第2話 要塞都市②
二日ほどトクトの世話になった。さすがにあの場から動けるほど体力がなかった。あの激戦の中、よく生きてこれたなと我ながら不思議に思う。
結局、あの宝石類は奪われてしまった。せっかく師匠の手がかりになるものが見つけたと思ったのだが、しかし…何者なのだろうか。あの口ぶりからして俺と同じように別の世界から来たようだ。ただ、目的はさっぱりだ。
クソ、情報がなさすぎる。せっかくの手がかりが消えた今、何を目印にしてどこへ行けばいいのだろうか。それすらも分からない。
ダメだ、考えば考えるほど頭がパンクしそうだ。
俺は頭を振ってその思考を放逐した。今はもう休もう。明日からはもっとしっかり情報を手に入れよう。そのためにも早く回復させなければな……。
**
「なるほど…」
腕を組み難しそうな顔をしているトクトがいた。テーブルを挟んで目の前にはレイとチノルがいた。
「…君らは防護服さえも身に着けていない男女らと戦ったんだな。その様子はカギトと一緒に見ていたよ。あれが別世界からの来訪者……なんというおぞましい戦いぶりだ。それで主人公は無事なんですか?」
レイは小さく頭を縦に振った。
「ええ、外傷はほぼなく。精神的にも肉体的にも問題はないでしょう。ただ…」
「ただ…?」
「あまりにも未熟すぎます。一緒にいて呆れるほど弱いです。あれが師匠が選んだ弟子だというんですから、恥ずかしくって公けにはしたくないほどです」
「彼に対して結構厳しい評価だな…」
「反論はないニャ」
猫が喋っても不思議じゃない様子。この世界の情報はある程度仕入れていたつもりだったけどまだ全然だ。
それにしても、やはりあの主人公はかなり弱くて有名なようだ。確かに魔法を使う姿を見たわけでもなくずっと離れたところで立ち尽くしていた。まぁ人それぞれの価値観があるだろうからこれ以上は何も言わないことにした。
「それで、東の町に行きたいと?」
「できれば明日明後日にでも」
「……わかりました。許可書を申請しておきましょう」
トクトは申請書を持ってきてサインをしてレイに渡した。
「これがあれば、入れてくれるでしょう」
「ありがとうございます」
「…ですが、気を付けてください。いま、東の町はとても危険なところです。昨日、仲間から連絡があったんです」
トクトに話してもいいかと聞いてから、カギトはゆっくりと話し始めた。
「仲間からのメッセージです。本来なら音声で聞かせてあげたいですが、精密な機械が故障しているので口頭で話させてもらいますね」
『SOS! SOS!』
「なにがあった!?」
『地下から化け物が突然出てきた! 男らは全滅。女子供らは辛うじて脱出したが、食料があとわずかしかない。他の町に入れてもらえるかと相談したが、受け入れてもらえず…』
「化け物……?」
レイは首を傾げた。
「話しを続けるぞ。トクトと相談してこの町に入れてやろうとしたんだ。町の住民たちは断固反対した。八割の人間が反対したんだ。入れてやれるほど住居と食料、物資はないと…だから俺達はこっそりと受け入れる準備をしていた。ところが、最後の音声を最後に途切れてしまった…」
「なんといっていたかニャ?」
『奴は化け物じゃない! あれは…あれは…人間だ。だが、違う。あれは、この世界の人じゃない!』
つまり、別の世界から来た来訪者だという。
「俺達は真っ先に主人公たちに警戒しました。しかし、あの戦い方からしてそれはないと確信しました。もちろん、あの二人もそうです」
「距離的には…」
「あの二人には発信機を仕込んでいましたが、あなたたちと戦った後、発信が消えてしまいました」
「俺が調べるに二人は別の世界に渡った可能性がある。次元の歪みがあったからな」
「歪み?」
「これ以上の質問はなしだ。それで許可する代わりにその怪物を倒してもらいたい。もちろん、報酬は東の町の物資全部をくれてやる。あそこに住んでいた奴らはおそらく……もう使わないはずだ」
「分かりました。その申し出、受けさせてもらいます。それでは早速明日の準備をするために主人公を起こしてきます」
「それ、俺がやるニャ」
チノルはレイに任せるとマズイと思ったのか自ら志願して、レイの返事を待たずに部屋から出ていった。
