第158話 100%全開のガールズトーク。
キーンコーンカーンコーン
昼休みのチャイムが鳴る。お昼時間だ。
お昼時間のチャイムとともに、コロちゃんはすばやくスクールバッグからあるものを取り出した。
お弁当じゃない。ヘアブラシとハンドミラーだ。
コロちゃんは、ピンク色のお魚型のヘアピンで留めた髪をパチンとはずす。
すると、サイドヘアーにまとめられていたシルクみたいにサラサラな黒髪が、ハラリとほどかれる。
コロちゃんは、念入りに念入りにブラシで髪の毛をとかすと、再びお魚型のヘアピンで、前髪をサイドにまとめてパチンととめる。そうして、ハンドミラーとにらめっこしながら、念入りに念入りに髪型を確認する。
ようやく満足がいったのか、ハンドミラーをスクールバッグにおさめると、コロちゃんは、胸の上に軽く手をあてて、「ふう」と息を整える。
これから、保健室にやってくる人物に会うための、コロちゃんのルーティーンだ。
誰が来るかは、そう、知っているだろう?
ガラリ。
「コロちゃんー、
そう、俺の幼馴染で、コロちゃんの2年上のセンパイ、
「
コロちゃんは、ちょっとほほを染めながら、
「あー、
「ネーム描いてたら夢中になっちゃって……」
そんな
「あ、コロちゃん、今日も手作り、エライ!」
「ほんとー、スゴイよねー。わたしなんか完全にお母さんにたよりっきりー」
「そ、そんな、
そう言いながらコロちゃんは、女子力全開のカラフルでカワイイお弁当をパカリと開ける。
「
「そうそう、こんな手の込んだお弁当はつくれないよ。あ、卵焼き1個ちょうだい!」
ガールズトーク全開の主役が男の娘というなんとも不思議な空間の中、おれは席をたった。
「あれ?
「うん。今日は
「てことは……テレビ局のお弁当? いいなぁ! オーベルジーヌかな? 鳥久だといいなぁ……」
「わかったわかった。余ってたら2つ持って帰るよ。
焼きそばパンをかぶりつきながらしゃべる
「え? ふたつ……?」
「む、コロちゃん、アタシがふたつとも食べると思ってるでしょ!?」
「あ……えっと……その……ごめんなさい」
「いくらアタシが食いしん坊でも、晩御飯にお弁当ふたつは食べないよ……まあ、ホンネは食べたいけど」
「
言ったのは
「アタシんち、父子家庭でさ、いつもはアタシがご飯作ってるんだけど、
「そ、そうなんですね……ぼく、そんなことも知らないで……」
みるみると顔がくもるコロちゃんに、
「あ、気にしないで! お母さん亡くなったのもう8年も前のことだし。それに家事は半分以上、お父さんにやってもらってるから!!」
「8年も前って……小学生のときから……?」
うん、フォローになってない。空気がますます重くなっていく。こんな時は、いや、こんな時こそ、俺の出番だ。空気が読めないでおなじみの俺の出番だ。
「俺が隣に住んでた時は、毎日一緒にご飯食べてたよな。当番制の掃除もこっそり、うちの母さんにやってもらってたし!」
「コ、コラ!
コロちゃん、誤解だからね! たまーーーーーーにだよ。
慌てて取りつくろうとする
「アハハ♪
「そう、姉弟! 手のかかる弟で、本当にたいへんだったよ。アタシは、コロちゃんみたいなカワイイ弟がほしかったなー」
「え……?」
たちまちコロちゃんの顔が真っ赤になる。うん、いい感じだ。この調子で少しずつ少しずつ、
「それじゃ、俺、そろそろ行かなくっちゃ。あ、
俺の言葉に、
「ホラ、
「え……あ、しまった!!」
慌てる俺に、
「うふふー、わたしはーどっちでもいいよー」
と、のん気に返事をする。
「そ、それじゃあ、
これ以上この場にいると、ボロが出てしまう。俺は逃げるように保健室を出ると、自転車置き場へと向かっていった。
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