第185話 ゼロ距離の純白パンツ
5時半、俺は目を覚ました。
インキャぼっちの朝は早い。意外に思うかもしれないけれど早い。
もう半年以上続けている
俺は、シズカちゃんを起こさないように、そっと、そおっっっっっと掛け布団をめくる。
「!!!!」
俺に抱き着いて寝ていたシズカちゃんの黄色いだるんだるんのパーカーは、盛大に胸元ちかくまでめくれ上がっていて、その白い身体を包み込む純白のパンツが丸見えのモロ見えになっていた。
俺は、いそいそと、めくれ上がったシズカちゃんのパーカーを太ももまでずり下げると、そっと掛け布団をかけてから、手早くトレーニングウェアに着替えて静かに廊下へと出る。
そして、二階のキッチンにおりて、コーヒーメーカーのスイッチを入れた。真っ黒で、熱くて苦いコーヒーを飲んで、目を覚ますためだ。
とはいえ、今日に限っては、とっくに目が冴えわたっている。真っ白で暖かな温もりがある、シズカちゃんのパンツを目の前でガン見してしまったためだ。
うん、あれは心臓に悪すぎる。
明日からは、安心できるようにパーカーの下にも何かはいてもらおう。
『ジリリリイ! 5時45分! 5時45分!!』
テレビに映った目覚まし時計のキャラクターが、今の時刻を教えてくれる。
全自動ミルのついたコーヒーメーカーは、ぽこぽことコーヒーを落として、いい匂いを漂わしている。
俺はキッチンで淹れたてのコーヒーをカップにそそいで、ダイニングテーブルでコーヒーを飲む。
テレビは、今日の深夜に日本を発つ、フォレスト・フォースマンの話題でもちきりだ。フォレスト・フォースマンが行くところ、常に黒山の人だかりで、みな一様に彼に向かってスマホを構えている。
そしてフォレスト・フォースマンは、そんなファンたちの前でイヤな顔ひとつせず、ずっと笑顔を絶やさず神対応をつづけている。さすがは、スーパーセレブ、世界の大スターだ。
昨日、この大スターと実際に会っただなんて、それも握手をして会話を交わしただなんて未だに実感がわかない。
そればかりか、フォレスト・フォースマンの姪っ子が我が家にホームステイしているだなんて。
もし、シズカちゃんの存在がおおやけになったら、この家は、報道陣にとり囲まれてしまうだろう。彼女の存在が、トップシークレットになるのは当然だ。
俺はコーヒーを飲み切ると、テレビの左端を見る。時刻は「5:50」と表示されている。そろそろ出かけるか……そう思った時だった。
三階から、とたとたと可愛らしい足音がきこえてくる。シズカちゃんだ。
シズカちゃんは、目をこすりながら、俺に質問をした。
「Where are you going?」
(どこいくの?)
「I'm jogging with my friend」
(友達とジョギングです)
すると、シズカちゃんは目をパッチリと開けて叫んだ。
「I'm going too! !」
(私も行く!!)
数分後、俺はシズカちゃんと一緒に玄関を出た。
シズカちゃんはダブダブのパーカーで(下にはスパッツを履いてもらった)で、スニーカーのいでたちだ。
「Please follow me」
(ついてきてください)
「リョーカイノスケ!」
俺は、ゆっくりとジョギングを始める。
シズカちゃんは、しばらくニコニコ顔でジョギングをしていたけど、だんだんつまんなそうな顔になって、最後は明らかなふくれっ面になった。
「bored! speed up!」
(つまんない! もっと早く!)
突然、シズカちゃんが猛スピードで走りだした。
俺は、急いでシズカちゃんのペースに合わせる。
シズカちゃんはぐんぐん加速して、俺はついていくのがやっとになった。
「Turn right!」
(そこ、右折して!)
「リョーカイノスケ!」
俺は猛スピードで走るシズカちゃんに
「More! Speed up!」
(もっと!速く!)
えええ! ジョーダンだろ??
結局俺はほぼ全速力で約1キロちょっとの道のりを走り切った。
「はぁはぁはぁ……」
俺は、持参したペットボトルの水(
そんな俺を見て、シズカちゃんは涼しい顔でケタケタと笑っている。
「NYAHAHA! Susumu is sloppy!」
(にゃはは! ススムはだらしないね!」
シズカ……恐ろしい娘!
俺は思わず白目をむいてしまう。
シズカちゃん、とんでもない身体能力だ……。
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