第140話 ゼロ距離の男の子。
「
コロちゃんの「おいでおいで」に吸い寄せられるように露天風呂に入った俺は、コロちゃんとじいやと一緒に湯舟に肩までつかった。
温泉の湯は、透明感にあふれていて、でも、たえず湧き出てくる豊富な湯量で水面はさざ波のようにゆらめいていて、肩までお湯に浸かったコロちゃんの白くて細い身体は、湯舟に映りこんだ満月と一緒におぼろにかすんでいる。
「えへへ、気持ちいいです♪ やっぱり温泉っていいですね」
「う、うん」
湯舟に入って、身体がほんのりと桜色にそまったコロちゃんに、俺はあいづちをうつ。
静かだ。
遠くからバーベキューの準備をする
「今日はいっぱい歩いたから、身体が癒されるかんじがします」
そう言うとコロちゃんは湯舟の中で大きな伸びをした。俺はついつい、湯舟にゆらめく胸元と、ツルンツルンのわきの下に目がいってしまう。
うん、ヤバイ。可愛すぎる。これ、新しい扉を開いちゃうかも?
って! ダメだって!!
だってコロちゃんは
それに俺は今、エキストラハードの
「ね、ねえ、そ、そろそろ、身体洗わない?」
「そうですね! ちょっとのぼせてきちゃったし!」
そう言うと、コロちゃんは、俺の目の前で、「ザバッ」と立ち上がった。
!?!?!
俺の目の前で、ほんのりと桜色に染まったコロちゃんの男の子なところがカワイクこんにちはをする。
「じいやー。背中あらってあげる」
「はいはい。よろしくおねがいします」
俺は、完全にのぼせてしまった頭をクラクラさせながら、どうにかこうにか洗い場にたどりついた。
・
・
・
「じいやの背中、なんだか、ちっちゃくなったみたい……」
「それは、五郎ぼっちゃまが大きくなった証ですよ」
「そっかー。もう、じいやに甘えてばっかりじゃダメだね」
「ふうむ。そうおっしゃられると、少し寂しくなりますね……」
コロちゃんは、じいやの背中をごしごしと洗いながら、楽しそうにしゃべっている。ふたりの姿は、まるで、本当の孫とお爺さんのようだ。
いや、じいやが今までずっとコロちゃんの面倒を見ていたってことは、それよりも強い絆があるにちがいない。
「大丈夫。ぼくはじいやと、ずーっと一緒だよ」
コロちゃんは、桶にお湯を貯めて、じいやの背中にやさしくお湯をかける。
「光栄です。となればこのじいや、まだまだおいぼれる訳にはいきませぬな。
五郎ぼっちゃまのご子息をこの目で見るその日まで……」
「え? う……うん、そう……だね……」
?? コロちゃん、どうしたんだろう?
俺はコロちゃんのなんだかちょっと浮かない顔に首をかしげていると、突然、脱衣場から
「すみませーん。キャンピングカーの鍵を、かしてもらえませんかー?
昨日の夜に、お母さんと仕込んだバーベキューのお肉を、キャンピングカーの冷蔵庫に移していたのを忘れちゃってー」
「かしこまりました! 少々お待ちを!」
じいやは、大きく声をはりあげると、俺とコロちゃんに振り向いた。
「私はひと足さきにあがります。五郎ぼっちゃまと
そう言うと、じいやは素早く脱衣場へとむかっていった。
「(おくつろぎの所、すみませーん。鍵をお借りするだけでよかったのにー)」
「(いえいえ、夜道のなか、ご婦人をひとりで歩かせるわけにはまいりません)」
「(ご婦人だなんて―、うふふー、はずかしいですー……)」
「(………………)」
「(………………)」
「………………」
「………………」
俺とコロちゃんは、途端に無言になった。ふたりそろってぼっち属性が爆裂していた。
「か、身体冷えちゃうから、お風呂にもどろっか」
「そ、そうですね」
5月になったとはいえ、ここは屋外だ。俺たちは、すっかり湯冷めしてしまった身体を、再び温めるべく、ノロノロと温泉に身体をしずませた。
「………………」
「………………」
うん。ダメだ。ぼっちを発症している場合ではない。
そして今、俺はまたとないチャンスを得ていることに気が付いた。
俺は、コロちゃんの恋を応援するんだ。
「あ、あのさ、コロちゃん」
「なんですか、
「そ、その、コロちゃんって、好きな人……いる?」
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