第7話
莉奈さんと会う約束が出来た僕は目に見えて浮かれていた様だった。
「何かあったの?」
ユッキーの質問に僕はふくみを持たせるように表情で答え、「放課後話すね!」とだけ答えた。
隣の席の怖いと感じていた名栗君もまるで子犬の様に思えるくらい、僕は無敵になった様だった。
(僕がニコニコで気分が良さそうなのが気に食わないのか、名栗君は牽制する様に度々舌打ちして睨んでいた。)
お昼休みが終わる直前、廊下で莉奈さんとすれ違った。すれ違うとき僕に気づいて、「あ!」と声を出して僕を呼び止めた。
「ん?どうしたの?」
僕は平静を装っていたけど内心ドキドキだった。
「うん、昨日はLINEありがとね!
日曜日なんだけどさ、ご飯じゃなくて、三倉のカフェに行かない?」
三倉は僕達地元と赤嶺高校を一本線引いたらちょうど中間の位置にある都市だ。
全然構わないし、むしろ莉奈さんから提案してくれた事が嬉しかった。
「あーいいね。うんOK!全然大丈夫だよ!」
「ホント!?」
莉奈さんはとても嬉しそうに微笑んだ。僕はドキッとした。眩しすぎる。
「やった!そこに新しく出来たカフェがあって、すっごいオシャレなんだー。ずっと行きたかったけど、、1人だと行きずらくて。」
「へー、それは楽しみだね。なんて言うカフェ?」
僕と莉奈さんはどちらが促すでもなく、自然に同じ教室に向かいながら会話をした。
「フッ茶っていうカフェ。しってる?」
(フッチャ?昔のプロレスラーみたいな名前だ、、。)
「ごめん、分からないや」
僕は苦笑いして言った。
「結構有名なんだよー?学生さん、女子高生とかではすっごい流行ってるよ。」
「そーなの?ちょっと調べてみるよー。」
「うん!ぜひぜひ!でね、学生割があって学校の制服着てると10パーOFFだから、学校の制服着て行きたいんだけど大丈夫?」
「全然いいよ!てか、その方が楽だしね。」
(服選びしなくて済むし、、、)
「じゃあ、時間はまたLINEするね!」
ちょうどチャイムがなり、教室に入ったので会話はそこで終わった。
嬉しい事だらけで体が軽い。このまま飛べそう!体に羽があるようだ!
僕は授業そっちのけでさっきの会話で嬉しかった事を一つ一つ思い出して悦に浸っていた。
まず、莉奈さんと普通に話せた事。意識してしまって話すのが難しいと考えてしまっていたけど、話始めればスラスラと言葉が出てくる。
次に制服着て出かけること。実はめちゃくちゃ安心した。母さんやユッキー、龍子にも言われた事があるけど服選びがめちゃくちゃセンスがない。
1番心配していた、ファッションセンスがダサくて嫌われないかという問題が早々に解決した。
それに、僕は莉奈さんの制服姿は凄く好きだったので嬉しかった。
そして1番嬉しかった事、、、
莉奈さんから話しかけてくれ、日曜日を凄く楽しみにしてくれている事だ。
(僕だけが1人で舞い上がっている訳じゃ無かった)
莉奈さんが僕の誘いを断れなくて、、、という訳ではなく、莉奈さんも楽しみにしてくれている。
僕はそれが分かってとても安心したし、余計に日曜日が楽しみになった。
(それにしても、、、)
莉奈さんの笑顔ってなんて可愛いんだろう。愛おしいってこういう事をいうのかな?
声もそうだ、、、。柔らかくて耳障りがいい。とても落ち着く。
仕草も可愛い。もう全部が可愛いと思える。
無意識にニヤニヤしていたのか、名栗君はいつもの睨みつけの代わりに顔が引きつっていた。
放課後、一連の説明をユッキーにした。
ユッキーは驚くでも、喜んでくれるでもなく、無言だった。それは浮かれている僕を不安にさせる程に。
(女子高生に人気の店らしいから、女の子にアンテナ張っているユッキーなら知ってるんじゃないかと思ったけど、聞きずらいな、、。)
ユッキーは少し暗めに一言。
「地雷臭がするな。」
「へ?」
地雷臭?なにそれ?
「コタローが浮かれる気持ちは重々わかる!けどさ、、、俺はちょっと引っかかるんだよなー」
(?)
「どういうこと?」
「いや、、、。伊藤莉奈がどうって訳ではないんだけどさ。確証がある訳でもないしなぁ、、。」
ユッキーがブツブツと考えながら話す。
僕は意味がわからず、焦れったい気持ちに駆られた。同時に長い事一緒にいるユッキーの初めてみる真面目な顔に不安を抱いた。
「ユッキー、、、大丈夫、だよね?」
「ん、あ、ああ。いや、コタローはデートを楽しんでこいよ!ちゃんりなは大丈夫だと思うし、コタローの事は別にそこまで心配してねーからさ。」
「え?よく分からないな、、。」
さっき言っていた事と矛盾してないか?
余計に不安になる。
「わりぃわりぃ!まあ、そう不安がるなよ!
楽しんでこいよな!!」
そう言うとユッキーはいつもの軽い感じのノリに戻って、中身のない話をしだした。
僕は気にしないフリをしてユッキーに合わせていたけど、、、。
「伊藤莉奈がどうって訳では無い」というワードが頭の中を制していた。
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