第22話 ゼロ距離おねーさんは、はいてないけど頼もしい。
俺はまんまるな月を見て、
ガシャん!
どスケベなあほヅラで空を見ながら自転車をこいでいた俺は、電信柱に正面からぶつかった。
慣性の法則に従って前につんのめった俺は、ハンドルでしたたかみぞおちをうちつける。
「……ぐふっ!」
俺はアホみたいな声をあげて、その場に崩れ落ちた。呼吸ができないからだ。
みぞおちはヤバい。本当にヤバい。俺は知ってるんだ。だって、学園祭のときに
うん、これはバチだ。バチが当たったんだ。
学年一の美少女のパンモロを、無自覚美少女のパンモロを、特等席でガン見してしまったバチが当たったんだ。
俺は、みぞおちをさすりながら、自転車を押して家路へと着いた。
「ただいま……」
俺は元気なく声をあげる。すると、トントンとリズムカルな音を立てて、階段をおりる音が聞こえてくる。
「スーちゃん! おっかえりー!」
階段から降りてくる
スラリとした生足がふとももまでむきだしになっているけど、下に「はいている」かどうかはわからない。
「……
「安心してください。はいてませんよ!!」
「……ぐふっ!」
俺はびっくりした。ビックリしすぎて声を上げようとしたら、みぞおちが痛んでまるでうめき声のようになった。
「にゃははは! お風呂あがりであっついのだ。サービスサービス! お得なゲリラミッションなのだ!」
「ちょ……やめてください……本当にやめてください……」
俺は、ミゾオチを押さえて息も絶え絶えに答えた。
しかたがない。はいてないなら見てしまう。
しかたない。俺は男なのだ。非モテなぼっちな男の子なのだ。
しかたない。ああしかたない。しかたない。
「ん? どーしたのだ、お腹を押さえて?」
俺が想像していたのと違うリアクションをしたからか、
「い、いや帰り道にちょっとよそ見をしていたら、電信柱にぶつかっちゃって……」
「そーなのかー。今日は月が綺麗だからねぇ」
「でもまあ、そんなことはどうでもいいとして……ほわちゃー!」
「なるほど。外傷はないみたいだけど……これ、放っておくと内出血ルートだね。ちょっとこっちにくるのだ」
そう言って
俺も後に続く。ベンチプレスやエアロバイク、そのほかにもトレーニングマシンが整然と並んでいる。
「内出血を抑えたいのだ。服を脱いで、寝っ転がるのだ」
「わかりました」
俺は、言われるがまま、Tシャツを脱いでヨガマットに横になった。
「冷たいけど、ガマンするのだ!」
「う……うひゃひゃひゃひゃ!!」
冷却スプレーを噴射した
「こうやって圧迫しておけば、多少は内出血を抑えることができる」
「詳しいですね」
「パパの受け売りなのだ。あと、患部が心臓より下になると、血が溜まりやすくなるから……」
そう言うと、
「このまま、しばらく安静にしとくといい。足はベンチプレスに乗っけてちょ」
「ありがとうございます」
俺は、その体制のまま、
「そーいえば、昨日のメンテで何が変わったんだい? ミーちゃんの使っていた境界術師と、
「運営のお知らせを読んでないんですか?」
「読んだけど、やたら長くて眠たくなってきたので読むのやめだのだ!」
そう言うと、
「……まあ、
「どーゆーことなのだ?」
「毒のダメージに〝上限〟がかかりました。最大HPの33パーセントまでしかダメージを与えることができません」
「そーなのかー。じゃあ、もうトリプルオーバーキルはできないねぇ」
「はい。あと、昨日、俺が使ったアイテムがあるじゃないですか。〝
あれに所持上限ができたんです。ひとり一個までって制限が」
「??……なるほど??」
「〝毒ハメ〟に制限がかかったってことです。あのままだと、陰陽導師の毒ダメージを上昇させる、〝
「あー、あのおもちゃのヘビ。確かに観戦モードで観ていたらみんな大量に出してたのだ」
「はい。ちょっとぶっ壊れの性能だったんで、しょうがないと思います」
そう言うと、
「そーなのだ。あれじゃモンスターが可哀想なのだ!」
「あと、今騒がれてるのが、オーバーキルボーナスの入手条件に制限がついたことですね。パーティーに重複クラスがいると、入手できなくなるそうです。この対応に、結構界隈がざわついている感じです」
「ふーん。でも、フーちゃんは、陰陽導師とインファイターは難しすぎるから使わないのだ! スーちゃんとクラスが被ることはない!」
「はい。幸い俺たちにはほとんど影響がない変更だったと思います……まあ、〝リトルヨウコ〟のトリプルオーバーキルは、ロールバックがかかって無かったことになっちゃいましたけど」
「大丈夫だ。問題ない! またぬっころせばよいのだ!!」
俺は、
そして痛みがひくと、食事とお風呂を済まして、〝
昨日と全くおんなじ戦法だったけど、今日は〝
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます