第189話 七つの傷を持つロンリー。
「それじゃあ、配信まで、5秒前……3……2……1……!」
同時に全身タイツの
「みんなー、こんにちわー! 今日も全力はなまる元気! コジローだヨ!」
「ナナシだ」
うん、なんというか、めっちゃシュールだ。
配信画面には、全身タイツの
そしてその隣には、境界術師の和洋折衷ドレスを着た〝ナナシ〟が、横柄な態度で立っている。
いつも見ている
FUTAHOさんのつきそいで、テレビの収録スタジオには何度かお邪魔したことがあるけれど、VTuberの収録スタジオは初めてだ。
俺は、その規模の違いにビックリしていた。
テレビだと、収録スタジオには何十人もの裏方さんや見学の人がいる。収録スタジオも無茶苦茶大きい。
でも、今、
大手ゲームメーカーの公式チャンネル、しかもチャンネル登録者数が50万人を超える大人気チャンネルが、こんなにも小さなスタジオで収録されていることに、俺は驚いていた。
ライブ配信には、ユーザーからの書き込みが、ものすごいスピードで流れていく。
『コジローちゃんこんにちわ!』
『ナナシ様今日もお美しい!!』
『それより、本題早く早く!』
『今日、
『早く見たい!!』
「アハ♪ さっそくコメントありがとう!」
「よく見ろコジロー、今日はナナシたちをねぎらうコメントばかりではないぞ」
「ほんとダ! 半分以上、
「ぷんすか。ナナシ、やる気なくなった。今日の公開は中止にしよう」
「ちょ、ちょっと! ナナシの都合で勝手に中止しないでヨ!
せっかくスタジオに、〝フーター〟さんと〝ロンリー〟さんが遊びに来てくれてるんだヨ」
「ふむ、そうだった。はるばる稚内と西表島から来てくれたのに、そのまま返すのは大人げないな」
〝ナナシ〟のコメントに、掲示板の書き込みはさらに賑やかになっていく。
『え! フーターとロンリーって、そんな遠くから来たの?』
『旅費がえぐいw』
『だまされるな! どうせナナシのでまかせだ』
『だな。〝フーター〟と〝ロンリー〟ってリア友だろ? じゃないとあんなに頻繁に共闘やんないだろ』
『シェアハウスでもしてるのかな?』
『ひょっとしたら、同棲カップル!?』
『いや、ふつーに兄弟だろ』
「む? 鋭い視聴者がいるな! ご名答、〝フーター〟と〝ロンリー〟は
その言葉に武蔵さんが青ざめた。その表情には「なんでバラスんだヨ!」って書いてある。
『マジか!』
『兄弟か! どおりで!!』
「ふーむ、どうやら皆、〝フーター〟と〝ロンリー〟に興味深々のようだな。
では教えてやろう。〝フーター〟が兄で、〝ロンリー〟が弟だ。
ちなみに、弟の〝ロンリー〟は、胸に七つの傷を持つ男で、兄の〝フーター〟は、身長3メートルはくだらない大男。今日は仲良く巨大な馬、
『ちょ、それ世紀末救世主伝説w』
『お前はもう死んでいるww』
『わが人生に一片の悔いなしw』
『ナナシ様お得意の大ほら吹きだった(/・ω・)/』
「コラ! ナナシ!! デタラメ言わない!
あと、視聴者のみんなも、〝フーター〟さんと〝ロンリー〟さんへの質問はNGってことでヨロシク!」
「うぬ。ふたりは一般人なのだ。配慮を頼む。代わりにわれらの今日のパンツの色を教えてやろう! 今日のナナシは黒のレースだ!」
「ボクは、オレンジ色のギンガムチェックだヨ! ってコラ! 何言わせるんだヨ!」
「ちなみにブラもおそろいだ。ん? くだらないことを言っていたらゲームの準備が整ったようだ」
「そんじゃ、皆さんお待ちかねの
配信画面は、広々とした大草原に切り替わった。そしてそこには、レザーメイルを着た男性キャラひとりと、女性キャラふたりが映っていた。〝ロンリー〟と、〝フーター〟、そして
『うわ! 画面めちゃキレイ!』
『マジでこれが動くのかー』
『あれ? 三人いる?』
『三人? なんで』
「今日もテストプレイは、〝フーター〟さんと〝ロンリー〟さんに加えて、案内役として『巌流島チャンネルW』のディレクターの〝ねぎっこ〟が参加する予定だヨ」
「それじゃふたりとも、体験プレイを始めるし!」
(マイクが無いから、配信には
「りょーかいのすけ!」
「りょーかいのすけ!」
俺と
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