第115話 武器の猶予はそろそろゼロ。ーGー

 ハッソウザムライの〝フーター〟とランスガーディアンの〝シフト〟は、面白いくらいの連係プレイをみせていた。

 

 〝フーター〟は、〝シフト〟の肩を踏み台にしてジャンプをすると、宙に浮かんだイエロージャックに密着連続斬撃をお見舞いする。

 そして落下し始めたところに、〝シフト〟が凱旋のロンドをおもいっっっっっきり振り上げて、イエロージャックを再び宙に浮かび上がらせる。


 そして〝フーター〟は、〝シフト〟が振り上げた凱旋のロンドの先端にフワリとつま先立ちをして、すぐさまジャンプをしてイエロージャックの追撃をする。


『すげー、完全なお手玉状態』

『武器の先端に立つなんて、ありえない』

『さすがフーター、俺たちができないことを(以下略)』

『いや、フーターの変態プレイもしびれるんだけど、シフトがかなり上手だヨ』

『ですね、弱点の脇腹にドンピシャで攻撃をヒットさせています』

『あんなに大振りな攻撃をジャストでぶち当てるなんて、あこがれるヨ』

『連携、オフラインで相当練習したんじゃね?』

『だよなー、初見でこの息の合い方はありえない』

『シフト、誰かのサブアカじゃね?』

『ありえる。どっちかと言えばサポート職だし、もしかして……よろず?』

『アルコダットの線もある』


 ……観客モードの書き込みは、シフトの正体探しでやっきになっている。

 だけどわかるはずがない。正体が、こんなに華奢で、こんなに女子の制服が似合う男の子だなんて、予想だにできないはずだ。

 そして、まさか〝フーター〟と〝シフト〟のふたりが共闘するのは初めてで、なおかつ初対面だなんて、夢にも思わないはずだ。


『あーこれ、モードチェンジまでお手玉だな』

『守備力お化けのイエロージャックのHPを、こんなにも簡単にけずるかね』

『でも、こっからが長い』

『サルたちの戦いはこれからだ!』

『イエロージャックのモードチェンジにご期待ください』


 そう、イエロージャックはこのあとモードチェンジを残している。

 そして、このあとのモードチェンジこそ、イエロージャックの本領だ。


 イエロージャックは、


『むっきゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』


と、叫び声をあけびながら衝撃波を放って、さっきからずっとまとわりついていた〝フーター〟をふきとばした。


 そして、


 ムキャ!

 ムキャキャ!

 ムキャキャキャ!

 むきゃうっふーん!!


 と、色とりどりのサルがどこからともなく表れた。


 赤サルと、緑サルと、白サル、それからリボンをつけたマゼンダサルが、イエロージャックの周囲にわらわらと集まると、なんだかカッコいいポーズをとる。すると、


 ぼっがーん!!


 と、サルたちのバックにド派手な爆発が巻き起こった。


『出た、おさる戦隊ムキャレンジャー!』

『え? こいつら、そんな名前だったの?』

『今適当に名付けてみた』

『ww』


「にゃはは! ムキャレンジャー! ムキャレンジャー!」


 二帆ふたほさんは、ギャラリーモードの書き込みにゴキゲンだ。

 でも確かに秀逸だ。いいネーミングセンスしている。


 ムキャレンジャーは、かっこよくポーズをとったあと、素早くイエロージャックの陰にかくれる。

 そしてボスザルのイエロージャックは、ゴツゴツの岩に囲まれた右半身で、ガードポジションをとりつつ、右手にもった棒を、思い切り地面に叩きつけた。


 すると、ガケから大岩がゴロンゴロンと、イエロージャックに向かって落っこちてくる。


「? このままだと、自分にぶつかっちゃうのだ」

「違います。ムキャレンジャーのコンビネーションです!」 

「……二帆ふたほさん、ぼくの後ろに……」


 赤いサルは、ゴロゴロと転がり落ちてくる岩をレシーブしてつぎつぎと上空にほおり投げる。すると、緑ザルと白ザルが、大きくジャンプして、


 バシィ!!


 と、まるでバレーボールのスパイクみたいに思いっきり大岩をぶったたいた。


 岩は猛スピードで、俺たちめがけて突っ込んでくる。

 

 ガギン!

 ガギン!


 俺とコロちゃんは、素早く大盾を構えてガードする。

 うん。決してしのげない攻撃じゃない。でも、


 バシィ!! バシィ!! バシィ!! 

 バシィ!! バシィ!! バシィ!! 

 

 ガギン! ガギン! ガギン!

 ガギン! ガギン! ガギン!


 赤ザルは、次々と岩石をレシーブして、緑サルと紫サルは、矢継ぎ早にアタックをしかけてくるものだから、反撃をする暇がない。


 そんななか、


『むきゃうっふーん!!』


 なんだかやたらとセクシーなマゼンダザルが、イエロージャックの岩におおわれたたくましい右半身に乗っかると、なまめかしくバナナをむきむきして、イエロージャックにうやうやしく差し出した。

 イエロージャックは、まるで溶けてしまうようなデレデレとした表情で、バナナをがぶりとほおばった。


『むきゃきゃ!!』


 バナナを食べたイエロージャックは、HPが瞬く間に回復していく。

 すっかり元気を取り戻したイエロージャックは、やたらとセクシーなマゼンダザルを、デレデレと鼻の下を伸ばしながら見つめている。


 うん。これ、めちゃくちゃウザい。

 そして、どうやって倒せばいいの??


 ぐずぐずしていたら、召喚した〝戊戌つちのえいぬ〟の大盾の制限時間がきれてしまう……。

 俺は、このふざけたおさる戦隊ムキャレンジャーのコンビネーション戦法に、大きなあせりを感じ始めていた。

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