第134話 ゼロ距離のひそひそ話。
「ほらほら、シャキッとあるいてヨ!」
「おはよーー。スーーちゃん。あ、
「おはようございます」
「おはようございます」
「さあ、さあ、早く靴をはいて乗り込んで!!」
「わーーすごーーい。まるでお家みたいーー」
と、のほほん口調でうつらうつらとキャンピングカーの中に入っていく。俺とコロちゃんも、
そして最後に、
「次は、
と、話しかけながらそのまま右の助手席に乗り込んだ。
「かしこまりました。
じいやの声とともに、キャンピングカーは静かに音を立てて発進する。俺は周囲を見渡して、思ったことをそもまま口にした。
「確かに、ほとんどリビングだね……」
ソファがぐるりと囲んだ後部座席は、十人くらいなら余裕で座ることができそうだ。そして、小さいながらもキッチンが備え付けられて、壁掛けのテレビまで置いてある。
うん。これ、下手をしたら俺が去年まで住んでいた築45年のエレベータがついていないマンションよりも快適なんじゃなかろうか。
「
「ありがとーー。でもーーわたしよりーー、もっと必要な人がいるとおもうのーー」
コロちゃんの申し出に、
ガラッ!
「いっせーので……うりゃぁあ!!」
「……………………それ………!!」
コロちゃんがキャンピングカーのスライドするドアを開くと、
「やっぱりーー、出かける前にパソコンを確認したら、WEB版のフルカラー原稿が完成していたのーー。キャンプ中は、『んきゃ! 仕事を忘れて思いっきり遊ぶんだ!』ってはりきっていたからーー、昨日は一睡もしてないと思うのーー」
「まったく、世話の焼けるセンパイだし!」
「
ぶつぶつと、文句をいいながら、ちょっとキャンピには不釣り合いなモノトーンのパンクロックなスタイルと
ふたりとも文句をいっているけど、わざわざ
「
助手席から、後部座席へとやってきた
「わかりました」
俺は、死んだように眠る
ベッドルームは、コロちゃんが言った通りせまかった。二、三人は寝れるスペースがあるんだけど……高さは50センチくらいしかない。全面にマットレスが敷かれた、かなーりせまいロフトといった感じだ。
これ、
「あちゃちゃちゃちゃちゃ、うわっちゃー!」
あんなに蹴っ飛ばされたのに、
「ふう……。アリガト
「その……
と、アニメ声じゃない、仕事モードの
「
「そ、そんな……」
「お二人の関係が悪くなっていませんか」
「それは大丈夫です。キャンプは誘えなかったけど、そのあと一緒に〝ネイビーキング〟をトリプルオーバーキルでぬっ殺しましたから」
「そうですか……安心しました……」
そう言うと、
「よーし、そんじゃキャンプを思いっっっっっっっっきり楽しんじゃうヨ!」
と、カワイイ、アニメ声の
俺は、なんだかもやもやした気持ちでハシゴを降りた。
くすぶった俺の気持ちとは対照的に、窓から見える景色には、雲ひとつない青空が広がっていた。
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