第14話 ゼロパーセントな信長の野望。
「はーい。では出席をとりますー」
バインダーを持った
「
「はい」
「今日もよく登校できましたー。えらいえらい」
今日も、保健室で
「そして、今日は特別大サービスですー。先生を〝お姉ちゃん〟と呼んでくれたら、いいこ、いいこ。のサービスがありまーす」
「ちょ! やめてください!!」
「えー、いいこ、いいこ。でも〝お姉ちゃん〟ってよんでくれないのー?」
「ダメですよ! てか、学校だったらなおのことダメですよ!
「はーい」
俺は、今日もパラダイスな保健室登校を満喫していた。
キーンコーンカーンコーン
昼休みのチャイムが鳴る。
癒しの空間では、時間がすぎるのもあっという間だ。
ちなみに
俺は
「あ、スーちゃん、わたし、今から職員室に用事があるから、お昼は、先に食べていてー」
「わかりました。
〝スーちゃん〟と呼ばれた俺は、うっかり
ガラリ
と、保健室のドアが勢いよく開いた。
「
「ごめーん、
「わかりました」
「はい『信長のおねーさん』の最新刊。読むでしょ?」
「あ、うん」
俺は、勤めてそっけない返事をした。本当は読みたくて読みたくて仕方がなかった待望の新刊だ。でも、少女漫画を楽しみにしているなんて言ったらちょっと恥ずかしいから、俺は勤めてそっけなく返事をした。
俺は、手早く、でもありがたく母さんが作った弁当を食べると『信長のおねーさん』の最新刊を読み始めた。
俺は、そんな
『信長のおねーさん』は、織田信長の幼少期が舞台で、信長の乳母の娘との恋愛模様を描いたラブコメだ。
主人公の〝
やがて〝うつけもの〟となった信長は、あの手この手でやえさんにアプローチを試みるも、やえさんは「信長様かわいい♪」なーんて言いながら、大人の余裕で華麗にスルーする。
俺は、早く立派な戦国武将になって、やえさんを振り向かせてみせる! と、ヤキモキする信長に、とにかく感情移入をしていた。とくに二学期になってから、つまり、今月に入ってから、やばいくらいの感情移入をしていた。
なぜって?
それは、ヒロインのやえさんが、
めちゃくちゃ美人で、ほわほわとしたちょっと天然ちっくな癒し系で、そして、やわらかそうな髪の毛をしばって、前にたらした髪型が、
でも、俺は知っている。この物語の結末を知っている。
信長とやえさんは、決して結ばれることはない。
なぜって?
それはやえさんが、架空の人物だからだ。
織田信長が、
(
でも、
『信長のおねーさん』のやえさんと一緒だ。やえさんも、その身分のちがいから、信長の求婚をかたくなに拒んでいる。信長のことが大好きなのに、かたくなに拒んでいる。
現代だってそうだ。つれ子どうしが結婚なんてしようものなら、ご近所さんになんて言われるか……。
そう、当人どうしが両思いでも、姉弟のように近すぎる関係では、世間の目の好奇にさらされる。
だから俺は、一刻も早く一人暮らしがしたかった。どこか遠くの場所に住んで、そこで
ただでさえ、この無理ゲーな野望が、とんでもない低い成功確率が、俺が、
そうなってしまうと、俺はもうゲームオーバーだ。俺が
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