第86話 ダメージゼロの電流。ーGー

二帆ふたほは、すすむさんのことが大好きだから。

 ボクは、二帆ふたほが男の人にこんなにも心を開いているの、初めてみたモン」


 え? どういうこと??


 意味がわからない。サッパリ意味がわからない。

 サッパリ意味がわからない俺は、思ったことをそのまま口にした。


「すみません、六都美むつみさん、ちょっと何言ってるかわかりません」


「さっき、二帆ふたほが言った通りダヨ。

 すすむさんは

 ボクのことも笑わなかったし、二帆ふたほのことも、芸能人のFUTAHOじゃなくて、ありのままの姿を受け止めてくれてるモン。

 三月みつきちゃんや、二帆ふたほ、それから一乃いちのすすむさんに惚れちゃうのも納得ダヨ。

 ボクは争奪レースに完全に出遅れちゃったから勝ち目はゼロなんだヨネ。しかたがないから観戦モードであきらめるヨ」


 え? どういうこと??


 なんで六都美むつみさん、俺が三月みつきに告白されたこと知ってるの!?

 というか、なんか色々と耳を疑うような話がきこえてきた気がするけど……俺が頭をぐるぐるさせていると、


「ふたごのマッチョを発見なのだ!!」

「コラ二帆ふたほ! ボクたちを置いてかないデヨ!!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟が、はるか先へと突っ走っていた。


「ありゃ? このマッチョ動かないのだ」


 俺は、あわてて〝ロンリー〟をあやつって、〝コジロー〟と一緒に〝フーター〟を追いかけながら二帆ふたほさんの視線を映しているモニターを見る。


 そこには、身長2メートルくらいある、馬の頭と、魚の頭をしたボディービルダーみたいなムキムキマッチョな巨大な石像が、身体を横に向け、一方の手首をもう一方の腕で伸ばしながら胸板をこれでもかというくらい強調したポーズで向かい合っていた。(サイドチェストって言うポーズだった気がする)


「よっ! キレてるね!! 胸がデカい! 肩がデカい! もう、全部デカい!!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、マッチョ石像をほめ称えながら、馬のマッチョと魚のマッチョの股間に、かわりばんこに地獄付きをかましている。


 でも、石像は、ちっとも動く気配がない。


 石像は、四方が6メートルくらいで、高さ1メートルくらいの真四角の床の上に飾られてあった。

 その四隅には、マッチョ石像の3倍くらいの高さの石柱が立っている。石柱は、マッチョのいる床の内側に鋭利なトゲトゲがついていて、外側はなめらかな曲線でできていた。


「もー、二帆ふたほ! なんで勝手に先に進むんダヨ!!」


 六都美むつみさんと俺があやつる、〝コジロー〟と〝ロンリー〟は、二帆ふたほさんがやっつけたガーゴイルの破片が転がっている中、マッチョ石像の股間をいじり倒している〝フーター〟の元へ大急ぎで向かう。


 そして、〝コジロー〟が、魚と馬の石像が置かれた床に足を踏み入れた途端、


 カーーーーーーーーーーン!!


 と、おっきな鐘の音が鳴って、


 ムキムキムキムキムキムキムキムキムキィ!!


 魚と馬のマッチョ石像が、石の破片を吹き飛ばしながら実体化した。

 魚のマッチョは真っ白マッチョで、馬のマッチョは真っ黒マッチョだ。


 ふたりのマッチョは、実体化するや否や、いきなり〝フーター〟と〝コジロー〟に襲いかかってきた。

 ふたりは、マッチョの攻撃をすんでのところで回避する。


二帆ふたほさん、六都美むつみさん!」


 俺も〝ロンリー〟をダッシュさせて、素早く戦いに参戦しようとすると、


 バチィ!!


 〝ロンリー〟は、見えない壁? に吹き飛ばされた。

  いや、壁じゃない! よく見たら四隅の石像から電流が走っている!!


 四方と上面に、細かい電流が走って、〝フーター〟と〝コジロー〟そして二匹のマッチョを閉じ込めている状態だ。


 俺は、再び、電流にふれてみる。


 バチィ!!


 やっぱりだ! 電流に吹き飛ばされて中に入れない!!

 俺は、HPゲージを見た。こんな凡ミスで、ダメージを受けたらたまったもんじゃない!!


 でも、俺のHPゲージはMAXのままだった。つまりこの電流ではダメージを受けない。ダメージゼロだ。


 え? どういうこと??


 ひょっとして、ボスの〝ツイン=ホロスコープ〟と戦えるのは、最初にこのエリアに踏みこんだ先着の2名だけってこと?


 てことは、俺、完全に出遅れた??

 俺は、観戦モードであきらめろってこと???

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る