第119話 ワイルドだけど揺れはゼロ。
今回のイエロージャック戦につかった、
「……ぼく、もうお家にかえらないと……」
コロちゃんが、なごり惜しそうな声で席を立つ。俺もコロちゃんにつづいた。
「おくっていくよ。って言っても、俺はパパの車に一緒にのるだけだけど」
「助かります……
コロちゃんは、ほほを真っ赤に染めて、モジモジとする。
うん。本当に、なんであのパパにこんなカワイイファンがついているんだろう。
(失礼)
俺とコロちゃんは、素材集めを続ける
「あー、
リビングでパパといっしょにくつろいでいた
「……え?
そりゃそうだ。学校の保健の先生が、なぜか俺の家にいるんだもん。ふつーそうなる。
「実は、
俺は、勤めて事務的に必要最小限の説明を行うと、
「そーなのー。そして、スーちゃんはわたしのカワイイ弟君なのでーす」
と、
「えええ!! そうなんだぁ!」
コロちゃんは、大き目なトーンで驚いた。
「
コロちゃんは、ちょっと興奮気味に早口でしゃべっていたけど、すぐにいつもの小さな声にもどって、それから首をひねった。
「ただいま」
「ただいま」
ママと父さんが、会社から戻ってきたからだ。
「おかえり」
「おかえり」
「おかえりー」
「おやおや、カワイイお客さまだね」
「おやおや、
笑顔で出迎えるパパと母さんと
うん。完全に混乱している。
「……え? どういう……こと……で……すか??」
そりゃそうだ。もう両親がLDKにそろっているのに、階段からおやおや言いながら両親がもう一組何食わぬ顔して上がり込んでいるんだもの。
「えーと、詳しくは、おくりの車の中で説明するよ。パパ、車、おねがい」
俺は、しきりに首をひねっているコロちゃんの背中を押して、一階の玄関へと向かった。
・
・
・
パパは、その体格にお似合いのワイルドなランドクルーザーを、法定規則をきっちりとまもった安全運転で走らせる。さすがは高級車、乗り心地はばつぐんだ。
そして、その安全運転の車のなかで、俺とパパは、なんとも複雑怪奇な我が家の家庭の事情をコロちゃんになるべくかみくだいて説明した。
「……そうなんですね……なんだか大人の世界すぎて……ぼくには理解がおいつかないです……」
コロちゃんは、俺と全くおんなじ、きわめて常識的な感想を言って、話をつづけた。
「なんだか……
車道の先の信号が赤になった。パパはゆっくりとスピードをおとして車をとめると、後部座席にすわるコロちゃん、そして俺の目を交互にみつめて、まるで諭すように話した。
「はっはっは。私たちを見習えとは言わないけれど、世のなかには、いろんな人がいるし、いろんな生き方があるんだよ。
答えはひとつじゃないし、答えるタイミングもひとつじゃない。だから、後悔の無いように、今をしっかりと生きなさい」
「……はい!」
コロちゃんの返事とシンクロするみたいに信号が赤から青に切り替わる。
パパはコロちゃんの返事にテカテカの笑顔で応えると、前を向いて再びゆっくりと車を走らせた。
―――― 答えはひとつじゃないし、答えるタイミングもひとつじゃない。――――
公務員の内定をもらって、高校の卒業式に
俺は、とてもスムーズで、ちっとも揺れない高級外車のなかで、もう、一年以上まえから心に決めている目標が、ぐらぐらと揺れていくのをハッキリと感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます