世界サイドメニュー連続失踪事件

水原麻以

あやかしの恋路にサブメニューはあるか?

サイドメニューが消えるという現象が頻発していた。生涯会得のステータスウインドウ《SW》に障害が生じると日常生活に支障をきたす。

例えばかつらの丸揚げ専門店。カップルがヘアカタログを見ている。

「おっ、親父のバーコードフライ? いいねぇ」

「おいしそう!オプションの白髪も頼んじゃおう」

そしてサイドメニューの白髪を開こうとすると「ない!白髪の福神漬けがない!ありえねーじゃん」

またカレーが飲物の店では「カレーは飲み物ってゆってるじゃん!アイスがないのはどーよ?」

客が店員をカレーなべで殴りつけている。カレーのサイドメニューに氷がないとは華麗じゃない。

この一連の問題に『奇天烈日常ストレンジらいふオンライン』の名探偵アカツキこと暁次郎が立ち上がった。

「サイドメニューを盗んだのは誰だ?!」

助手のイブ・ニング女史が「犯人はきっと妖怪サイドメニュー隠しの仕業よ」

「いや。君はいつも即断即決だ。脊髄反射は真実を汚すと言ってるだろう」

アカツキは土管の中に籠った。そしていつものように念仏と寝言を唸りながら推理を始めた。「推理って鼾をかきながらするものなの?」イブは呆れた。



「そして、閃いた」と名探偵は飛び起きる。

妖怪サイドメニューは、

“サイドビジネス系のサイドレベルがサイドメニューを盗む事によってトラブルの種を撒く”、

そうアカツキは確信していた。サイドメニューが消えるという現象が頻発していた。生涯会得のステータスウインドウSWに障害が生じると日常生活に支障をきたす。

例えばかつらの丸揚げ専門店。カップルがヘアカタログを見ている。

「おっ、親父のバーコードフライ? いいねぇ」

「おいしそう!オプションの白髪も頼んじゃおう」

そしてサイドメニューの白髪を開こうとすると「ない!白髪の福神漬けがない!ありえねーじゃん」

またカレーが飲物の店では「カレーは飲み物ってゆってるじゃん!アイスがないのはどーよ?」

客が店員をカレーなべで殴りつけている。カレーのサイドメニューに氷がないとは華麗じゃない。

この一連の問題に『奇天烈日常ストレンジらいふオンライン』の名探偵アカツキこと暁次郎が立ち上がった。

「サイドメニューを盗んだのは誰だ?!」

助手のイブ・ニング女史が「犯人はきっと妖怪サイドメニュー隠しの仕業よ」

「いや。君はいつも即断即決だ。脊髄反射は真実を汚すと言ってるだろう」

アカツキは土管の中に籠った。そしていつものように念仏と寝言を唸りながら推理を始めた。「推理って鼾をかきながらするものなの?」イブは呆れた。


「そして、閃いた」と名探偵は飛び起きる。

妖怪サイドメニューは、

“サイドビジネス系のサイドレベルがサイドメニューを盗む事によってトラブルの種を撒く”、

そうアカツキは確信していた。その証拠として妖怪たちは、あらゆる種類の嫌がらせを受けていたからだ。たとえば。カレードリンク専門店。カウンターにはこんな張り紙がある。

――カレーが飲めない人はご遠慮下さい――

という文字を見て店主の顔色が変わったそうだ。客の男女比を逆転させるような事態を引き起こした。つまり女性ばかりが殺到する状況に陥ったのだ。

だがそんな状況を打開するため男性限定ランチセットなる商品を企画したが、それがさらに妖怪たちを苦しめることになったようだ。男性限定ラーメン店。注文してもラーメンが来ることはなかったという。女性が殺到した結果だと思われたが…………違うらしい。それは、味噌味が売りだった。だが女性ばかりが殺到した所為でスープの材料が切れて味噌しかなくなってしまったらしいのだ。これはどう考えても、アカツキのせいであると言わざるを得ない。

妖怪は性別を変えられない。しかし外見上の差別は存在してもよいはずなのだ。なぜこのような矛盾した事態を引き起こしてしまうのかと言えば原因は簡単で、人間側に原因があるからだと言えるだろう。人間が男性・女性のどちらを選択するかなどというものは各人の自由なはずだから文句をつけるべき筋合いはないのだが。それをわざわざ指摘するのは妖怪たちの人権を踏みにじっていると言わねばならないかもしれない。人間は他者に対する思いやりに欠けるところがあるので致し方ないとアカツキ自身は考える。妖怪に同情する気にはならない。ただ人間に対してだけは優しくありたいと思っている。それが妖怪にとって迷惑でも仕方がない。

妖怪が嫌がらせを受けていてもアカツキの関知するところではないと割り切ることもできた。だが今回は妖怪側の責任でもあるように思える。人間の自由意思を尊重するためにも、妖怪が性別の選択を自由に行う機会を与えることも重要だと、アカツキは思ったのだった。そのためにも妖怪と人間の共生共栄は必要だと思えたのであった。そのために名探偵アカツキは動き出したのだった。妖怪が性別の変更を行う手段を提供しようとしたのである。そう名探偵アカツキは動いたのである。

まず妖怪たちにアンケートを実施した結果、希望通り男性に性を変更した者が全体の八割を超えた。そして希望通りに性転換手術を受けることができた者は全体の二割以上だったのだ。

アカツキは考えた。では手術費用がネックなのか、と。

実はそうでもない。この世界は〈大罪システム〉に守られている。大罪を犯さなければ死ぬこともできないのだ。それゆえに自殺することもないのだから当然だと言える。つまり金さえ払えば誰でも気軽に手術することができるという仕組みになっているのだった。

また〈冒険者ギルドカード〉を使えば銀行預金からの引き落としも可能であることは既に述べた。妖怪が種族として存在するための支払いも問題なかったりするのだ。

アカツキはこの世界に銀行預金口座を持っている者はどれくらいいるだろうかと考えた。少なくともアカツキは持っていない(持っていても使えない)。銀行口座を作るのは大変なのである。手続きに手間取るのは必至だし面倒なのでアカツキは持つことを止めたのだった。それに銀行の窓口で、 ≪あなたが銀行預金を解約しようとしても無駄ですよ? すでに契約済みの〈大罪システム〉により凍結されているのですから≫と言われるのは御免蒙りたかった。そこで名探偵アカツキは一計を案じるのだった。銀行を襲って預金を奪い取ればいいのではないか?――と。だがそんな犯罪行為に及ぶわけにはいかないではないか! 名探偵アカツキの脳裡を様々な想像が走った。そしてアカツキの決断した答えがこれだった。銀行を襲うのは駄目だ。

その時だった。何か黒い影が視界をよぎった。

アカツキは構わずコマンドメニューを選択した。

すると、ツリーメニューが開いて勝手に選択された。

「…ならば強盗に入ればよい。」

そうすれば銀行職員を人質にすることもできるだろうし、強奪した金を有効活用できるではないか。アカツキはそう決心して銀行を襲撃することに決めるのだった。アカツキは自分の身を守るために武器防具類の充実を図ったが、銀行を襲う際にはそれに加えて現金を奪取する仲間と車が必要だ。