***
翌朝、三人は東の町に到着した。太陽が昇る前に出発したのだが、到着時には日が沈みかけていた。思ったほど距離はあった。レイの移動が楽になる魔法をかけてもらい50キロ走行で走ってきたのだが、双眼鏡で見るよりも遠くにあった。
道中で、町から逃げて来たであろう住民の死体が転がっているのがあった。外傷はひとつも見つからなかった。みんな白目で倒れていた。何があったのかさっぱりだ。彼らは俺達と同じ来訪者に殺されたとカギトは話していた。
「酷いニャ」
「誰がこんなことを…」
「行ってみなければ分からないことだらけですね。チノル、主人公。常に戦闘態勢で。なにに攻撃されたのか分からない以上、迂闊に行動はできない。最低限、主人公はお守りしますが…万が一私たちが倒れたときは全力で逃げてください」
俺はうなずくことしかできなかった。
レイは先頭に立ち、町の中へ足を踏み入れた。そこは静寂に包まれた場所だった。音が全くしなかった。人の声はもちろん、動物の気配もない。死体だらけが散乱している光景だ。
「まるで死屍累々の世界だ」
主人公の一言が印象的であった。確かに彼の言うとおりだ。生きているものは誰でもいないように見える。
そんな町の中心部には巨大なクレーターができておりそこから黒い液体が漏れ出している。その周囲にはまだ黒紫色をした泥みたいなものが大量にある。それが徐々に広がっているように感じとれてしまう。
「レイ……これは?」
「次元の歪(ひず)み……と、昨日の二人ならそういうでしょう。ですが、これは違いますね」
「…空間が食い破れているニャ」
「こんなことをする人はおそらくカギトが言っていたような…化け物の仕業かもしれません。わずかですが…魔力が残っていますね。よっぽどお腹がすいていたのでしょうね。食い方が荒くて汚い…」
汚物を見るような目をしていた。
「それじゃ一体……ここにいる化け物はどんな姿なんだ?」
「カギトが言うには人間だといっていたニャ」
「どのみち、この空間はもうダメでしょう。いずれ、ここも崩壊しますね」
レイが小さく「証言者がいなくてよかった…」と呟いていたのが聞こえ、振り返るとレイはうっすらと笑みを浮かべていた。
しばらく進むと、建物の一部が破壊されていた。中から大量の血が流れ出ていたり、骨の一部があったりと悲惨なものだった。壁には傷跡のようなものもあった。明らかに自然ではないものだ。何かと戦った跡なのだろう。
ただ不思議なことに化け物がいない……。
「レイ……」
「どうしました?」
「敵がどこにいるのか分からないけど…近くには誰もいないニャ」
「……ふむ、なぜでしょうか?」
「さっきから気配探知を町全体に広げているけど、生き物の気配がまったくしないニャ」
「確かに、先ほどから妙ですし、この惨劇の痕からしてもこの付近にいたことは確かです。誰かに襲われた痕跡があるのに……肝心の姿が見えてきていない。カギトから聞いた特徴とは……いやな予感がします」
「一応、戻ったほうがいいかな?」
「……そうしたいですが、どうやら私たちの考えを察知し、近づいてくる者がいます」
「反応が二つあったニャ! ただ……これは……!?」
「え……どういうこと!?」
レイとチノルの表情が険しくなった。まさか……俺達を襲ってくるやつが現れたのか!? 俺は急いでタブレットからカードを一枚引き、身を構えた。相手の正体はわかっているから心置きなくやれるはずだ。
暗い廊下の先からゆっくりと近づいてくる。チノルが杖の先端から光の玉を放つ。光の玉は真っすぐに飛び、こちらにやってくる謎の生物に当たると同時に、その姿を拝むことができた。
「コイツは……!!」
「ゴーレムですね。しかも私たちが知るゴーレムとは違う。明らかに人工物……おそらくここの人々が自分たちを守るために造ったのでしょうね」
土や岩でできた人型の巨像を思い浮かべるが、今、目の前にいるそれは、全身が配線からパイプといったものが絡みこまれている。まるでその場に合ったものを引き寄せてくっついたかのようだ。その姿から禍々しく、人間の皮を剥いだかのような見た目に思わず俯いたくなってしまう。
これが……化け物。俺達はとんでもない化け物を倒さなければならないらしい。レイたちが警戒していた理由がよく分かった。こんな化け物を相手するのは初めてだ。緊張する。でもここで立ち止るわけにもいかない!
