第192話 五色の宝玉-G-

『お、〝ロンリー〟と〝ねぎっこ〟も、ブラック=ホウセンに向かっていった!』

『大楯持ちの〝ロンリー〟が前衛で、棍と戦靴シューズの〝ねぎっこ〟は中衛って感じだな』

『あ、グリーン=エースが逃げた』

『逃げるんかい!』

『逃げ足めっちゃ速い』

『あ、ヒゲが足にからまって転んだ』

『www』

『草』

『www』

『www』

『大草原』

『いいからヒゲそれや!!』


 掲示板が、グリーンエースの鉄板芸? に注目している中、俺は努めて冷静にコントローラーを操作した。

 画面の中の〝ロンリー〟は、ハルバードを地面に突き立てて、念じるようなポーズをとる。すると、


『お? 見てみろよ。〝ロンリー〟のハルバードが青く光っている』

『んん? なんだか青白い蛇がでてきたぞ?』

『しかも二匹』

『これってもしや、陰陽導師の〝癸巳みずのとみ〟じゃないですか? 敵の弱点をさぐる』

『ほんとだ! ブラック=ホウセンにからみついてる』

『でもって、首の後ろにかみついた』

『あそこが弱点かー』

『延髄だな』

『もう一匹のヘビは、どっかいったな……』

『グリーン=エースを追いかけたと思われw』

『やっぱり、〝癸巳みずのとみ〟ですね。二匹出てきたということは、M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドは、M・M・Oメリーメントオンラインと時間がリンクしているみたいです。

 今は、〝癸巳みずのえみ年〟ですから。威力が二倍、つまり二匹の敵の弱点を、同時にサーチできる』

『ん? じゃあ、〝ロンリー〟は陰陽導師の魔法を使ってるってことか!』


 そう、これは〝癸巳みずのとみ〟だ。でも、陰陽導師の魔法じゃない。

 そして魔法を使っているのは俺だけじゃない。

 実は二帆ふたほさんがあやつる〝フーター〟も、九条くじょうさんがあやつる〝ねぎっこ〟も、すでに魔法を使っている。


 掲示板の書き込みに、六都美むつみさんと七瀬ななせさん、そして、俺のとなりで、ゲームをしている九条くじょう さんがニヤリとしながら、六都美むつみさんと七瀬ななせさんに今日三度目のオッケーサインを出した。


「パンパカパーン!

 これからM・M・O・Wメリーメントオンラインワールドの、最も大きな変更点、その3を発表しちゃうヨ!」

「な……なんだって—————!! ……ううー。いいかげん叫ぶのに疲れた』


『ちょ、ナナシw』

『中の人の本音がでてる』

『ウケる』

『次はなんの発表だ?』

『おそらく、魔法のシステムについてでしょう。先ほどコジローが説明をしかけていましたから』

『そういや、さっきコジローが五色の宝玉がどうとかって言ってたな』

『はい。おそらく、ねぎっこの如意棒や、フーターのクナイも魔法ですね』


「む、めざといギャラリーがおるな」


 七瀬ななせさんが、ちょっと驚いた声で、書き込みの掲示板を見ながらつぶやいた。六都美むつみさんも驚きながら話に加わる。


「スゴイ! よく気がついたね。そう。実はさっきから、ねぎっことフーターは、魔法を使っているよ。魔法は、通常攻撃をすることで上昇する『魔力ゲージ』をためることで使うことができるよ」

「うむ! ねぎっこは『棍棒』に、ロンリーは『投擲』武器のクナイに、〝黄竜こうりゅうの宝玉〟をセットしておる。

 『棍棒』ならリーチを伸ばせるし、『投擲』なら、ワイヤーを伸ばして高速移動が可能になる」

「宝玉は全部で五色、〝黄竜こうりゅうの宝玉〟〝白秋はくしゅうの宝玉〟〝朱夏しゅかの宝玉〟〝玄冬げんとうの宝玉〟そして〝綠春ろくしゅんの宝玉〟だよ!

 ロンリーが『ハルバード』にセットしているのは、〝玄冬げんとうの宝玉〟。

 青いヘビを召喚して、弱点をサーチできるよ♪」

「掲示板の書き込みにもあったが、〝暦の運〟があれば、魔法の性能が向上する。さらに、魔力ゲージ貯めることで、威力を向上させることができるのだ」

「あ、見てみて、ちょうどフーターが、『レベル2』の攻撃をするみたい!」


 六都美むつみさんは、ゲームをしている俺たちにウインクをした。

 九条くじょうさんは、大きくうなづいて、二帆ふたほさんに話しかけた。


二帆ふたほちゃん。ムツミンからオッケー出たし! アレ解禁ってことで‼︎」


 九条くじょうさんの合図を受けて、ブラック=ホウセンに地道な通常攻撃をつづけていた二帆ふたほさんがニタリと笑う。


「りょーかいのすけ! フーちゃん『サナギマン』モード解除!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、〝黄竜こうりゅうの宝玉〟をセットしたクナイをブラック=ホウセンめがけて投擲する。だけど、黄色に輝くクナイは、ブラック=ホウセンから大きく逸れて飛んでいった。


『あ、外した』

『魔法の無駄打ちかよw』

『めずらしい、フーターでもミスすることがあるんだな』

『いや、どうやらワザとのようですよ』


 そう、ワザとだ!

 あの二帆ふたほさんが、こんなに大きな標的に、攻撃を外すわけがない。


 キラリン! ヒュン!! ディクシ!!!

「グギャ!?」


 クナイは、再び黄色く輝くと、素早くVの字に方向転換して、ブラック=ホウセンの弱点の首の付け根に深々と突き刺さった。


『なんだ、あのクナイの動き!』

『ありえねー!』

『さらにクナイの動きをトレースして、ブラック=ホウセンの弱点に高速移動!」

『さすがフーター!』

『動きが変態的すぎる』

『お、フーター、さらになんかするみたいだぞ』


 キラキラリン! ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、青く輝くレイピアで、目にも止まらぬ高速好きをお見舞いする。すると、


パキパキパキパキ……

「ぐおおおおお!!」


 ブラック=ホウセンの首の根本が、みるみるうちに氷漬けになっていく。


『おおお! 今度はレイビアの魔法を使った!』

『凍結能力か! エグいな』

『凍結って確か……』

『凍結場所の中心に攻撃を当てれば、一度だけクリティカルダメージが確定します』

『てことは、ひょっとして……』

『オーバーキルをねらっているんでしょう』


 俺は、弱点を氷漬けにされて動きがにぶりはじめたフラック=ホウセンを横目に、二帆ふたほさんと九条さんに、作戦を説明した。


「うわー、よく初プレイで、それ思いつくし」


 俺の作戦を聞いた九条くじょうさんが、苦笑いをする。


九条くじょうさんの装備を見て、ピンと来ました」

「うーん、でもこれってめっちゃロマン装備だし、ウチ、正直当てる自信ないし」

「大丈夫です、二帆ふたほさんのサポートがあれば絶対に行けますよ」

「にゃはははは! クーちゃん、ゴキブリ触覚を派手にぬっ殺すのだ!」

「わかったし! 二帆ふたほちゃん、すすむくん、サポートは頼んだし!」

「りょーかいのすけ!!」

「りょーかいのすけ!!」


 俺と二帆ふたほさんがプレイをしているんだ。普通に倒すんじゃ芸がない!

 オーバーキルで、ギャラリーをあっと言わせないと!!

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