第103話 ボリュームがほとんどゼロの自己紹介。
朝起きて、
せっかく達成したトリプルオーバーキルだけど、こればっかりはしょうがない。
とはいえ、弱体化されたのはカニの攻撃力だけだし、結構命中させるのが難しいウエポンハンターのムーン・スパイラル・キックも、〝
再挑戦でもう一度トリプルオーバーキルを狙うのも、決して不可能じゃない。
そもそも途中から
俺はそんなことをぼんやりと考えながら、学生服に着替えて2階のリビングに降りた。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはようー」
父さん、母さん、パパとママ、そして俺が密かに憧れている保健室の先生で、大ファンの少女マンガ『信長のおねーさん』の作者、
この、なんともややこしい朝の風景も、ずいぶんと慣れた。あれからもう8ヶ月か……時が経つのは早いものだ。
(
俺は、ブラックコーヒーと、黄身が濃いめのオムレツとトーストの朝食を食べると、
「それじゃー、わたしは先に行ってるからー」
ヘルメットをかぶって、おしゃれな原付のバイクに乗った
今日は随分と風が強い。とんでもない向かい風だ。
これはさすがに降りないと坂を登れそうにない。
俺は、坂の中腹で自転車を降りると、押して登り始めた。
見渡すかぎりの水平線が美しい。たまには自転車を押してゆっくり登校するのも悪くないな……。
俺は、のんびりとした歩調で、学校までの坂道をのぼっていき、学校の校門をくぐる。そして、自転車を自転車置き場に置くと、いつものように保健室へと向かった。
するとそこには先客がいた。
先客は、空を見ていた。窓のサッシに頬杖をついて、ぼんやりと空を見上げていた。
カワイイ。息をのむほど可愛い子だ。
身長は160センチくらい。下級生だろうか……とろんとした二重まぶたで、すっごくかわいい子。耳も見えるくらいのショートの髪型に、ちょっと不釣り合いな長めの前髪が、やわらかそうに風を受けて揺らいでいる。
「あの……」
俺が声をかけると、その子は、「ビクッ」って肩をふるわせて、こっちを見た。長い前髪が、まるで墨汁をかけられたみたいに顔を半分おおってしまう。せっかく可愛いのに……もったいない。
「一年生? 保険の
俺の声に、その子はうつむいて顔を真っ赤にしている。
そしてそのまま、まるでツイン=ホロスコープのマッチョ像のごとく固まってしまった。(いや、この例えは悪すぎるな……この子と似ても似つかない)
えーと……どうしよう。
俺が困っていると、保健室のドアがガラリと開いた。
「あー、
「あ、スーちゃん、紹介するねー。今日からー、保健室登校をする
そう言うと、その子はスカートの端をぎゅっとにぎりながら、消え入りそうな声であいさつをした。
「し、
「3年の
あと、
「あー、しっぱいしっぱいー」
「よ、よろしくおねがいします。
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