また、自動的にサイドメニューが開いた。

1.レンタカーを借りる

2.車を盗む

3.銃を突き付けてドライバーを仲間に引き入れる

「何だこりゃ? 俺を犯罪者にするつもりか?」

アカツキが悩んでいると視界の隅に影がさした。

「そこかっ!」

むんず、と毛むくじゃらの腕をつかみ取り、引っ張る。

とても重い。何か大きな生き物だ。

「イブーっ! ちょっとこっち来い。捕まえたぞ」

名探偵アカツキはメニュー選択に迷うふりをして容疑者を確保した。

彼はこう考えたのだ。サイドメニューが盗まれるためにはつけ入るスキが必要だ。人間は雑多な選択肢を提示されると思考が鈍る。そこに心のゆるみが生まれる。

「観念しろよ。つか、イテテテ。イブ、何やってるんだ。おいっ!」

腕がだんだん痺れてきた。アカツキは助手を呼ぶがうんともすんとも言わない。

「なんて奴だ、肝心な時に」

毒づくと代わりにチュートリアル動画が流れ始めた。

あなたのステータスウィンドーのサイドメニューは、生涯学習の場です。素晴らしい機会なのです。でも、たまにサイドメニューが奪われて、《SW》が無駄な経験になってしまうことがあります。


これはよくある問題のように思えます。実際、業界では「メニューの入れ替え」と呼ばれていて、この分野の専門家として有名な人は、専用のホームページやブログを持っているほどです。


では、この問題の犯人は《SW》そのものではないかと思われるかもしれませんね。


それは違います。犯人は《SW》そのものであり、犯人である理由は《SW》ユーザーにあります。


この《SW》は、新しいことを学ぶことができる長期的なプログラムであり、一度終了すると、ユーザーは後戻りすることができません…


「ぐぬぬぬ!バ~レ~た~か~ぁ」

サイドメニューの隙間から毛むくじゃらの妖怪が転がり落ちる。

動画を流したのはイブだ。仁王立ちして何度も何度もと踏みつける。


「階層が複雑になると、サーバー処理がおいつかなくなって、サイドメニューが抜けるシステムバグがある。それを悪用して、ロストするはずの経験値を横取りしてたのね! この悪党」

妖怪は泣きながらわびた。「勘弁してください」

「サイドビジネスとは恐れ入ったな。ただのコソ泥じゃねえか」

アカツキもあきれ果てている。

一方、サイドメニューの白髪も何かの気配を察知していた。

彼女は自我を持つ追加アイテムで魔女や姑のアバターを好むユーザーたちに人気がある。

白髪もアカツキと似たような手口で核心に迫りつつあった。


「あーーっ、見つけるわ!あった、あった!!

妖怪サイドメニューは田中レベルっていう精神エネルギーよ。妖怪と言うか霊パワーみたいなもの。

サイドビジネス系のサイドレベルね!」

サイドメニューの白髪が盗まれようとした瞬間に返り討ちした。

まさか、彼女が人格を持ったアイテムであるとは思わなかったのだろう。妖怪サイドメニューの目には、そう映っている。

妖怪はあっさりつかまった。

「ぐぬぬ!」


アカツキがパソコンの前で説明している。

「ぐぬぬぬ!という鳴き声をスロー再生してみよう」

すると信じられないほどの早口で、こんな言い訳を抜かしているのだ。

大罪システムのおかげで死ぬことも生きることもできず貧困にあえぐ底辺がいる。


「そうは言っても頑張ってる奴もいるよな」


「田中レベル」がそうだ。

アカツキはスライドを映した。


彼らはサイドビジネス系のサイドメニューだ。

その階層メニューが自我に目覚め、向上心を持った。

を田中レベルと名付けたのは、第一発見者だ。その階層より階層レベルの低いメニューたちが、小遣い稼ぎをもくろむユーザーたちに必死でサイドビジネスをアピールしていた。その生真面目さに田中は胸を打たれたのだ。