俺はカードをタブレットに差し込む。すると、カードに<武装化モードON>を押す。
「聖星の騎士プラチナ!! <武装化(アームド)ON>!! 闇よ暗黒よォオオお主の力は我にとって無に等しく散れ! <武装化モード、聖星の剣(ホーリースター)>!!」
名前はとっさに考えたというのは黙っておこう。決め台詞は印象付けるには大事だと師匠が言っていたことだ。
黄色い剣が左手に握られる。この場の闇が一斉に逃げるかのように主人公を中心に円を作る。そして主人公だけがスポットライトを当てられたかのように明るくなった。
「まったく恥ずかしくないのかしらね……」
「ンニャー……」
微妙そうにチノルは曖昧に返事した。
「妙に落ち着く光ね。でも、これで集中して戦える!」
「主人公は大人しくしててニャ。ここはレイに任せるといいニャ」
日は当に沈んでいる。こんな暗い場所で二体を相手にするのは難しい。ましてや攻撃手段をとるにしても片方が封じられてしまう。
主人公が剣から光を照らしてくれたおかげで攻撃に集中できる。役立たずだと思っていたのだけどもこんな時ぐらい役に立つのだと少しだけ嬉しかった。
レイは素早く自分自身に身体能力向上魔法をかけ、相手の機動力低下魔法をかけた。
よし! 上手くいった。
ゴーレムの動きが鈍くなった。手足に重石でも付けたかのように動くたびに地面がめり込むようにして手足が地面につく。
「<黒キ槍>ッ!!」
レイは手を上げた。手のひらに黒い槍が現れる。真っ黒に染まった槍は二メートルほどある。
槍を掴むことなく手を振り下ろすと槍はゴーレムに向かって飛んでいく。そのスピードは矢のように速い。黒い光が真っすぐとゴーレムへ向かっていった。
ゴーレムの身体に貫通した。ビキビキと配管が割れ、ガスのようなものを噴射しながらその場に倒れた。
「これがおいらたちの戦い方。まあ、レイと比べるとおいらの魔法は大したことがないニャ。でも連射はできるニャ」
チノルは杖で地面に何かを描いている。模様だ。どこかの国か世界かは分からない。ただ、それが師匠が使っていた文字呪文であることだけはわかる。
文字を書ききるとチノルは杖でトントンと軽く叩いた。すると地面に書かれた文字が光りだした。
<炎>からは赤く光りだし、<光>からは白く光りだし、<闇>からは紫色に光った。
「<バーンストーム>!!」
<炎>の文字が消えると同時にゴーレムの足場から炎の精霊がゴーレムを押し退けるようにして爆発した。炎の精霊の力強さは半端がなくゴーレムの体重を無視して転倒させる。
そこに畳みかけるようにチノルの魔法が炸裂する。
「<プリズムミックスミサイル>!!」
<光>の文字が消えると同時に七本の光の矢が同時に撃ちだした。一直線に矢が飛んでいく。その速さは目にも留まらないほど。破壊力はゴーレムの装甲を破壊するほど凄まじいものだった。
「<ダークセイヴァー>」
<闇>の文字が消えると同時にゴーレムの周りに三本の剣が召喚された。チノルの合図をと共に一斉にゴーレムの心臓を打ち抜いた。
「す……すげぇ……!」
見とれてしまうほど鮮やかな戦いぶりだ。レイたちの連携プレイは完璧であっという間に敵を倒したのだから。チノルも誇らしげにしている。レイは倒れているゴーレムを見つめながら息をつく。
「……つくづく腹立たしい。こんなおもちゃを用意させ、化け物が出たからと、退治に向かわせて……本当にこの世界の人たちは嘘つきが多い」
レイは「さっさと手に入れるものだけ手に入れて帰りましょう。長居は無用です」と一人で先に廊下の奥へと歩いていってしまった。
遅れてレイを追いかける。廊下には血まみれの死体があった。死体には腕や足のパーツなど、ばらばらになって散らばっている。
「うぅ……吐き気がする」
口をおさえながら慣れない死体をなるべく見ないようにして通る。この感覚にはどうしてもなれない。この場にいるだけで胃が逆流しそうになるほど気持ち悪いものだ。早くこの場から離れたかった。
