第64話 何をやってもダメージ「0」。ーGー

 無課金術士の境界術師〝マーチ〟と、コスプレをしたエリアルハンター〝フーター〟、そして、効率厨の陰陽導師〝ロンリー〟は、ボスエリアにたどり着いた。

 そこには、小高い砂山があって、そのてっぺんには、豪華な装飾の施された〝水瓶〟が置かれているだけたっだ。


『でた! ガンコ=ゾディアック』

『なにこれ?』

『ガンコ=ゾディアックって、ヤドカリじゃないの?』

『まさかのツボ』

『どうやって攻撃してくるんだ?』

『みてりゃわかる』

『絶対驚くはずw』

『ドツボになることウケアイ』

『ツボだけにw』

『うまい!』

『ツボったw』

『これまたうまい。ツボだけにw』


 俺は、観客モードのコメントを見た。

 どうやら、すでに対戦済みのプレイヤーもいるらしい。なんだか含みのある書き込みがある。


二帆ふたほさん、三月みつき、とりあえず様子見からはじめよう!」


 俺は、武器召喚の魔法を唱えた。

戊申つちのえさる〟。 

 孫悟空の如意棒にょいぼうをモデルにした、伸縮自在の棍だ。


 俺は、操作を照準モードに切り替えると、棍を水瓶に目掛けて射出する。


 カキン!

「えっ!?」

 

 水瓶には、むなしく数字の「0」がピョコンと表示された。

 棍は水瓶に思いっきり弾かれると、伸縮方向を真上に変えて伸び続けていく。

 俺は慌ててコントローラーのボタンを離して、棍を縮小させた。


「ダメージが通らない……めちゃくちゃ守備力が高いのか……」

「だったら正々堂々、ぬっころすのだ!」


 二帆ふたほさんあやつる〝フーター〟は、砂山をサクサクとのぼると水瓶を飛び越えるようにジャンプした。

 そして、水瓶の真上でワイヤーガンを射出する。


 カキン!

「ありゃりゃ?」


 水瓶から、赤い甲殻類のハサミが出てきて、ワイヤーガンをはらいのけた。

 そして水瓶の上に数字の「0」がピョコンと表示される。


「上がダメなら下から攻めるのだ!」


 〝フーター〟は、砂漠に着地すると、水瓶に向かって走った。

 そしてギリギリまで近づくと、〝ニトロの瓶〟を設置してすばやくバッグステップで距離をとってから、すぐさまワイヤーガンを〝ニトロの瓶〟目掛けて射出した。


「ポチッとな!」

 ボッガーン!!


 ものすごい爆風のなか、水瓶はグラグラと大きく激しく揺れて、瓶の中の紫色の液体を撒き散らした。

 紫色の液体は、空中コンボを狙ってジャンプしていた〝フーター〟の体をかすめる。


「ありゃりゃ? ふっ飛ばにゃい??」


 VRゴーグルをかぶった二帆ふたほさんが首をかしげる。

 俺も、二帆ふたほさんと一緒に首を傾げた。

 水瓶に、数字の「0」がピョコンと表示されたからだ。

 代わりに、〝フーター〟の上に、紫色の数字の「100」がピョコンと表示される。毒のダメージだ。


「〝ニトロの瓶〟の直撃をくらってノーダメって、どんだけ固いんだよ!!」

「まかせて!」


 叫んだのは三月みつきだった。画面端には、6マス×6マスの難易度〝ちょうむずかしい〟の〝16パズル〟が表示されていて、そのパズルはすでに完成する寸前だった。


「できた!!」


 三月みつきが叫ぶと、〝マーチ〟の前に、とんでもなくでっかい障子しょうじが現れる。そして障子しょうじは、左右に「すらり」と開くと、


『ぶひひひーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!』


 山脈のようなイノシシのモンスターが水瓶目掛けて突進していく。

 いのししの最大進化|干支モンスター、ハシラビノガシラだ。


『ぶひひひーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!』


 ハシラビノガシラは、そのまま突進していくと、水瓶に強烈な頭突き攻撃をおみまいした。でも……


 ガッキーーーン!


 水瓶は、ハシラビノガシラの頭突きを受けて激しくグラグラと揺れる。

 でも、水瓶のうえには、数字の「0」がピョコンとむなしく表示されていた。


 そして、ハシラビノガシラは、水瓶から大量にあふれでた紫色の毒の液体をぶっかけられて、「ほわほわ」とあったかそうな光を放ちながら消滅していった。

 

「ウソでしょ!!」

「マジかよ! 最大進化の干支モンスターのダメージも通らないのかよ!」

「……ゴメンネ弱クッテ」


 三月みつきと、俺、そして二帆ふたほさんは、三者三様におどろいた。


 なにこれ? 硬いにもほどがある。

 こんなガンコにカチンコチンのモンスター、一体どうやって倒せばいいんだ?? 

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