第84話 登録者数18万人のYouTuber。ーGー

「とんでもない! め、めちゃくちゃ、カワイイです!!」


 俺は、いつものクールな武蔵さんから180度イメージチェンジをした、キュートな武蔵さんに、キュンキュンしながら言った。


「ホント? ホントに……ホント? ボクのこと笑わナイ?」

「もちろんです! プライベートの武蔵さんも、とっても素敵です!」


 笑うわけがない! こんなカワイイ思わず守りたくなっちゃう美少女を笑うなんてとんでもない。


「エヘ! ありがとう!! でもプライベートの時は〝六都美むつみ〟って、名前で呼んで欲しいナ!」

「わかりました! よろしくお願いします。六都美むつみさん」

「エヘヘ、ありがとう! よろしくネ! すすむさん」


 武蔵むさし……いや六都美むつみさんは、ほほを赤らめて、うわ目づかいで俺をじっとみつめている。カワイイ。

 そんな、六都美むつみさんを見ながら、二帆ふたほさんがスタイルの良い胸を張った。


「エッヘン! フーちゃんの思った通りなのだ! スーちゃんは笑わないよ!

 スーちゃんは、人を見た目で判断しない、とってもできた弟くんなのだ!」

「エヘ……そうだね……二帆ふたほの自慢の弟くんだもんね。ゴメンね、すすむさん……」

「と、とんでもない! 全然大丈夫です」


 俺はそう六都美むつみさんに言いながら、心が「チクン!」としていた。

 だって俺は、二帆ふたほさんのことを、パンツをはかない自宅警備員だと、完全に見た目で判断していたんだもの……ごめんなさい二帆ふたほさん。



 そんなわけで、俺は、二帆ふたほさん、そしてリビングにハイスペックノートパソコンを持ってきた六都美むつみさんとM・M・Oメリーメントオンラインを再開した。

 六都美むつみさんがあやつる〝コジロー〟のクラスは、インファイターだ。

 〝コジロー〟は、六都美むつみさんそっくりな小柄でピンクのリボンのツインテールで、ノースリーブで鳳凰ほうおうの刺繍があでやかなクンフー服に、白スパッツとカンフーシューズのいでたちだ。

(北斗星のかけらを14個もくだいた渾身のコーディネートだ)



『お、再開したみたいだぞ』

『コジローが加わったのか!!』

『コジローとロンリーのコンビは初めてじゃね?』

『多分』

M・M・Oメリーメントオンラインきっての理論派プレイヤーの共闘がついに実現か!』

『こいつはすごい!』

『女房を質に入れて見に来た甲斐があったぜ!!』

『その表現、いまはコンプラ的にアウトだろ……』

『へのツッパリはいらんですよ!!』

『言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごいコンプラ違反だ!』



 観客モードの掲示板は〝コジロー〟と〝ロンリー〟の共闘ににぎわっている。


 うれしい! 俺が理論派プレイヤーと認識されてるのがめちゃくちゃ嬉しい。

 〝理論派ロンリー〟なんていい響きだ。

(なにせ今まで〝ぼっチート〟〝効率厨〟とか〝おっぱい大好き〟とか、ろくでもない肩書きだらけだったもの)


すすむさんは、〝戊辰つちのえたつ〟の武器の有効時間が切れちゃったカラ、しばらくは休んでテ。ザコはボクと二帆ふたほでやっつけちゃうカラ!」


 そう言うと、六都美むつみさんあやつる〝コジロー〟は、


『ゥゥゥゥゥーーーワチャアーーーーー!!!!』


 と、奇声を上げる。挑発行為と一定時間移動速度をあげる効果のある〝怪鳥の叫び〟だ。

 挑発された3匹のガーゴイルが、ワラワラと〝コジロー〟に群がっていく。


 VRゴーグルをかぶった六都美むつみさんは、Bluetoothのコントローラーを素早く操ってコマンドを先行入力する。


『ガキィー!』

『ギキィー!』

『グキィー!』


 3匹のガーゴイルがフォークのような槍で次々と〝コジロー〟を突き刺すと、〝コジロー〟はヒラリヒラリと紙一重で槍をかわすと、最後にジャンプしてガーゴイルのフォークの上に「ふわり」と降り立った。


 先行入力の〝合気あいき〟だ!


 そして、槍の上で開脚逆立ちをして、密集したガーゴイルたちに〝旋回蹴り〟をお見舞いする。


『ゲギャー!!』

『ゴギャー!!』

『ザギャー!!』


 ガーゴイルは、〝旋回蹴り〟から放たれたかまいたちで、一網打尽のまっぷたつに引き裂かれた。



『はー、やっぱりすげーな』

『怪鳥の叫びで敵を呼び寄せて、合気で攻撃をかわしてワザと敵を密集させて、旋回蹴りでまとめて撃破!』

『インファイターは、スキルポイントの消費がはげしいからなー、無駄な動きが一切ない!』

『完全に計算ずくだよな』

『で、練乳キャンディーで、スキルポイントの回復と』

『あざとい!』


 〝コジロー〟は、練乳キャンディーをパクリと食べると、舌をペロリンと出しながらウインクをして、あざとカワイくポーズを決めた。

(北斗星のかけら4個で獲得できる特殊モーションだ)


「さすが〝コジロー〟。魅せるプレイは欠かせませんね!」

「エヘヘ、アリガト!」


 六都美むつみさんは、〝コジロー〟にシンクロさせて、ウインクをしながら舌をぺろりんと出す。


 〝コジロー〟は、そのテクニックと確かな理論に加えて『かわいらしいプレイ』に徹底的にこだわることで有名なM・M・Oメリーメントオンラインの大人気プレイヤーだ。

 そしてそのプレイ動画に、確かな攻略情報をめちゃカワボイスでお伝えする〝巌流島チャンネル〟が、登録者18万人を超える大人気のYouTuberなんだ。


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