第40話 ゼロ距離おねーさんの被害ゼロ宣言。ーGー

 エリアルハンターの〝フーター〟を先頭に、セレブレッドに乗った境界術士の〝マーチ〟と陰陽術師の〝ロンリー〟、そして、バリケーターの〝よろず〟が、ドリルドリュウの待ち構える洞窟をめざしていく。


『ガルルルルルゥ!』


 4人のゆくてに、ザコモンスターのオオカミの群れがあらわれた。


「ザコはー、それぞれが自由に倒す感じでいいー?」

「はい」

「りょーかいのすけ!」


 一乃いちのさんの質問に、俺と二帆ふたほさんが返事をする。そして三月みつきは、


「え? なに? なに??」


 って、周囲をキョロキョロ見回している。

 俺は、ウインドウから〝戊辰かのえたつ〟を選んで、魔法の剣を召喚しながら、三月みつきに指示をだした。


三月みつきはそのまま待機で。さっきと一緒で、ボス戦で干支えとモンスターをお願いするから」

「わかった」


 俺と二帆ふたほさんは、Bluetoothのコントローラーを操作する。すると〝フーター〟は華麗な剣さばきで、〝ロンリー〟は、おぼつかない剣さばきで、オオカミにきりかかる。


 一方の一乃いちのさんは、タッチペンで、ゲーム画面の映ったタブレットを、すばやく「トン、トン、トン」とタップする。すると、ゲーム画面に映った〝よろず〟は、オオカミの集団にむかって杖をふった。


 ぽんっ! ぽんっ! ぽんっ!

 

 たちまちオオカミの頭上に、四角いブロックが現れて、


 ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!


 そのままオオカミたちの頭に落っこちた。


「ギャウウウウ!」

「ギャウウウウ!」

「ギャウウウウ!」


 急所の眉間を強打したオオカミたちは、あっけなくその場に倒れた。


 バリケーターは、空中に50センチの立方体のプロックを召喚することができるクラスだ。そしてそのブロックを敵にぶつけてやっつける。

 そう、バリケーターは、世にも珍しいでダメージをあたえる魔法職だ。


 バリケーターは、3メートルから30メートルまでサイズを自在に替えられる〝魔法リング〟を操ってブロックを召喚する。リングが触れている場所に、ブロックを召喚するんだ。

 ブロックが空中に召喚された場合は、重力で下に落っこちて物理ダメージを与える事ができる。

 一応、普通のコントローラーでも操作はできるけど、リングを拡大縮小させたり、角度調整をしたりの操作がかなりメンドウだった。

 だからバリケーター使いは、ほとんどタブレットを使う。タブレットなら、リングの拡大縮小と角度調節を、指を使ったピンチとフリック操作で行える。そして照準が定まったところで、ペンデバイスでクリックすれば、ブロックを召喚できる。

 魔法の操作を完全に右手だけで行う事ができた。


 俺たちは難なくオオカミたちをけちらして、ドリルドリュウの住処すみかへと到着した。


『ギギギーギギギー!』


 地震とともに、地面からドリルドリュウの頭と手が「ボコリ」と飛び出す。

 まだ茶色の、まだ上半身しか出していない発狂前状態だ。


「出たな! モグラ! 今回は被害ゼロでぬっころすのだ!!」


 二帆ふたほさんは、そう叫ぶと、ドリルドリュウに向かってジャンプした。

 そして、ワイヤーガンをドリルドリュウのに射出する。すると、


 ぽんっ!


 突然ブロックが現れた。


 〝フーター〟ワイヤーガンはブロックにブスリと突き刺さるのを確認すると、ワイヤーを巻き取って高速移動をする。そしてブロックが落ちる直前にワイヤーを外して今度はドリルドリュウの目に突き刺すと、そのまま超高速落下をして連続斬撃をおみまいする。


『でた! フーターとよろずの神業コンビプレイ!!』

『いつみても芸術的だよな……』

『イキぴったり』

『ほんとヤバいよな。エリアルハンターの機動力がバカみたいに増加する』

『あーあ、これじゃ、モグラがかわいそうだよ』


 弱点の目に高速斬撃をお見舞いされたドリルドリュウは、目に張り付いた〝フーター〟をはらい除けようとする。でも、


 ぽん!


 〝フーター〟の頭上にブロックが現れて、そこにワイヤーを刺した〝フーター〟は、素早く上空に非難する。

 そして、ドリルドリュウの攻撃が空ぶったら、すぐさま目にワイヤーを刺しての高速斬撃。


 ……強すぎる。強力なんてもんじゃない。でも、難易度S級の超難度のコンビプレイだ。

 こんな激ムズのコンビプレイなのに、二帆ふたほさんと一乃いちのさんは難なくこなしている。失敗する気配は全く感じられない。ゼロパーセントだ。


 俺は、M・M・Oメリーメントオンラインのトッププレイヤーの超絶スキルを目の当たりにして言葉を失っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る