第190話 12種類の新装備。-G-

『めちゃくちゃきれーだな』

『え? これ、ムービーじゃないの?』

『ついにゲームもここまできたか』

『マジ技術力すごすぎだろ!』


 掲示板の書き込みを見ながら、六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟がリアクションを返す。


M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドは、PC、PS5で先行発売だヨ! そのあと順次switchやスマホアプリに展開していく予定だヨ! そしてもちろん! PC版はディスプレイとVRに両対応!」


「今、〝ねぎっこ〟たちが遊んでいるのは、PC版だ。

 〝フーター〟には、VR版を遊んでもらっている」


 七瀬ななせさんあやつる〝ナナシ〟の発言に、掲示板が一気に華やいだ。


『やっぱりVR版あるんだ』

『せっかくやるならVR版だよなー』

『俺は酔うからパス』

『これ、60フレだよな? 解像度も高いし、酔いづらさは軽減されると思われ』

『俺、エリアルハンターなんだわ』

『あー。そりゃキツい』

『あのアクロバット戦法をVRゴーグルで遊ぶ奴なんかいるのかね?』


 うん、やっぱりフツーはVRゴーグルではやんないよね、エリアルハンター。


「にゃははは! めっちゃリアルなのだ!!」


 二帆ふたほさんは、首をぐるんぐるんと回しながら、M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドの絶景を眺めている。本当、よく酔わないな……。


「やや! 敵を見つけたのだ」


 そう言うと、二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、武器を抜いて三匹のゴブリンめがけて突っ込んでいった。


「あちゃちゃちゃちゃー!!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、胸元で剣を構えると、一匹のゴブリンに素早く連続付きをかましていく。


『お、ついに戦闘か!』

『フーター、ライトフェンサーなんだな』

『てっきり、エリアルハンターかと』

『でも、なんだか武器のモーション違くね?』

『だな、レイピアみたいな突きモーションだ』

『てことは、マタドールか?』

『めずらしいな、フーターがマタドールなんて』

『大楯を持ってるロンリーはランスガーディアンか?』

『わかんね』


 掲示板の書き込みに、Vtuberを演じている全身タイツ姿の六都美むつみさんと七瀬ななせさん、そして編集作業をしつつゲームを遊んでいる九条くじょう さんが「ニヤリ」とほくそ笑んだ。

 視聴者たちが、M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドの大幅なシステム変更に気が付いていないからだ。


『あと、ネギッコの武器も奇妙だな?』

『棒??』

『そんな武器つかうクラスあったっけ??』

『ない』

『しいて言えば、陰陽術師の庚申かのえさるですね』

『ああ、あの伸縮自在の』


「じゃあ、ウチも闘うし!」


 九条くじょう さんは、コントローラーを素早く操作する。

 すると、九条くじょう さんあやつる〝ねぎっこ〟が、黄色に輝く地面に棍をつきたてて、天高くジャンプした。いや、ジャンプしてるんじゃない、装備している棍が伸びてるんだ。

 天高く舞った〝ねぎっこ〟は、はるか上空からゴブリンに急降下キックをお見舞いする。


『すごい! 電光石火!!』

『てか、なんだあの攻撃!』

『ウエポンコレクターのムーンスパイラルキックみたいな動きした』


 掲示板がざわついている中、俺もふたりにつづく。


 うおおおお! バキィ!


 〝ロンリー〟は、大楯を構えるとゴブリンに猛ダッシュをぶちかます。そしてよろけモーションのゴブリンに、ハルバードを下からぶち当てると、ゴブリンは面白いように宙に舞った。


二帆ふたほさん。お願いします」

「りょーかいのすけ!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、胸元からクナイを取り出すと素早くゴブリンに向かって投擲する。クナイは、ゴブリンの喉元に「ザクリ」と命中した。その刹那。


 キラリン! ウィィィィン! ザシュザシュザシュシュシュ!!


 クナイが黄色く輝いて、仕掛けられたワイヤーが巻き取られていく。〝フーター〟は、ワイヤーを利用して美しく宙に舞うと、あっという間にゴブリンをレイピアの射程にとらえて、上下逆さまの体勢で目にもとまらぬ百裂突きをお見舞いした。


『出た!』

『フーターお得意のワイヤー追撃!』

『やっぱり、フーターのクラスはエリアルハンターか!』

『ん? でも待って、エリアルハンターの武器って手裏剣とレイピアに変更になったってこと??』

『わけわからん』


 掲示板の考察が続く中、九条くじょう さんがオッケーサインを出すと、それを確認した六都美むつみさんが、ピンと立てた指を真上に伸ばすオーバーリアクションをしながら叫んだ。


「パンパカパーン!

 これからM・M・O・Wメリーメントオンラインワールドの、最も大きな変更点を発表しちゃうヨ!」


「な……なんだって—————!!

 変更はオープンワールドだけではないのか?」


 ノリノリで可愛く演技をする六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟に、七瀬ななせさんあやつる〝ナナシ〟が棒立ちで棒読みのリアクションをする。

 撮影シーンはめっちゃシュールなんだけど、配信動画を見ると、全然違和感ないのが不思議だ。


 六都美むつみさんは、視聴者の書き込みを見ながら話を続ける。


M・M・O・Wメリーメントオンラインワールドのテーマは、〝世界を自由にクリエイト!〟なんだよね!

 だからM・M・O・Wメリーメントオンラインワールドには、『クラス』の概念がありません!!

 メインとサブ、2種類の装備を自由に組み合わせることができるんだ!

 モチロン、同じ装備を2つ持ってもオッケーだよ」


「装備は『片手剣』『爪』『戦靴シューズ』『大剣バスタードソード』『ハルバード』『銃火器ファイアアーム』『小型盾バックラー』『棍棒』『斧』『大楯』『細剣レイピア』そして、『投擲』の12種類だ」


「装備の組み合わせで、攻撃のコンビネーションは千変万化!

 いろいろ試してみてネ!」


『な……なんだって—————!!』

『ねぎっこは、棍棒とシューズを装備してるってことか』

『でもって、フーターは、レイピアと投擲だな』

『ウエポンコレクターのシステムを、さらに自由にした感じ?』

『いやいや、自由すぎる』

『もうほとんど別ゲーじゃん!』

『開発思い切った!』


 掲示板は大賑わいだ。そしてその中にひとつ、気になる書き込みが書かれてある。


『ん? でも、そうすると魔法職は撤廃ってことですか?

 ダンスシャーマンが使う神具が見当たりませんし、バリケーターや陰陽術師も撤廃ってことでしょうか』


 六都美むつみさんは、その書き込みをめざとく見つけて反応する。


「モチロン、魔法のシステムは健在だよ!

 魔法を使うには五色の宝玉を武器に……あ! みんな、見て見て! 三人がボスに遭遇したみたいだよ!」


 配信画面には、五色の古代獣の一匹、青龍偃月刀を構え、見事な髭を蓄えた巨大なリザードマンの〝グリーンエース〟がいる。


 そして、もう一匹。見たこともないモンスターがいた。


 そのモンスターは、グリーンエースよりもさらに一回り大きい体躯で、ライオンの体にワシの羽。そして頭には、孔雀の様なカラフルな二本の触角を携えている。


 そして、身長の倍くらいあるハルバードを軽々と振り回し、グリーンエースと一騎打ちを繰り広げていた。

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