第80話 ムダ毛ゼロのツルンツルン。

「アーちゃん、打ち合わせが終わったら、フーちゃんと一緒にM・M・Oメリーメントオンラインを遊ぶのだ!!」


 二帆ふたほさんは、声をはずませて、田戸蔵たどくらさんを見ている。


「え? FUTAHO……さん!? ほ、本物だ……!?」


 田戸蔵たどくらさんは、さっきまでの落ち着き払った雰囲気からは信じられないくらいソワソワしている。渋くてダンディな声も、うわずってしまって台無しだ。


「えっへん、そう、フーちゃんはFUTAHOなのだ!!

 下着モデルをしてるよ!」


 得意げにスタイルの良い胸をはる二帆ふたほさんに、田戸蔵たどくらさんは明らかに動揺しているみたいだった。


「な、なんだかイメージがちがうような……」

「これがいつものフーちゃんですよー?」


 一乃いちのさんが田戸蔵たどくらさんにニコニコと説明する。


 うん。よくよく考えたらこれが普通のリアクションだ。

 日本の誰でもしっているスタイリッシュでかっこいいスーパーモデルのFUTAHOは、武蔵むさしさんの催眠術による暗示で演じている仮の姿なんだもの。


「フーちゃん、マタドール使いはそんけーするのだ。覚えることめっちゃ多いのに、自由に使いこなせてスゴいのだ。だからアーちゃんも尊敬しているよ?」

「あ、ありがとうございます……」


 田戸蔵たどくらさんは、さっきからタジタジだ。

 緊張で喉がかわいたのか、もうすっかり生温くなってしまったホットコーヒをゴクゴクと飲んでいる。


 無理もない、だるんだるんのパーカーを一枚はおっただけのスーパーモデルが、生脚むきだしで目の前にいるんだもの。


 ん? 生脚むきだし?? 


「やっぱりマタドールは、かっこいいのだ! こう、手を高く上げて……」


 二帆ふたほさんは、両手を高々と上げる。そして、その手にひっぱられるように、だるんだるんのパーカーはずりずりとずり上がっていく。そして、


 パンパン!

「オーレイ!」


 一階の一乃いちのさんの部屋、兼、仕事部屋のノートPCで、リビングの様子を見ている俺は、二帆ふたほさんの手拍子に合わせて、〝令和のヴィーナス〟のスベスベなおしりを目撃した。


 でもって田戸蔵たどくらさんは、仕事で下着姿になることが多いから、常に高級サロンでムダ毛対策がバッチリのここには書いてはよろしくない、二帆ふたほさんのツルンツルンの〝パ◯パン〟を、「オーレイ!」と真正面から目撃したはずだ。


「ブッ!!」


 田戸蔵たどくらさんは、慌てて飲んでいたコーヒーをしたたか吹き出して、仕立ての良さそうなジャケットをビジャビジャにしている。

(でもなぜか全然可哀想に見えない。むしろうらやましい)


「フーちゃん!!」

「ありゃ? しっぱいしっぱい!」


 一乃いちのさんは、珍しく声を荒げたけど、二帆ふたほさんはのん気に舌をてへぺろと出している。


田戸蔵たどくらさん、ちょっと失礼しますね!!」


 一乃いちのさんは、動揺で大きく顔を背けてしまっている田戸蔵たどくらさんに声をかけると、大慌てで二帆ふたほさんの手をむんずとつかんで3階へとつれていった。


 戻ってきた二帆ふたほさんは、体のラインがはっきりと出ている、とってもセクシーだけどとっても安全な服を着て2階に戻ってきた。


「あ、あの田戸蔵たどくらさん、ふだんのフーちゃんのことは、くれぐれも内密に……」


 一乃いちのさんが、田戸蔵たどくらさんに両手をあわせて頼み込むと、


「も、もちろんです。肝に銘じておきます!!」


 田戸蔵たどくらさんは、ダンディとはほど遠いテンパりまくった声で、何度も何度もうなずいた。



 そのあと、俺たちは、二帆ふたほさんの部屋でM・M・Oメリーメントオンラインを遊んだ。


 M・M・Oメリーメントオンラインは最大4人パーティーだから、俺は見学だ。

 

 〝フーター〟は、変態的なプレイで観客モードのギャラリーを魅了する。

 そしてその〝フーター〟と息ピッタリのコンビプレイを見せる〝よろず〟と、超絶パズルテクニックの無課金術師〝マーチ〟もギャラリーを大いにわかせていた。


 そんななか、〝流しのアルコ〟こと〝アルコダット〟だけは、普段の腕前からは、ちょっと考えられないようなミスを連発して、ギャラリーからは『アルコダットを語るニセモノ』と不名誉なラベリングをはられていた。

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