第3話 ゼロ距離なプレイスタイル。ーGー
コンコン!
俺は風呂から上がって、
「はいはい〜開いてマッスル」
ドアの向こうから、おとぼけた声が聞こえてくる。
ガチャリ
俺がドアを開けると、そこは、白を基調にした、いかにも女の子な部屋だった。そしてそんな部屋の中に、ちょっとだけミスマッチなデスクトップパソコンが複数置かれた机があって、その机の前で、ゲーミングチェアに座っている
(ノーブラなのかな……ドキドキ)
「もう起動しちゃってるから、アカウント入れてログインしなよ」
(目のやり場にこまるよ)
俺はパーカーの奥にかくれた、その薄暗い生足の付け根をチラチラと見ながら、となりにもう一脚あるゲーミングチェアに座って、
「そんじゃ、〝フーター〟を検索してちょーだい。でもって、フレンドに申請しといて。今、文字どおり手が離せないんで」
「え、〝フーター〟ですか?」
「そ、フーちゃんは、
びっくりした。〝フーター〟は、
そして、〝フーター〟を観客モードで観戦することにした。
「な、なんじゃこりゃ!」
そして観客モードにはすでに数百人のユーザーが集まっていて、コメントが滝のように流れている。
『なにあれ!?』
『ボス、空中に浮きっぱなしw』
『そして密着してからの連続攻撃ww』
『ゼロ距離ラッシュ!』
『えぐw』
『人間技じゃ無い!』
『密着変態プレイw』
『あーこれまた、エリアルハンターにナーフ入るよ……』
『ワイヤーアクションがもう変態の域なんだよな……』
『それな!』
エリアルハンターは、ワイヤーガンを使った高速移動と、多彩な空中技が特徴的なクラスだ。
特に密着状態からの高速斬撃がえぐい。ほんの少しだけど浮かせ効果のあるその斬撃の後に、地面にワイヤーガンを指して高速着地。そして再び敵にワイヤーガンを刺して密着するまで近づいてからのゼロ距離高速斬撃。
これが理論上無限に入る。もちろん、そのためにはとんでもなく正確な入力操作が必要で、敵に応じて異なる重さや弱点を計算して、絶妙に技を決めるタイミングを調整する必要がある。
その神業を、
ただ、弱点も多い。機動性のために耐久力を犠牲にしている。装備はレザーメイルまでがせいぜいだ。そして……
「ありゃりゃ……」
VRゴーグルをかぶった
〝フーター〟は、ハリネズミが飛ばしてきた針の乱れ打ちに被弾した。そして、体力ゲージを七割持っていかれていた。
『おっと!』
『かすった!』
『カスって点滅! さすがカス装甲!!』
掲示板のコメントが華やぐ。
エリアルハンターのマイナス特性、ワイヤー移動中の「被クリティカル率100%」だ。
ワイヤー移動中にダメージを受けると、その攻撃はかならずクリティカル判定になる。だから、エリアルハンターは単発攻撃にめちゃくちゃ弱い。
飛び道具だからよかったものの、打撃だったら一発アウトだ。
そして、多分これ、発狂モードだ。このままじゃ不味い。ハリネズミに少しでもスキを与えたら、無限に針を連射されて詰みだ!
「
俺が叫ぶと、となりでゴーグルをかぶった
「スーちゃん召喚!! ポチッとな!」
たちまち俺の操る
『なんだ? 救援か??』
『
『ぼっち導師w つかってるやついんのかw』
『ん? なんだこいつ』
『なにつっ立ってんだ……』
『動かないで、ハリネズミの針がめっちゃ刺さってるw』
『フリーズw』
『固まりました……御愁傷様w』
そう、俺は固まっていた。カチンコチンにかたまっていた。
なぜなら、両足を机の上に置いている
スラリと伸びた足の付け根には、本来あってしかるべきモノがなかったからだ。部屋着はおろか、パンツすらはいていなかったからだ。
俺は、そのはいていない安心できない箇所をバッチリとガン見してしまい、カチンコちんに固まっていた。
俺の操る、顔の前に黒い布切れを垂らした黒ずくめの
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