第85話 緊張ゼロなんて大間違い。ーGー

『やっぱすげーな、コジローとフーターは』

『ああ、動きの次元が違いすぎ』


 次々と現れるガーゴイルを、華麗なスキルで撃破する〝コジロー〟と、スキルを一切使わないアドリブ変態プレイの〝フーター〟に観客モードは絶賛のあらしだ。


『でも、てっきり今回は、フーターとロンリーのふたりで戦うと思ったのに、コジローの参入は意外だった』

『ああ、だれがんだろ?』

『やっぱ、ロンリーじゃね』

『ま、ふつーに考えたらそうだよな』


 ん? なんだろう、って、俺は気になったから六都美むつみさんに聞いてみた。


六都美むつみさん。ちょっと気になることあるんですけど」

「ナニナニ? あ! 観客モードの書き込みのコト?」

「はい、ってなんでしょう??」

「ワカンナーイ。ボク、今日は朝から仕事スイッチ入れっぱなしだったしさ。すすむさんは、なんかこころあたりある??」

「いや、俺も全く情報見てないんで……そもそもボス情報も観てないくらいで」


 俺がそういうと、VRゴーグルをかぶって、椅子にかわいく女の子座りをしている六都美むつみさんは、高速にコントローラーでコマンド入力をしながら、同じくVRゴーグルをかぶって、椅子のうえにあぐらをかいて、アドリププレイでコントローラーを操っている二帆ふたほさんと話をはじめた。


「ねえ二帆ふたほ、さっき『ふたごをぬっころ』すって言ってたヨネ!

 観客モードでも観てたのカナ?」

「えっへん! ちょっとだけ観ていたのだ! なんか馬と魚のマスク被った双子のマッチョとたたかっていたのだ!」

「あーなるほど、わかったカモ!! 今回は【柔軟宮じゅうなんきゅう】ダ!」


 ?? じゅうなんきゅう?? なにがなんだかさっぱりわからん。


「す、すみません六都美むつみさん、その【柔軟宮じゅうなんきゅう】ってなんですか?」

すすむさんって、星占いってクワシイ?」

「いえ。まったく。でも、自分が乙女座だってのは知ってます」

「その乙女座が、【柔軟宮じゅうなんきゅう】ダヨ!

 前回の〝ガンコ=ゾディアック〟が【固着宮こちゃくきゅう】モチーフで、今回の〝ツイン=ホロスコープ〟は、【柔軟宮じゅうなんきゅう】モチーフなんだと思ウ」


 ?? 聞けば聞くほどさっぱりわからん。


すすむくんも、今回のボスのシリーズのタイトル知ってるでショ?」

「はい、『太陽の導き』ですよね」

「そ、ガンコ=ゾディアックの『ゾディアック』ってのは、黄道十二星座のコト。

 だから、おうし座と、しし座と、さそり座と、みずがめ座がモチーフになってた。

 これみんな【固着宮こちゃくきゅう】って星座のグループ。性格はめっちゃガンコ! 一度決めたら頭がカチンコチンになるタイプ!」


 俺は、おうし座の一乃いちのさんのことを思い出して、納得していた。


「で、今回は、ふたごのボスだから、多分ふたご座と一緒の【柔軟宮じゅうなんきゅう】グループの、おとめ座と、いて座と、うお座をモチーフにしているんじゃないカナ?」

「な、なるほど……?」

「ふたごのマッチョは、いて座モチーフのケンタウロスで馬マスク。うお座はそのまんま魚マスクだよネ。残りのおとめ座をどうからめるのかワカンナイケド……ひょっとしたら途中でマッチョが美女に変化しちゃっう……トカ!!」

「な、なるほど……!!」


 うん、サッパリ想像がつかない……。

 というか、ガンコ=ゾディアックが星座モチーフのボスなのも今知った。


「ま、今回は様子見ってコトで!

 今の一番の目的は、二帆ふたほのストレス解消だからサ!

 二帆ふたほが本番前に楽しんでくれればそれでイイヨ!」


 確かにそりゃそうだ。今は休憩時間で、あと1時間くらいしたら、一発どりのパルクールだもんな……。

 てか、そんな大仕事の前に、ぶっちゃけM・M・Oメリーメントオンラインを遊べるのがメンタルがすごい!


 俺は、なんとなく六都美むつみさんに聞いてみた。


二帆ふたほさんって、本当にすごいですよね。下着のCMのアクションもすごかったし、二帆ふたほさんって緊張しないんですかね?」


 そしたら、帰ってきた言葉は本当に意外な言葉だった。


「何言ってるの? 二帆ふたほは、めちゃくちゃ緊張しいダヨ!

 特に男の人は本当にニガテ。

 だから緊張しないように、今、すすむさんにM・M・Oメリーメントオンラインを付き合ってもらってるんダヨ」


 俺は意味がわからなかった。さっぱりわからなかった。

 だから思っていることをそのまま聞いた。


「え? どういうことです?」


二帆ふたほは、すすむさんのことが大好きだから。

 ボクは、二帆ふたほが男の人にこんなにも心を開いているの、初めてみたモン」


 え? どういうこと??

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