第136話 十人十色の取材スタイル。
今は午前十一時ちょっと前。日没までに、主だった取材地をめぐる予定だから結構忙しい。
「いってらっしゃいませ」
キャンピングカーで待機するじいやに見送られて、俺たちは
「わー、この説明文おもしろーい」
「お、歴史オタクの血が騒いでるネ!」
この公園は、
公園の中央には、戦場のジオラマがしつらえてあって、周辺の地形や、城を精巧に再現している。
「これ、モデリングでおこしてみるし!」
本職は、ゲーム会社の背景デザイナーの
俺も、役に立つかはわかんないけど、とにかく色んな場所でスマホのシャッターを押しまくった。そして、
「コロちゃん、はい、ポーズ!!」
『コロちゃんを、たっくさん撮影してきて!』
ゴールデンウイークは、ネームに集中するために、キャンプに行くのを断念した
なんだろう? 今書いているネームの参考にでもするのかな?
俺は、
「なになに、コロちゃんの撮影会? ウチも参加するし!」
コロちゃんは、帽子を手に当てたり、しゃがんだり、振り向いたりと、あざとカワイイポーズで決めまくって、それをすかさず
「なに? あの子、めちゃくちゃ可愛いくない?」
「うわー。足細ーい」
「肌白ーい」
「顔もちっちゃーい」
「アイドルかな、それとも女優さん?」
「そりゃそうだろ、あんなカワイイ娘が一般人のわけがない!」
気がつくと、俺と
「ところで……カメラマンのとなりでスマホで撮影してるのだれだろう?」
「どーせ、コネか何かで撮影にくっついてきた、お偉いさんのお坊ちゃんだろ」
「いるんだよなー、あーいった、空気が読めない苦労知らずのボンボン!」
うん。気まずすぎる。
俺はスマホを胸ポケットにしまうと、すごすごと黒山の中にまぎれこんで、そのまま、逃げるように他の場所の撮影を始めた。
俺は、
「うほ、いいオジサマ!」
「あの、なんでオジサンばかり撮っているんですか?」
「
俺は、もう一度、思ったことを聞いてみた。
「あの、なんでオジサンばかり撮っているんですか?」
「
「だから、なんでオジサンばかり撮るんですか?」
「お前は何もわかっていない。殿方の顔に刻まれたシワがドラマをつくる。そこから若かりし姿を想像して描けば、深みのある人物が描ける。お前のようなお子ちゃまには解るまい」
「な……なるほど……」
うん。なんだか言いくるめられた気がするけど、わからなくもない。
「うほ、いいオジサマ!!」
俺は、オジサンを激写する
みんながカメラやスマホを持ってパシャパシャやってるなか、
「
俺は思ったことを聞いてみた。すると
「んきゃ! 私はスマホをもっていないのだよ。無論ガラケーもね。あるのは家の固定電話だけだからねぇ。だから、こうやってカメラの代わりにスケッチをしているのだよ!」
今時、携帯を持ってない人がいるんだ……でもまあ、なんとなく納得できている俺がいる。
白昼堂々、〝
俺は、
「なにこれ!!」
めちゃくちゃうまい! うまいなんてもんじゃない。
鉛筆で描かれたその絵は、当然、モノクロなんだけれども、めちゃくちゃリアルで、まるで色がついていると錯覚するほどだった。
でも……なんだかおかしい。
「んきゃ! 写真はみんなが撮ってるから、私は〝空気と匂い〟を持ち帰るのだよ」
「空気と……匂い?」
「そう、匂い! 実際の
そう言うと、
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