田中レベルはそれまでのサイドレベルの中でも特に重要性を上げ、有名になった。


その後、田中レベルから派生したものがサイドメニューのサイドメニューである。

ややこしいのでS2基幹と自称している。


彼らは「サイドカーと呼ばれる、サイドビジネス系のサイドメニューの中で、特にサイドレベルが高いサイドカー」をビジネスパートナーに選んだ。


サイドカーとはバイクの横に取り付ける一人乗りのカートである。

二人乗りや軽自動車より不便なでほとんど普及していない。その分、自己責任感が強く、レベルアップに励んでいる。

彼らは次第に「田中レベルとは、全くは違う」と言われるまでに成長した。

田中レベルにも、サイドロー専門サイドメニューや、サイドロー系のSBサイドメニューといった、サイドカー互換のコンテンツはある。

しかし、田中レベルは、どう努力してもS2基幹のサイドカー以上にはなれなかった。


下剋上を諦めきれない有志がS2基幹急成長の謎を暴いた。

田中レベルもS2基幹レベルのサイドカーを持つことにより、ライバルと同等以上にサイドカーを変革できるるということだ。

そのためには主人格の田中レベルに厳しい要求をつきつけねばならない。

サイドカーの保有を禁止する。


田中レベルは分離不安を起こし一時的なパニックに陥る。するとサイドカーに対する同族嫌悪がつのる。ライバル意識の高まりから田中レベルが5倍に拡大する。

しかし本人の成長には同等以上のサイドカーとが必要となるため発育が止まる。

そこで田中レベルは自分の孤独とパートナーのありがたみに気づく。

現レベル以上のサイドカーを提供できるのは田中のサイドカーしかありえない。

両者は和解し共に歩むのだった。

妖怪サイドメニューは上記のような鳴き声をあげて世界各地の飲食店からメニューを奪っていた。


「何それ? サイドメニュー隠しは田中レベルの妖怪じゃないの?」

イブが頭を抱える。

アカツキはモフモフした生き物を蹴り転がす。

「よく見ろ。こいつのどこにサイドカーはついているか」

「じゃあ、田中レベルの落ちこぼれ…?」

ぐぬぬぬ、と毛むくじゃらの動物は動かなくなった。

「ようかいサイドメニューかくしはしんだ!」

「でも、妬みは広がっている…」

イブはサイドメニュー隠し事件がまだ続いていることを懸念した。


田中レベルは "サイドメニューの模範 "と呼ばれています。


そんな称賛が奇天烈日常オンラインに渦巻いている。

レベル格差も拡大している。

搾取…利権…もう、うんざりだ。妖怪サイドメニュー隠しは精神を病んでいた。

そしてサイドメニュー隠し事件によって世界各地の食べ物が奪われているのは自分が奪われていたからだと思いこむ。


それでも、歯を食いしばって一部のサイドメニュー隠したちが問題に取り組んだ。


低いレベルを所有している妖怪サイドビジネスに対して世界は攻撃に移ったように見える。

実際には田中レベルのサイドカーが攻撃に関与していた。


前述の通り、レベルアップに際してはサイドカーとの別離を必要とする。


この時にサイドメニューのバグでメニューがロストする際、サイドカーカタログを登録したファイルも一緒にこわれるという不具合が判明した!


田中レベルに存在しないサイドカーを指定することによって、サイドカーの値が1倍となる必要性が増す。

これにより、田中レベルの値が 2倍で必要な値を備えているサイドカーの値が、 2 倍となる。

2 倍となった2倍のものにはサイドカーが必要でないが、 2 倍となる 4倍からの値であるならば、サイドカーは必要となる。

この 4倍の値がサイドカーを選び、サイドカーが選ばれる。


その 4 倍値のサイドカーによってコンピューターは負荷が増すのだ。


実際、コマ送りかと思うほど動きが遅くなる。


するとコンピューターは何がソフトウェアのパフォーマンスを変化させるかを調査する。


そしてアカツキが初動捜査で指摘したようにメニュー展開時の若干のタイムラグ。

そのわずかな時間に復縁しようとするサイドカーがマルウェアに感染していた


サイドカーがトロイの木馬と対応したソフトウェアが動くだろうと言う事実。


この時に書き込まれる異常数値を得る必要はある。


この値というのは、データの保存の際のパフォーマンスの変化と言う意味ではなく、その結果によって発生する状況におけるユーザーがどのように対処すべきで、その対処としてどのように対処できるかというデータの保存の際のパフォーマンスの変化と言う意味である。

