第90話 ダメージゼロの精神攻撃。ーGー

 〝ロンリー〟と2匹のマッチョを閉じ込めて、血の涙を流している鉄の処女アイアンメイデンは、ゆっくりと上下運動を始めた。


 そして、前後にゆれるたびに、


 ぐちょ!

 くちゃ!

 ぬちょ!


 と、意味深な効果音を鳴らしながら、目から涙を流し続けている。


『中身、どんな感じになってるんだろ?』

『やらないか?』

『やめれ! 想像してもーた』

『ロンリーの貞操は失われました』

『かわいそうに……』


 観客モードの書き込みも、なんだか意味深でレーティングギリギリだ。


 ぐちょくちゃぬちょ!

 ぐちょくちゃぬちょ!!


 鉄の処女アイアンメイデンの上下運動は、少しずつ、少しずつ激しさをましていく。


 ぐちょくちゃぬちょ!!!

 ぐちょくちゃぬちょ!!!!


『らめえ!』

『これ以上はげしくされたら、ロンリーがこわれちゃう!』

『演出、随分と長いな』

『こんな演出でレーティングは大丈夫か!』

『大丈夫だ、問題ない!』


 いやマズイ、レーティングはともかく、演出の時間が想像以上に長い! 本当に演出が随分と念入りだ。大丈夫だろうか、これ以上、鉄の処女アイアンメイデンに閉じ込められたままだと、ロンリーがなってしまう!


 ぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょぐちょくちゃぬちょ……………………どっくん!


鉄の処女アイアンメイデンの上下運動は、激しさを増し、その動きがピークに達した瞬間、鉄の処女アイアンメイデンはひび割れて、


「ギョひひひーーーーーーーーーーーーん」


 中から、魚の頭をしたケンタウロスが現れた。


 そして、そのかたわらには、〝辛酉かのととり〟の魔法で鋼鉄化した〝ロンリー〟が、グッタリと横たわっていた。


『まさかの「合体」!』

『最強のモンスターを作りたいんですよ!』

『ダメーーーーーーーーーーーーーー⤴︎♪』

『トム・ブラウンかよ!』

『あ。鋼鉄化したロンリーが転がっているw』

『閉じ込められる前に、鋼鉄化したのか』

『ロンリーの貞操は守られた!』

『あ、鋼鉄化が切れたw』

『危なかったなw』

『もう少し演出が長かったら、合体してたところだw』

『らめぇーーーーーーーーーーーーーー⤴︎♪』


 観客モードの書き込みは大賑わいだ。

 幸い、鋼鉄化のおかげでダメージはゼロだけど、なんだか精神的なダメージがとんでもない。

 俺は〝辛酉かのととり〟が解けた〝ロンリー〟をあやつって、すぐさま合体ケンタウロスから距離をとる。


「にゃははは! 魚マッチョケンタウロス。きもい!!」

「ボク……もしあのまま閉じ込められたままだったら……と合体してたのカナ……」

「ムーちゃんが混ざれば、きっと美少女ボクっ娘マッチョケンタウロスになってたのだ」

「わーーーー! ヤメテヨ! 想像しちゃったダロ!」

「にゃはははは!」


 俺も、六都美むつみさんがまざったケンタウロスを想像した。うん。六都美むつみさんはタダでさえギャップ萌えでキャラ渋滞が激しい人なんだ。

 これ以上の要素がまざったら、頭がパンクしてしまいそうだ。


「くだらないこと言ってないで、二帆ふたほは、ライフルモードにチェンジ!」

「弾は〝ノーマルバレット〟でいいかい?」

「とりあえずはそれで!」

「りょーかいのすけ!」


 六都美むつみさんは、二帆ふたほさんにテキパキと指示をだすと、VRゴーグルをかぶったまま、俺の方に顔を向ける。


すすむさんは、コイツの弱点はドコだとオモウ?」

「〝癸巳みずのとみ〟は使っちゃったからサーチするのは無理ですけど、多分、ガンコ=ゾディアックとおんなじルールだと思います」

「やっぱり? ボクもそう思う! あーやっぱり『理論派』がいると助かるヨ!

 二帆ふたほ! 弾を変更! 〝トリモチバレット〟で!」

「りょーかいのすけ!」


 うれしい! 理論派トッププレイヤーの〝コジロー〟をあやつる六都美むつみさんから『理論派』の称号をいただくなんて、嬉しすぎる!!


「さあ! そろそろFUTAHOのCM撮影が始まる時間だし、さっさと片付けるヨ!!」

「わかりました!」

「魚ケンタウロスをぬっころすのだ!」

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