安井裕二 ソフトコンタクトの種類

2ウィーク・マンスリーコンタクトレンズ①


「あ? コンタクトの費用を安くしたいだぁ?」


 キリン眼科の受付にて。

 対面の少年少女は青龍の恫喝じみた声に退く。

 一人は長野遥ながのはるか。3ヶ月前にここ、『キリン眼科』を訪れイメチェンを果たした少女。今日はメガネだが、前髪を左右に開いておでこを見せるヘアスタイルと細めの赤いフレームが明るい印象を与える。


「だって、ワンデーってすっごく高いんですよ⁉︎ お小遣いの半分なくなっちゃいます!」

「衛生面と目の安全のためだ、我慢しとけ」


 などといいつつ、青龍は鼻に指を突っ込む。


「けどそれじゃ他に買えるもの少なくなっちゃうんだよ〜青龍さぁん」


 困った顔で受付に身を乗り出すのはもう一人の少年──安井裕二やすいゆうじである。至って普通の顔に、短く刈った針のような髪が芝生を連想させる。彼もまた、『キリン眼科』でワンデーコンタクトレンズを始めた一人。


「ハッ! どうせガキのお前達の買うもんなんてたかが知れてるだろ。バイトでもするんだな小童ども」

「私たちの学校バイト禁止なんです!」

「知るか! 俺様は忙しいんだよ!」


 本来の業務すらせず、青龍は読みもしない週刊誌を広げる。


「そんなこと言って……先生に言いつけてやるからなー!」

「あっ⁉︎ それは反則だぞ!」

「せぇいりゅうくぅ〜ん?」


 例の如く、笑顔で額に青筋を立てたキリン眼科院長・麒麟がぬるっと受付の奥から現れて青龍の頭から生える2本の角を掴む。


「わざわざ相談に来てくれた子供たちに素っ気なくしなぁい!」


 ブンブンと角を振り回しながら、麒麟は青龍を𠮟りつける。


「あば、あばばばばば! わばった、やる、やるよ!」

「そうこなくっちゃ! 暇してたからよかったわぁ~」


 態度を一変させ、麒麟はササっと消えてしまった。


 みっともない姿を見せたあとで、受付は静寂に包まれた。しかし青龍は何事もなかったかのように雑誌を置き襟を正す。


「ふぃ……よぉしガキども、この俺様直々に使い捨てコンタクトと頻回装用コンタクトの違いを教えてやろう。感謝するんだな!」

 

 傲慢に振舞う青年の背後から、再びひょっこりと麒麟が顔を覗かせる。


「やさしく教えるのよぉ!」

「わあっとるわい!」

 

 今回は2ウィークやマンスリー(1か月)コンタクトレンズについてのお話。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る