幕間劇
第95話 あるオフィスの一日
そのオフィスは、デジタル化がいちじるしい、このご時世にふさわしいオフィスだった。とても遊び心のあるエントランスは、まるでジャングルのようだ。
そしてそのジャングルを模したエントランスに、小柄な女性が入ってきて、タッチパネルで受付を行なっている。
童顔で化粧っけのない顔の鼻先に細フレームのシルバーの眼鏡をちょこんとのっけて、腰まであるながい黒髪をひっつめにしている。
カリスマモデル、FUTAHOのマネージャーをつとめる
程なく、金髪でいかにも「クリエーターでございます」といった感じの、ピンク色のメガネと、同じ色の迷彩服を着た男性がやってきた。
「どーもどーも、お待たせしました。
すると、壁一面にジャングルを映しているプロジェクションマッピングに、ジャガーが現れて、ゆっくり、ゆっくりと歩き始めた。
ピンク迷彩の
「会議室の部屋名が動物の名前になってましてね。その動物が会議室まで案内してくれる趣向なんですけど……ちょっと歩くのが遅すぎてね。全く役に立たない。
本当に誰がこんな無駄な演出を考えたんだか……クリエイターの風上にも置けないヤツだ」
「……あはは」
どの口が言ってるんだか……。
だが、
それもそのはず、
「この度は、
「いえいえこちらも嬉しいです。ダメもとで頼んだのにまさか、本当にオファーをうけてくださるとは」
「とんでもない! FUTAHOは、
「それは良かった。ところで、あなたの事務所には、他にも、所属している著名人がいらっしゃいますよね?」
「はい、FUTAHOの父の
「いやいや、そちらではありません。『信長のおねーさん』の
今回お話ししたいのは、クリエイター、
「え?」
「実は、
「その同級生って……」
「はい、『月刊はなとちる』の編集長の
「なるほど……」
そして心の中でもほくそ笑んだ。
あの、やたらめったらLINEで食事のお誘いをしてくる、パワハラセクハラクチャハラ野郎も、少しは役にたつじゃない。
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