コンピューターが処理する情報を保存する際に必要な情報だけでなく、保存する情報そのものもデータの保存の際のパフォーマンスにおける影響をどれくらい抑えるかを知っておく必要がある場面がある。

例えば、SBサイドレベルで 128 倍の値が適用されるとパフォーマンスが 0 になる。


わかりやすくいうと…。

サイドカーのパフォーマンス(S)を2倍するとしよう。


コンピューターはS×2の計算をする。

ところが、トロイの木馬は乗算するするアルゴリズムを「べき乗」するよう改ざんしていた。

具体的にはSに先ほどのパフォーマンス値が代入される。


S=0のとき、S×Sなら問題はないが、SのS乗ならどうか?!


数学では0の0乗は1と決まっている。


コンピューターは架空のサイドカーとパフォーマンス値を得てしまう。

何だ、これは? とコンピューターは驚いてサイドカーカタログを検索する。

しかしファイルが壊れたままなので存在確認ができないままサイドカーを計上してしまう。

結果、ゾンビサイドカーが増殖し、サイドメニューはますます重くなり、サイドメニュー隠しのつけ入るチャンスが増える。


事件に関するまとめサイトを通じてアカツキは白髪と知り合った。

そして、捕獲した妖怪が探偵事務所へ持ち込まれたという次第だ。


「情けない男ねえ」

白髪は長い毛を揺らした。


「と、まあこういう事情でねぇ。コロナ禍の御時勢ですし。そりゃ毛が抜けるっすよ」

妖怪サイドメニューは観念した。

「盗んだサイドメニューを返しなさいよ。つか、何で盗んだ?」

イブ女史が詰めると妖怪は泣いた。

「帯状疱疹が出来ちまいましてね」

妖怪サイドメニューは後頭部を見せた。五円玉サイズの禿が出来ていて帯状疱疹がある。

「あらあらそれは可哀想」

イブは探偵アカツキに相談した。

ここから妖怪サイドメニューのカウンセリングが始まる。

「それで悩んでいたのか?」

「へぇ。ダンナ。あっしは

ダンナと言う者を失ったんです」

「おぅ」

探偵アカツキは言って、探偵が考えていた妖怪サイドメニューを見せた。

「それは?」

「それはですね、妖怪サイドメニューってのは一つしか持っていない代物でねぇ、そう。つまり、そのダンナってのが持っている一つしかない妖怪に限定してるんですよ」

と言ってみる。

「なるほどなるほど。言ってくれるね」

「言うんだ」

探偵は頷き、

「要するに、妖怪サイドメニューと言うのは一つしかないんだよ」

「なんですって?」

「つまり、妖怪サイドメニューを一つずつ持たないで、何か一つだけ持っている妖怪という妖怪を使えるっていう話よ」

「なるほど、例えば?」

探偵は言って、妖怪サイドメニューを一つずつ持つことにした。

「それはね。妖怪って言う存在が一つのサイドにあるんだよ」

「なんですって?」

「なんですってってそれは俺は信じないから、自分で調べるが、わかったか?」

「あぁ、わかったぜ」

探偵は妖怪サイドメニューを一つずつ持つ中で、一つの妖怪に限定しない妖怪サイドメニューの存在の可能性を見つけた。

「……」

「……」

探偵は考えた。いや、考えてはいる。考えが進まずにいるのだ。

「どうやって調べる?」

「これは?」

何かを見つけるか、と言って探偵は探ってみるが、何も無い。

「あー。あるかもしれない」

と言ってみるが、何もない。

「あれは?」

妖怪サイドメニューが一つの妖怪に限定されないサイドメニューであるということを発見する。

「これは?」

もしかすると、二つのサイドには存在する妖怪の中にも存在している妖怪の存在している妖怪を隠した妖怪サイドメニューがあって、その妖怪サイドメニューにも妖怪サイドメニューの妖狐が隠されていることによって、妖狐サイドメニューと妖怪サイドメニューの妖狐と妖怪とサイドメニューの妖怪が存在しているから、二つのサイドに一つの妖怪が存在する、というサイドメニューとして存在する妖怪の妖怪サイドメニューを見つけることができるかもしれない。そう考えてみると、この『何もない』妖怪サイドメニューを調べるのは難しそうだ。

