第4話 才能啓示儀式
冬が終わると何が来ると思う?
春?
違う。
『才能啓示儀式』の日がやって来るのだ。
この世界は日本と違って、一年が四か月に分かれている。
一月、二月、三月、四月。
そして、毎月90日まで存在する。
つまり一年360日となる。
更に面白い事に、各月で季節が変化する。
一月は春、二月は夏、三月は秋、四月は冬。
季節は日本の季節と全く一緒だった。
春は暖かいし、夏は暑いし、秋は涼しいし、冬は寒くて雪が降る。
去年の冬はアレンとサリーと毎日雪合戦を繰り広げてた。
そんな季節を超え、年の変わり目。
一月一日。
この日は、この世界に取って最も大事な日とされている。
四月の後半では既に雪が解けて、一月一日になった途端、暖かくなる。
これを『女神様の祝福』というみたい。
この『女神様の祝福』が訪れるとされている一月一日が一年中で最も祝福されている日とされ、この日に『才能啓示儀式』を行うのだ。
そもそも『才能啓示儀式』とは何か。
『才能』の中に、『聖職者』という才能がある。
聖職者は女神様から力を授かり、聖属性スキルや魔法が使える。
そのスキルの中に『神の啓示』というスキルがあり、聖職者の多くの者が覚える。
中には覚えられない聖職者もいるけど、スキルは人それぞれだから覚えられなかったからといって不利益な事はないみたい。
そのスキルを使う事により、五歳の歳になる子供……いや、五歳
このスキルを使わないと、一生『才能なし』のままらしい。
因みに『無才』とは別なものだ。
本日はお父さん、お母さん、アレンとサリーに見守られる中、隣領の街ギインザの教会に来ている。
中には多くの子供がいたけど、全ての子供達の衣服を見るに、貴族っぽい。
それもそうよね。
だって……。
『神の啓示』を貰えるにも、多額の
お父さん曰く、アレンとサリーには申し訳ないけど、うちの財政事情的に僕だけしか受けられないかも知れないらしい……。
でも大丈夫だ。
何故なら、僕が五歳となったら、本格的に狩りに参加させて貰えると聞いている。
必ずアレンとサリーの寄付金くらい稼いでみせるから!
子供達は並んだ順番で『神の啓示』を受けていった。
受けた八割の子供達は『無才』と告げられている。
肩を落として去っていく子供と両親が多く見えた。
この日に人生が決まると言っても過言ではないから、仕方ないかも知れないね
順番が回り、僕の前の前の子の番となった。
「エルド、平民です」
そう話した少年は、神官に寄付金を渡した。
寄付金を貰った神官が頷くと、祭壇で待っているお爺ちゃん神官の合図で少年が祭壇に上がる。
「では、この水晶に手を翳しなさい。――――汝、エルドに『神の啓示』を!」
水晶から眩い光が溢れ、エルドくんを包んだ。
この光が強ければ強いほど、強い『才能』が開花すると聞いている。
この子の光、今までの見た光の中で最も強い。
「汝の才能は――――け、け、け、剣聖!?」
神官が驚きながら口にした才能の名に、場内にいた全ての人から歓声が上がった。
隣にいたお父さんとお母さんも目が大きくなり驚いていた。
その才能の名は、前世のゲームの知識から少し思い当たる節がある。
剣を扱っている才能ではかなりの上位のはずで、周囲の反応からその認識で良さげだ。
エルドくん自身も大きく驚いていたが、直ぐに両手でガッツポーズをすると、くるりと後ろを向き僕を見つけめ――――
睨んできた。
あれ?
彼とは初対面のはずなんだけど……何か気に障る事でもしたのかな……。
エルドくんは強張った顔のまま、真っすぐ僕の前に立った。
――そして、衝撃な言葉を口にする。
「は、は、は、初めまして! え、え、エルドと申します、師匠! 弟子にしてください!」
へ?
師匠? 弟子? 誰が、誰に?
エルドくんのあまりにも急な言葉に、反応出来ずにいたら、僕の頭の上に乗っていたロスちゃんが右手を上げる。
「おお! ありがたき幸せ! これからのご指導よろしくお願いします!」
あ……僕じゃなくて、ロスちゃんだったのね。
◇
エルドくんは、隣にあった椅子にロスちゃんを座らせると、その前に正座になって、ロスちゃんに何かを真剣な顔で喋りだしたので、取り敢えずは見て見ぬふりをする事にした。
だって……めんどくさそうだもん…………。
エルドくんの衝撃から立ち直った神官たちは、次の子供に合図を送った。
次に待っていたのは、派手なドレスを着ていて、隣には執事と思われる爺さんと、偉そうな服を着てはいるが目が鋭い男性、優しそうな女性に囲まれていた女の子だ。
見るからにボンボンなのが分かるな……。
その時、隣にしたお父さんが小声で、「あちらが英雄辺境伯のカルサ・フォン・バルバロッサ様だ、そしてあのお方の娘のティナ令嬢だよ」と教えてくれた。
この世界の名前は、どうやら高位身分だけが『苗字』を持つ事が許されているみたいで、名前と苗字込みで、一つが平民、二つが貴族、三つが大貴族、四つが王族だそうだ。
つまり、こちらの方は三つの名前を持つのだから、この国でも最上位の大貴族なのが分かる。
「こほん、ではこちらの水晶にお手をお願いします」
おいおい、神官。
今までとは対応が全然違うじゃねぇかよ。
「汝、ティナ・フォン・バルバロッサ
神官の両手はプルプル震えているし、声も震えている。
大貴族の『啓示』だもんな。
あ……小声で「神様どうか」って呟いているよ。
その時。
水晶からは先程のエルドくん同様、眩い光が溢れティナ令嬢を包んだ。
あ……神官は泣きながら喜んでいるわ。
「汝の才能は――――――へ? う、嘘!?」
この神官、本当に大丈夫か??
手、顔、声、目、髪の毛、どれも震え出した。
どうしたんだろう?
「せ、せ、せ、せ」
……。
……。
いい加減ちゃんと喋れよ!
めちゃ気になるじゃんか!
「聖女――――」
「「「「ええええええ!?」」」」
場内のどよめきが凄い。
当の本人は「ふ、ふん! あ、当たり前じゃないの」と言っているけど、本人も相当動揺しているな。
辺境伯様も大いに喜んでおられて良かったね。
……。
……。
次、僕で最後なんだけど、大丈夫かな?
僕の前の二人がどうやらものすごい『才能』っぽいし………………はぁ。
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