! 馬車スライムのように働きます!!】


「うんうん、それは良いね。そう言えば、うちの従魔達には、餌は出来る限り食べたい物を提供しているんだけど、君はどういう餌が欲しい?」


【そりゃもちろん、ギガントクロコダイルで!】


「お前、喰ったんじゃねぇかよ!!!」


「お兄ちゃん! 今すぐ火炙りにしよう!」


【ぎゃー!!! ごめんなさいごめんなさい! まさか……みんながあんなにやる気になると思わなくて……ただ思い付いた事をうっかり喋っただけなんです! 僕はおこぼれしか食ってません!】


「そもそも犯人もお前じゃねぇかよ!!!」


「私の特大火魔法で焼いてやる!」


 こうして、僕が探していた『ジャイアントスライム』は全滅した――――ではなくて、さすがに目的があるので、サリー達を何とか止めて、最後の『ジャイアントスライム』には従魔になって貰った。




 ◇




 実はこの赤いスライムの『ジャイアントスライム』。


 少々特殊個体だそうで、非常に賢かった。


 そもそもスライムは、こんなに喋れないし、思考能力も低いそうだ。


 あんな演技まで出来るんだから、余程賢いんだろうな。



 そして、『ジャイアントスライム』を従魔にしたその時。


 僕に一つ、異変があった。


 異変というか――――。



 - 個体『クラウド・ベルン』の才能『ちょうきょうし』のレベルが上昇しました。-



 と、頭の中に響いた声。


 才能にもレベルがあるのだろうか?


 よくわからないまま、スライムと共にスロリ町に帰還した。



【それで、旦那様? 僕は何をしたらいいのです?】


「あ、そうだった。仕事の説明もしないまま連れて来てしまったね。スラは何でも食べれるよね?」


 スラというのは、赤いスライムの名前である。


【へい、何でも食べます! 死体から腐った肉から何から何まで!】


「いや、さらっと死体隠蔽出来ますみたいな言い方しないでよ」


【へへっ、何でも仰ってください。何でも食べますから!】


「ふう~ん、今、何でも、食べると、言ったよね?」


【へ、へい……?】


 僕は暗黒笑みを浮かべ、スライムを連れ、とある場所に来ていた。


 そこは――――。


 ものすごい臭い排泄物処理場である!


 何と、この世界のゴミは基本的に消滅魔法で消すらしいんだけど、それが使える魔法使いの数も少ないし、サリーも使えるけど、それは僕が猛反対した。


 うちの可愛いサリーが……申し訳ないけど、ゴミ処理はさせたくない。


 そこで、真っ先に思い付いたのは、知識にあった『ダンジョンのゴミ掃除要員、スライム』であった。


 僕が知っている知識では、ダンジョンに繁殖していて、ダンジョンのゴミを食べるとされていた。


 この世界ではどうかは分からなかったけど、サリー先生に教えを乞い、スライムが普通にいる事を教わったのだった。


「今日からここのゴミを食べて欲しいんだ。それからこの先、全てのゴミはここに流れてくるように作るから、それもよろしくね」


【かしこまりました! 旦那様の為なら、馬車スライムのように働きます!】


 あれ?


 意外と拒否しないんだね。


【僕達スライムは、食べれば食べるほど、大きくなります。そのうち大きくなれば、身体と意識体を分離させる事も出来るので、近々自由に動けるようになりますから】


 へぇー、スライムの意外な特徴を知る事が出来た。


「それと、決して住民や従魔達に迷惑はかけるなよー」


 こうして、ゴミ処理をサリーにさせない為のスライムの捕獲に成功したのであった。




 ◇





「それでサリー先生、次は地面を掘る魔物を知りませんか!」


「ほっほっほっ! お兄ちゃんくん! 地面を掘る魔物で近くにいるのは~『崩壊のむじな』という魔物がいるのじゃよ」


 サリーがいつもの先生っぽい言い方を真似していて可愛い。


 次にやりたい事としては、町の下水道を作りたいと思う。


 更に、下水道の配管となる部分も作らなくちゃいけないね。


 これらの配管には一つだけ心当たりがある。


 なので次の目標が決まった。


 まずその一、


 地面を掘れる魔物を従魔にして、スロリ町の地面の中が掘れるようにしておく。


 その二、


 掘った地面の中に配管を入れたいので、入れる用の配管を作る事。



 そして、これらの他にも目標がある。


 まずは、水のタンクを作る事。


 各家の水は毎日地下水を汲んで来て使っている。


 例えば、うちの屋敷は今までメイドさん達が汲んで来てくれていた。


 今ではパシ――――じゃなくて、エルドとアレンが筋トレを兼ねて、毎朝水を汲んで来てくれている。


 それを解決させる為、全ての家の上に雨の受け皿を作り、水を集めたタンクを作ろうと思う。


 というか、この世界の雨水ってものすごく綺麗で、川や地下水よりも綺麗という不思議な感じだった。


 前世の記憶では、雨水はろ過とかさせないと飲めない記憶があったけどね。



 水回りが改善すれば、畑の管理もしやすくなるはずだ。


 そうすれば、スロリ町だけの畑も作り……最終的な目標としては、『米』を作る事である!



 その為、早速取り掛かる事にした。

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