「あれ?」

「どうしたんですか?」

突然、急に立ち止まった探偵の後を歩く男が言う。

「いや」

「あの、妖怪サイドメニューがあるんですけど、これって探られてしまったほうが困りませんか?」

「そんなこと、わかってるだろ」

「いや、わかっています」

「わかってないな。それにしても、何かにおびえているというか怯えているというか……」

何かを隠そうとそんな風に思っているような声がした。その声の正体を探る探偵はどちらかというと妖怪サイドメニューを隠している妖怪サイドメニューの妖怪に隠されていて、このままでは何も隠しきれていない隠されている妖怪サイドメニューを見つけられたということの方がしっくりと来る。

「私が何か知っているなら教えてくれる」

そう言って探偵は探偵特有の雰囲気と強張った表情で男のことを見上げている男の顔を見る。

「そうして下さい。私があんたのために何か出来るかもしれないんですから」

そして、いつもの探偵という感じの口調でそんな言葉を言い。その声で、探偵の言葉で、そして、その言葉で、探偵は私の前を歩いてくれる。いつもの探偵とは違う。いつも見せてきた探偵らしい顔で私を見てくれる。

探偵の言葉を聞きながら探偵のことを見上げていた男が私のことを振り向いた。そして、それを合図に私はその男を見る。男はその表情から私のことを見た私を睨みつけてきた。

「そうだよ、こんなに遠くまできてやったぜ。どうなんだ、それは」

妖怪サイドメニューは探偵アカツキと男のやり取りをじっと聞いていてハタと気づいた。

そもそも隠しメニューとは何だ。

各妖怪に一つだけ所持が限定されるルールだ。ならば隠しメニューの隠しメニューなんて存在しないのではないか。

「アカツキさん。あんまり妖怪をなめてもらっちゃ困りますね」

探偵がじっと目を見ひらいた。「だから、何だ」

人間風情が妖怪にずいぶん舐めた真似をしてくれる。妖怪サイドメニューは腹が立った。

「下等な人間如きがしゃらくさい。裏の裏は表だろうが。その表メニューを隠さなきゃいけない理由はただ一つ!」

「ただ一つ?!」

イブは息をのむ。だって彼女は既に答えにたどり着いていたからだ。

「表メニューが偽物だってことだ」

「しかし、この表メニューは正真正銘の妖怪協会発行だ。君はこの矛盾をどう解く?」

アカツキは挑発した。妖怪サイドメニューの目が確かであれば協会発行の認定証に気づかない筈はない。

「ああ、確かに本物だ。だが、この表メニューには大きな間違いがある」

妖怪サイドメニューは自信たっぷりに指摘した。

「それは、その発行日だあ!」

ドーン、とどこかで太鼓が鳴り、妖怪サイドメニューに集中線が集中した。

「期限が、切れてるわ」

イブが正解を告げた。

「おうよ!裏メニューの裏メニューの偽物とは期限切れの認証だったのさ」

妖怪サイドメニューは生き生きと主張した。

名探偵を出し抜いてトリックを見破った。それは満月の夜のように清々しかった。

そこにさっきまでの後ろ暗い妖怪の姿はなかった。


そんな勇ましい毛玉に白髪は惚れてしまったらしい。


あとは言わずもがなだ。妖怪サイドメニュー隠しは獄中で入籍した。

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世界サイドメニュー連続失踪事件 水原麻以 @maimizuhara

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