第88話 ダメージゼロのサポート。ーGー

 六都美むつみさんあやつるインファイターの〝コジロー〟と、二帆ふたほさんあやつる忍びスナイパーの〝フーター〟が、2匹のマッチョの乳首をいじり倒しているなか、俺のあやつる陰陽導師の〝ロンリー〟は、蚊帳の外……いや、電流が流れるリングの外で、陰陽導師の魔法を使用した。


癸巳みずのとみ


 すると、青黒いヘビが現れて、ヌルヌルと電流リンクににじりよっていって、そのまま電流をすりぬけた! しかも2匹!


 やった! 思惑通り!!


 今は癸巳みずのとみの刻。〝暦の運〟に恵まれて、2匹の蛇を召喚できた。



『ん? なんでロンリーが攻撃に参加できるんだ?』

『あー、癸巳みずのとみか、確かにあれ、ダメージ与える魔法じゃないしな』

『なるほど、セコンド的なサポートならできんのか』



 観客モードの中にも、気がついた人がいるみたいだ。書き込みで考察が始まっている。


 実のところ〝癸巳みずのとみ〟を使うのは、今日がはじめてだった。


 だって俺は、オンラインゲームをぼっちで遊ぶ人間で、攻略動画を見てからプレイする効率厨だったから。

 最初から弱点も、攻略法もわかっているボスを倒す、効率厨なボッチートだったから。そんな俺にとって、この〝癸巳みずのとみ〟は、もっとも必要としない魔法だった。


 でも今は違う。俺は今、俺が見ていた攻略動画、〝巌流島チャンネル〟の作成者の六都美むつみさんと、効率とかそんなの全く気にせずに、感じるままいつも全力でゲームを楽しむ二帆ふたほさんと一緒に戦っている。

 M・M・Oメリーメントオンラインのトッププレイヤーと一緒に戦っている。パートナーなんだ!!


 〝ロンリー〟が召喚した2匹の青黒いヘビは、ヌルヌルと2匹のマッチョに近づくと、ムッキムキの身体の上を這っていく。

 そして、白魚マッチョの〝左エラ〟と、黒馬マッチョの〝右耳〟に潜り込んで、青白い光を放ち始めた。


二帆ふたほさん! 六都美むつみさん! そこがマッチョの弱点です!」

「りょーかいのすけ!」

「りょーかいのすけ!」


 プシュ!


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、スナイパーライフルを構えて、黒馬マッチョの右耳にすばやく〝フレイムバレット〟をお見まいする。


 ディクシ!!

「ヒヒーン!!」


 〝フレイムバレット〟が黒馬マッチョの右耳にヒットすると、弱点ダメージの効果音がなる。同時に、黒馬マッチョが苦しそうにいななきをあげる。

 黒馬マッチョの右耳は、真っ赤に腫れあがっていた。


「ナイス、二帆ふたほ!」


 そこにすぐさまジャンプをした六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟が、かかと落としをおみまいする。


 ディクシ!!

「ヒヒーン!!」


 黒馬マッチョは、弱点の右耳にしたたかダメージをうけて、たまらず片膝をついた。


「チャンス到来なのだ!!」


 二帆ふたほさんが椅子から飛び降りて、〝フーター〟の武器をすばやく爪に持ち替えると、ふたつのBluetoothコントローラーをシャドーボクシングのごとくはげしく前後にふりはじめた。


「あーーーーーーーーちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ……」


 黒馬マッチョが、右耳を赤くパンパンにはらしているなか、俺は、二帆ふたほさんのだるんだるんのパーカーがずりおちてむきだしになった、形の良いおっぱいがプルンプルンと激しく震えるさまを、ありがたく鑑賞した。


「あーーーーーーーーちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃーーーーー!!」


 そしてパーカーのすそは、すこしずつ、すこしずつ、ずり上がって、二帆ふたほさんのここには書いてはよろしくないところを、むきだしのもろだしにした。


 黒馬マッチョの右耳は、これ以上ないくらいパンパンにふくれあがって、俺のここには書いてはよろしくないところも、これ以上ないくらいにパンパンにふくれあがっている。


二帆ふたほ九十九つくも熱手拳!!」


「最初に〝フレイムバレッド〟を結構ムダ撃ちしたから、八十八やそはち熱手拳! くらいだと思うケド……」


 二帆ふたほさんの言葉に、白魚マッチョの攻撃を華麗にかわしながら、六都美むつみさんが冷静なツッコミをする。


「そんじゃ、先に馬をぬっころしますか!」


 そう言うと、六都美むつみさんは、素早く〝ケイラクヅキ〟のコマンドを入力して、黒馬マッチョの耳をおもいっきりぶん殴った。


 ピキピキィ!!!!

 ディクシ!!!!!


 ……なんだろう? 嫌な予感がする。


 〝コジロー〟が放った〝ケイラクヅキ〟の効果音と、弱点ダメージ音がシンクロする中、俺は、念には念を入れて、魔法ウインドウを開いて、とある魔法をスタンバイしていた。

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