第91話 実用性ゼロの究極奥義。ーGー

「ギョひひひーーーーーーーーーーーーん」


 魚頭ケンタウロスは、エラをピクピクさせながらいななくと、左手に赤く輝く弓を召喚した。

 そして、右手を天高く上げると、赤く輝くまるで太陽のような球体を創り出す。

 球体は、みるみると3本の矢へと姿を変え、魚頭ケンタウロスは、そのまま矢をつがえて3本の弓を同時に射出した。


 弓矢は、風をきって〝コジロー〟〝フーター〟そして〝ロンリー〟に襲いかかる。


「ひょい」

「ひょい」

「いて!」


 事前に飛び道具を予測した理論派トッププレイヤーの〝コジロー〟は、先行入力スキルの〝合気〟で華麗に弓矢を回避する。

 感覚派変態プレイヤーの〝フーター〟は、反射神経を頼りに、華麗に弓矢を回避する。

 そして、理論派おっぱい大好きプレイヤーの〝ロンリー〟は、弓矢を避け切れずに無様に擦り傷を負った。


「ギョギョギョギョギョギョギョひーーん」


 魚頭ケンタウロスは、口をぱくぱくさせながらいななくと、今度は両手を天高くかざす。

 すると両手に、青く輝くトゲトゲの鉄球を召喚した。トゲトゲは漆黒の鎖で結ばれていて、魚頭ケンタウロスは、鎖をつかむと球体をぶんぶんと振り回して攻撃モーションへと移行した。


「マカセテ! ここは僕がさばききるヨ!」

『ゥゥゥゥゥーーーワチャアーーーーー!!!!』


 六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟は、怪鳥の叫びを使う。

 でも、魚頭ケンタウロスは、叫び声をあげる〝コジロー〟をガン無視して、鉄球を〝ロンリー〟めがけてぶん投げた。


 グシャ!


 鉄球をしたたか食らった〝ロンリー〟はたちまちHPゲージが点滅する。


「スーちゃん!」


「なんで? なんで怪鳥の叫びがきかないんダヨ!」


「……多分ですけど、弓矢で回避能力が低いプレイヤーを判別して、より回避が難しくてダメージが大きい鉄球で狙い撃ちをするアルゴリズムみたいです」


「ゲェー、初心者にやさしくないアルゴリズムだなぁ……こんなんじゃ、ライトユーザーが楽しめなくてDAUが減っちゃうヨ。運営ディレクターかわったのかナ?」


 六都美むつみさんは、口をとがらせて文句を言いつつ、でも〝コジロー〟に、〝練乳キャンディー〟を食べさせて、激レア激萌えな舌をぺろりんと出すポーズを繰り出して、しっかりと可愛さをアピールする。


『好き!』

『コジローちゃんかわいい!』

『可愛い!』

『ぎゃんかわ!』

『世界一可愛い!!』


観客モードの〝コジロー〟ファンは大盛り上がりだ。

(本当に魅せプレイに徹底している、さすがトッププレイヤーだ)



 魚頭ケンタウロスが再び赤い弓矢を召喚する中、俺は、二帆ふたほさんと六都美むつみさんと作戦の再確認をした。


「とりあえず、今回は俺がなんとか攻撃を受け切ります。二帆ふたほさんと六都美むつみさんは、予定通り、コイツを転倒させて弱点を露出させてください」


「りょーかいのすけ!」

「りょーかいのすけ!」


「あ、あと、六都美むつみさん。トドメをさすのは、〝ケイラクヅキ〟じゃなくて〝ショウテンホタル〟にしませんか?」


 俺の提案に、VRゴーグルをかぶった六都美むつみさんは、可愛く首をかしげた。


「えー? 〝ショウテンホタル〟は、残ったスキルポイントを全消費して放つ技だから、スキルポイントを消費しまくるインファイターだと、ろくにダメージが与えられない完全に魅せプレイ用の技ダヨ?」


「今は〝暦の運〟があります。

 〝ショウテンホタル〟を放つ直前に、六都美むつみさんのスキルポイントを限界突破させることが可能です」


「そっか! ナイスだよすすむさん! さすがは本職の陰陽導師ダネ!  

 そんじゃ、今日は観客モードの〝コジロー〟ファンに、おもいっきりサービスしちゃおっカナ!」 


 魚ケンタウロスが着々と弓をつがえる準備をするなか、〝フーター〟と〝コジロー〟と〝ロンリー〟は、着々とトリプルオーバーキルの準備を始めていた。


 

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