第83話 180度のイメージチェンジ。

「それじゃ! ふたごをぬっころすのだ!」


 俺は、VRゴーグルをかぶった二帆ふたほさんと一緒に、M・M・Oメリーメントオンラインログインした。

 すると、武蔵むさしさんは、ハイスペックなノートパソコンを持って席をたった。


すすむさん、打ち合わせがあるので席をはずします。となりのコネクティングルームにいますので」

「わかりました」

「あとすみません、戦闘映像を録画しておいてくれませんか? あとで使ので」

「え……? まあ、構いませんけど」

「あと、これからおこなう打ち合わせは、とっても大事な打ち合わせなので、部屋には!」

「え……? あ、はい」


 俺は首をひねりながら、映像のRECボタンを押す。

 武蔵むさしさんは、それをしっかり確認すると、いそいそとコネクティングルームに入って「バタン!」とドアを閉めた。


 なんだろう? でもとっても大事な打ち合わせって言ってたし、さすがに邪魔するわけにはいかない。

 俺はべつだん気にすることなく、M・M・Oメリーメントオンラインに集中することにした。


 今日は、〝ツイン=ホロスコープ〟に挑戦だ。

 実装されたばかりだし、全く事前情報はないけど、まあ、やるしかない。


 俺が使用するクラスは、いつものように全身黒づくめの陰陽導師。

 二帆ふたほさんは、〝シノビスナイパー〟を選んでいた。確かに、ツイン=ホロスコープ〟のステージは身を隠すところが多そうだから向いているかもしれない。

 ちなみに今回も、コスチュームは二帆ふたほさんいわく理力フォースを感じるあざとカワイイ和洋折衷コーデドレスの境界術師のコスプレだ。(紫色にカラーカスタム済み)


 道中のステージは、古い西洋の街並みだった。ギリシャにあるパルテノン神殿だったっけ? あんな感じの神殿や、ローマにあるコロッセオみたいな石造の建物が立ち並んでいる。

 でも、どの建物もかなり朽ち果てていて、廃墟って感じの街並みだ。


 その廃墟に飾られている銅像がいきなり動き始めた。ガーゴイルだ。


 俺のあやつる〝ロンリー〟は、いつものように〝戊辰つちのえたつ〟の魔法で剣を召喚してガーゴイルを迎え撃つ。

 そして二帆ふたほさんあやつるシノビスナイパーの〝フーター〟は、スナイパーのセオリーをガン無視して、装備した爪でガーゴイルにゼロ距離接近をしてボコボコと殴り倒していく。


 そんなセオリーガン無視の〝フーター〟のプレイ目当てに、観客モードには今日もたくさんのユーザーがあつまっていて、書き込みがあふれていた。



『お、さっそくやってるw』

『ゼロ距離スナイパーw』

『そんな戦闘スタイルで大丈夫か?』

『大丈夫だ問題ない!』

『今日はフーターとロンリーだけなんだ』

『ふたりだけで大丈夫か?』

『大丈夫だ問題ない!』

『きっとロンリーの作戦なんだろうよ』



 いやいや、全然、まったく、なーんも考えてません。

 二帆ふたほさんの超絶変態プレイだよりです。


 俺が、観客モードの書き込みをチラ見しながた、召喚した剣でガーゴイルをボコボコと殴っていると。


 ピコリン!


 と、メールアイコンにバッチがついた。俺は素早くメールアイコンをクリックする。

 メール内容は、フレンド申請だった。相手は……〝コジロー〟。


「えええ!」


 俺は思わず声をだした!


二帆ふたほさん、コジローからフレンド申請が来ました!」


「? にゃんで??」

「なんでって、共闘目的だと思います」

「そーなのかー? でもいまムーちゃん仕事中じゃなかったっけ?」

「?? 武蔵むさしさんの仕事が、なんで関係あるんですか??」


 二帆ふたほさんは、VRゴーグルを外すと、武蔵むさしさんが打ち合わせに使っているコネクティングルームへとスタスタと向かって行って、おもむろにドアを開けた。


「ちょ、二帆ふたほさん!?」


 俺が慌てて止めに入ると、そこには、VRゴーグルをかぶってM・M・Oメリーメントオンラインを遊んでいる武蔵むさしさんがいた。

 しかもいつものグレーのストライプのスーツ姿じゃなくて、めっちゃカワイイピンクボーダーのもこもこのルームウエアで、髪型もめっちゃカワイイツインテールにしている。ごていねいにピンクのおっきなリボンもつけている。


 普段のクールな武蔵むさしさんからはとても想像つかない、めっちゃキュートな姿だった。


「わー、二帆ふたほ! なんで勝手に開けるんダヨ!」

「ムーちゃん、なんで今日は一緒の部屋で遊ばないのだ?」


 え? どういうこと?


「ムーちゃんは、〝コジロー〟なのだ。仕事で時間が空いた時は、いつもムーちゃんといっしょに遊んでいるのだ!」

「え!? えぇええぇぇーーー!?」


 驚いた! まさか武蔵むさしさんが〝コジロー〟??

 あの『巌流島チャンネル』の〝コジロー〟??

 俺が尊敬してやまない、M・M・Oメリーメントオンラインの理論派トッププレイヤーの〝コジロー〟なの??


 VRゴーグルを外した武蔵むさしさんは、顔を真っ赤にして、消えいるような声でつぶやいた。


「だってボク……ゲームを遊ぶ時は……完全に仕事のスイッチをOFFにしないとできないんだモン。

 ボク……ずっとすすむさんといっしょに……M・M・Oメリーメントオンラインを遊びたかったんだ……でも……ボク……こんな姿を……すすむさんに見られるの……恥ずかしいモン」


 武蔵むさしさんは、うるんだ瞳で俺を見た。


すすむさん……こんなボク……かっこ悪いよね……」


 俺は、ついつい思ったことを口にしてしまった。


「とんでもない! め、めちゃくちゃ、カワイイです!!」

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