第166話 無駄はゼロの連携プレイ。-G-

 今の暦は〝壬辰みずのえ年〟〝丁巳ひのとい月〟〝庚戌かのえいぬ日〟〝甲申きのえさる刻〟。


 〝壬辰みずのたつ〟は、敵の足元に水柱を起こして拘束する魔法。

 〝丁亥ひのとい〟は、ウルボロス、つまり、自分のしっぽをくわえて環状型になった蛇を召喚して、範囲内にいる敵を縛り付けるスリップダメージつき拘束魔法。

 〝庚戌かのえいぬ〟は、地獄の針山を作り出すこれもまたダメージつき拘束魔法。

 最後の〝甲申きのえさる刻〟は、足元に高速成長するタケノコを生やして、空中に吹き飛ばす。つまり、空中に拘束する魔法。


 今の暦は、全て拘束系の魔法だ。


 暦の被りがないからどれも威力は低いけど、それでも拘束効果はしっかりと機能する。十分に役にたつ魔法ばかりだ。

 そして、トリプルオーバーキルにかかせない魔法が、もうすぐ解禁される!


 とにかく暦の運がついている!


 俺は、Googleの翻訳ツールをつかってForceフォースに質問する。


「Hey Force. Do you have the "Queen's Whip"?」

(フォースさん。〝女王様のムチ〟は持ってますか?


「yes! I have!」

(うん。持ってるよ!)


「I understand. Now equip it and fill your magic gauge to max. Hurry up!」

(では、装備をして魔法ゲージを20まで貯めてください。大急ぎで!)


「That's fine, but... the enemy moves pretty fast, right?」

(いいけど、……ここの敵、結構動きが速いよ?)


「i will restrain the enemy.」

(俺が敵を拘束します)


「……Just in case, you're aiming for overkill, right?」

(……念のため聞いておくけど、当然トリプルオーバーキルを狙うんだよね?)


 俺は、Forceフォースにすぐさま返事をした。


「Of course!」

(当然!)


「〝フォーちゃん〟Where is Bakeneko's weakness?」

(フォーちゃん、バケネコたちの弱点はどこなのだ?)


「As you can see, it's a cat ear!」

(見ての通り、ネコミミだよ)


「りょーかいのすけ!」


 二帆ふたほさんは、Forceフォースに弱点を聞くや否や(フツーに英語しゃべってた……)すぐさま、マッチョネコの頭にワイヤーガンをぶっさすと、ネコミミマッチョの頭に回転斬撃をお見舞いし、すぐさま、もう一匹のネコミミマッチョの頭にワイヤーガンをぶっさして、同じく回転斬撃をお見舞いする。


「ぶほぶほぐご!?」

「ぶほぶほぐご!?」


 突然の先制攻撃を喰らったマッチョネコミミがたまらずよろめいた。


 今だ! 〝庚戌かのえいぬ〟!


 ザシュん!

 ザシュん!


 二匹のネコミミマッチョの足元に、地獄の針山が現れる。

 ネコミミマッチョは、身体を突き刺しにされて、よろけ状態のまま固まった。


 つづいて〝丁巳ひのとみ〟!


 すると、自分の尾をくわえた赤い蛇が二匹のネコミミマッチョの周りに現れる。

 蛇はそのままバクバクと自分の尾を食べていき、二匹のマッチョは、よろけ状態のまま密着状態で蛇にがんじがらめにされいく。


 ぼおぉぉぉ!


 赤いヘビは、ネコミミマッチョを限界まで締め上げると、メラメラと燃えさかる。


「Yay!  All you can aim for weak points.」

(やりぃ! 弱点狙い放題!)


 Forceフォースはネコミミマッチョに密着すると、すぐさま連続攻撃をお見舞いする。


『フシャーーーーーーー!!』


 しもべを拘束されたシルバー・プリンセスは、白銀の髪を逆立てて、Forceフォースに向かって〝女王のムチ〟を振りかぶる。

 しもべもろとも攻撃するつもりだろう。フレンドアタックでゲージが上昇するんだから、一石二鳥だ。


 けど、そうはさせない。

 俺は、召喚していた大楯〝戊戌つちのえいぬ〟が、フッと消えたのを確認すると、更なる呪文を唱える。


 〝甲申きのえさる


 シルバー・プリンセスの足元からタケノコがニョキニョキと生えてきて、たちまち4メートルくらいの高さまでシルバー・プリンセスを吹き飛ばす。


 そして立て続けに魔法を唱えた。


 〝壬辰みずのえ!〟


 タケノコに吹き飛ばされたシルバー・プリンセスの真下に水柱が立ち、さらに拘束をつづける。


「〝フーター〟、シルバー・プリンセスの弱点を下に向けちゃってください」

「りょーかいのすけ!」


「Lonely, the magic gauge has accumulated!」

(ロンリー、魔法ゲージ溜まったよ!)


「りょーかいのすけ!」


 俺は最後の準備にとりかかることにした。

 アイテムウインドウを開くと、〝松煙の古代墨〟で、〝壬辰みずのえ年〟を、今、切り替わったばかりのに切り替える。


 さあ、準備ができた。これで現環境での最大化力をぶっ放すことができる!

 俺は努めて冷静に、の魔法を使用した。

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