第191話 事前情報ゼロのボスバトル。–G–

 孔雀の様なカラフルな二本の触角を携えたモンスターは、ワシの羽で高速に飛び回り、両手に持った巨大なハルバードで重く、早い斬撃攻撃を繰り返し、グリーンエースをほんろうしていた。


 え? どういうこと?

 なんで、モンスター同士が戦っているの?


『なんじゃこりゃー』

『モンスター同士が戦っている』

『一匹はグリーンエースだよな? もう一匹は新モンスターか?』

『ケンカしてるし』

『わけわからん』

『あ、グリーンエースのヒゲがからまったw」

『いい加減、ヒゲ剃れよグリーンエースw』


 観客モードは大賑わいだ。

 俺もわけがわからなかった。本当にどう言うことだ?


 六都美むつみさんが、観客の書き込みを見ながら満面の笑みを浮かべている。

 無表情がウリの七瀬ななせさんもニマニマとわらっている。


 『ねぎっこ』として、俺たちと一緒にゲームをやっている九条くじょうさんもニヤリと笑いながら、六都美むつみさんと七瀬ななせさんにOKサインを出した。


 九条くじょうさんのサインを見て、六都美むつみさんは、ふたたびピンと立てた指を真上に伸ばすオーバーリアクションをしながら叫んだ。


「パンパカパーン!

 これからM・M・O・Wメリーメントオンラインワールドの、最も大きな変更点、その2を発表しちゃうヨ!」

「な……なんだって—————!! いったいどれだけの変更点があるのだ??」


 相変わらずのノリノリで可愛く演技をする六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟に、七瀬ななせさんあやつる〝ナナシ〟がマイペースの棒立ち棒読みのリアクションをすると、六都美むつみさんは、視聴者の書き込みを見ながら話をつづけた。


「さっきも言ったけど、M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドのテーマは、〝世界を自由にクリエイト!〟なんだよね!

 だからM・M・O・Wメリーメントオンラインワールドでは、モンスターたちもオープンワールドを自由に生活をしています!」

「うむ、だから仲の悪いモンスター同士が遭遇すると、バトルが勃発することもあるのだ」

「モンスターのバトルに介入してもいいし、見学するのも自由。すべてがプレイヤーの自由ダヨ!」

「モンスター同士の戦いで敗れたモンスターからも素材を拾えるから、戦わずにレアアイテムをゲットすることもできるのだ!」


『なんだってー!』

『おいおい、どんだけ新情報出てくんだよw』

『しかし本当にすげーな、作り込みがやべー』

『てことは、このままバトルを見学してたら、負けた方のレア素材がゲットできるかもしれないってことか?』

『この様子だと、グリーンエース負けちゃいそうだな』

『ってことは、運が良ければ〝美髯公びぜんこうのヒゲ〟が、ノーリスクで手に入るかもしれないってことか!』

『美味しいなw』

『ある意味、初心者救済って感じもしますね。今まではレアアイテムは強いボスを倒すのが必須だったので』

『あー、そう言った面もあるのか』

『よく考えられてるなー』


 観客モードの書き込みは大賑わいだ。

 俺も二帆ふたほさんも大興奮だ。

 そんな俺たちに、九条くじょうさんが小さな声で質問をしてきた。


二帆ふたほちゃん、すすむくん。これからどうする。このままボスふたりの戦いを観戦するのも悪くない作戦だし』


 九条くじょうさんは、ニヤリと笑いながら俺たちふたりを見た。その瞳は、どこか挑発的だ。

 二帆ふたほさんは、九条くじょうさんにニヤリと微笑み返す。


『フーちゃんは正義の味方なのだ! グリーン=エースをいじめている、ゴキブリ触覚のグリフォンをぬっころす!』


 言うが早いか二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、目にも止まらぬ速さで、ゴキブリ触覚のグリフォンにクナイをなげつけた。


  キラリン! ザクリ! ウィィィィン! ザシュザシュザシュシュシュ!!


 〝フーター〟は、触覚グリフォンの喉元に黄色く輝くクナイ突き刺すと、すかさずワイヤーを巻き取って、細剣の高速百烈突きをお見舞いする。


『グァ!』


 触覚グリフォンは、たまらず後ろに飛び退いてフーターと距離をとった。


『さすが、フーターやっぱり戦うよな!』

『しかも、新キャラに真っ向勝負!』

『さすがフーター! 俺たちにはできないことを平然とやってのける!』

『そこにシビれる!』

『あこがれるゥ!』


 観客モードは〝フーター〟の電光石火の攻撃に大賑わいだ。

 六都美むつみさんと七瀬ななせさんがすばやく反応する。


「今、〝フーター〟が戦っているのは〝ブラック=ホウセン〟!

 三国志の武将、呂布をモデルにしたモンスターだよ♪」

「うむ。M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドでも、五本の指に入る強敵だ。あの〝フーター〟でも勝てるかどうか」


『呂布かー、どうりで』

『Three Kingdoms is good!』

『グリーン=エースは関羽がモデルだしな、敵対するのも当然か』

『これはさすがの〝フーター〟も苦戦するんじゃないのか?』

『攻略情報ナシだろうしな』

『This looks interesting!』

『頑張れ〝フーター〟!』

『〝ねぎっこ〟も!』

『あとついでに〝ロンリー〟も頑張れ!!』


 海外からの書き込みだろうか? 英語の書き込みもちらほらと混ざり始めている。視聴者もすでに三万人を超えている。

 M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドが、世界中から注目されている証拠だ。

 ちょっと、緊張してきたかも……?

 

 二帆ふたほさんが、クナイを使ったワイヤーアクションで、〝ブラック=ホウセン〟の攻撃をかわしながら細剣で光速の突きをお見舞いしているなか、九条くじょうさんは、俺にしか聞こえないこえで、ヒソヒソと話しかけてきた。


「ウチ、先月まで開発スタッフだったから、〝ブラック=ホウセン〟の攻略法も知ってるし。聞いときたい? すすむ君?」

「いえ! せっかくなら実力で倒したいです! M・M・Oメリーメントオンラインで遊ぶ時も、事前情報なしで挑戦すること、結構多いですし」


 俺が答えると、九条くじょうさんはニンマリと笑いながら返事をした。


「そう言うと思ったし! じゃあ、作戦はすすむくんにまかせるから、指示出し頼むし!」

「りょーかいのすけ!」


 俺は、謎の業界用語で力強く返事をすると、二帆ふたほさんが先行して戦っている〝ブラック=ホウセン〟に立ち向かっていった。




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なかがき


 ここまで読んでいただきめっちゃうれしいです。

 一ヶ月にわたる休載、まことに申し訳ありませんでした。毎年この時期は、公募に挑戦しておりまして、今年もそれに集中するためしばらく連載をお休みしておりました。

 無事、公募作品の投稿が完了しましたので、連載を再開した次第でございます。


 昨年の公募で投稿した作品は、惜しくも最終選考で落選してしまったため、今年こそはと、執筆にはげんでおりました。

 なお昨年の作品は、カクヨムに転載をしておりますので、興味がある方はご覧ください。


イカロスのプロペラ

https://kakuyomu.jp/works/16817139556544172562


ドローンをテーマにした、中学生の部活動のお話です。

児童文学で、かつ主人公が中学生の女の子と、本作品とはかなりテイストがかわりますが、ご興味があるかたは、ご覧いただけると幸いです。

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