第144話 ゼログラビティの水風船。
「あ、スーちゃーん。スーちゃんも朝風呂入りに来たんだー」
ついさっきまで、湯舟につかっていたんだろう。
「なんだか目がさえちゃって……」
俺は、かけ湯をすませると、
近づいてしまうといろいろとヤバイ。
「わたしもー。いつもより早く寝たから目がさめちゃってー。
わたしがお風呂でのぼせちゃったとき、ベッドまで運んでくれたのスーちゃんでしょう? ありがとー。石段を登るの大変だったと思うのー。重かったでしょー?」
「そんな! 全然平気だよ!」
「ベットの横でねむっていたでしょー? ふふふ、疲れてた証拠だよー」
「そ、それは……」
俺は口ごもった。本当の事なんて言えない。
石段を登るときにこれでもかと背中にあたる、
階段を昇るたびに「ぽよよん」と、背中に心地よくあたる低反発なノーブラおっぱい攻撃に、平常心を失って、完全にMPを吸い取られてしまったんだ。
「うふふー、スーちゃんの寝顔、可愛かったのー」
「ちょ! やめてください!」
「眠っているスーちゃんを
あ、ベッドに運んでくれたの、コロちゃんだったんだ。やっぱりコロちゃんは力持ちだ。
「ねえ……スーちゃん、そんな端っこじゃなくて、もっとこっちにおいでよー」
え? どういうこと!?
「雲海、そこからだと、良く見えないでしょ? こっちに来てみてー。すっごくキレイだからー」
あ……そういうこと……。
俺は、勤めて冷静に、
「すごい……」
それは、まさに絶景だった。
朝日が雲を照らして、紫色にゆらめいている。でもその色は、日が昇っていくにつれて、少しずつ濃い赤い茜色になって、やがてオレンジがかった曙色へと移り変わっていった。
俺は、その景色に圧倒されて、まるで吸い込まれるように、ただ、ひたすらに雲海をながめていた。
「うっとりするねー」
俺の耳元に吐息がかかる。
横を向くと、目の前に
俺は、大慌てで水風船から目線を外した。(見ていたのきずかれてないよね……)
「うふふー。せっかくの露天風呂だし、
「そ、そんな……」
だから、当然、俺が
でも……。
でも…………。
その誤解も今日で終わりだ。終わりにしよう!
だって、俺が
チャンスは今だ。今しかない!
俺も
「俺と
俺は、もはや
でも、それだけじゃない! 今日はこれだけじゃない!!
「だって俺、好きな人がいるんで。もう一年以上、ずっと片思いです」
「え?」
でも、構わない。
俺は、覚悟を決めた。言う。言ってやる。当たって砕けろだ!
俺は、今日、この場所で、
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