廊下を抜けたところ、さらに下の階層へ下りれる階段を見つけるが、化け物の仕業かそれともゴーレムの仕業か瓦礫で埋まっており、下りることができない。
「面倒なことしてくれましたね」
「ニャ~……どうするのニャ」
「別の道を探したほうがいいんじゃないのか?」
「チノル、敵は他にいる?」
「ニャ~今のところ反応なしだニャ。ただ…さっきみたいにゴーレムとか防衛系の敵だと反応しないかもしれないニャ」
「それはどういうこと?」
「おいらの探知機はあくまで”おいらたちに殺意・敵意を抱いている”限定なんだニャ。つまり、殺意や敵意を見いだしていない対象はおいらの探知機には引っかからないニャ」
レイと俺はしかめた。チノルは気まずそうな顔になった。俺は思わずレイの顔を見ると同じようにこっちを見て苦笑いしていた。レイも同じことを思ったらしい。
チノルを責めても仕方がないが……。とりあえず、この場でじっとしていてもしょうがないと思い先へ進むことにした。
先にある部屋に入ると、そこには大量の書物があり本棚一杯に入っていたが埃をかぶっている。
一冊の本を手に取り、ページを開くと難しい文字で書かれておりとてもじゃないが読むことができない。
「この世界の言語は解読不可能です。まあ、魔力がこもっていそうなものは持ち帰りますが…あまり、多くは選ばないようにしましょう」
「あー…俺は…」
「そうでしたね。あなたは魔力を感知する術がなかったのでしたね」
俺はレイやチノルのように魔力を感知する術を知らない。あの青色の少女(ブルーアイ)に襲われたときも敵の攻撃に反応できなかったのもそのためだ。
「あなたがいても邪魔なので、隅っこで構っていてください」
冷たい言い方だったけれども俺にとってはありがたい言葉だ。俺は素直に言うことを聞き、部屋の隅に移動した。
レイは本を数点選んだようで袋の中に入れていた。チノルも同じように数点選んで袋の中に入れていた。
俺が手にしたのは一枚の絵本である。この世界の言葉がわからなくても絵なら読むことができる。世界共通で見ることができる。
題名はない。この世界で作られたもののはずだ。紙がかなり古いもので、この表紙はぼろぼろに風化しているが中は大丈夫だろうか? パラリと開くと挿絵には二人の少年が仲良く手をつないでいる様子が描かれていた。内容はどこにでもあるような普通のおとぎ話だがなぜか、分からないが、このとき、この本にはなにか重要なものが隠されているような気がした。
俺はレイたちにこの本を見せながら、袋に入れていいかと聞くと
「主人公が選んだのなら私は止めないわ」
「ニャ~右に同じニャ」
俺はこのとき、この本に隠されたものの正体を知ることになるとはこの時、夢にも思わなかった。
日が明るくなるころ、俺達は東の町を出て、本の掘り出し物以外何もを得られずにトクトたちがいる町へ帰ってきた。
化け物は結局見つからず、俺達は任務を達成できなかった。
トクトがなにか文句を言うと思ったら、拍子抜けするぐらい何の反応もなく、むしろ、「もう行ってきたのか!? 早いな! ご苦労!」と言ってきただけだった。どう考えても怪しく感じるが今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
ひどく疲れた。今日は風呂に入ってさっさと寝たい。疲労が限界に達していたからだ。
ベッドにつくとレイは意味深につぶやく。
「あれはいったい何なのかしら?」
「ンニャー?」
「チノルはわかるか」
「全然分からニャいけど……嫌な雰囲気はあったニャ。なんかよくないことが起こるような予感だニャ。まあ、気にしてもしょうがないことだニャ。忘れようニャ」
その通りだなと俺達三人は眠りについた。
***
次の日、奇妙なことが起こり始めた。それは町の住民のひとりが倒れていた。目が白くなって仰向けに倒れていると通報があった。
現場に駆け付けるとトクトたちもすでに到着していた。
「これって……!」
俺達には見たことがあるものだった。東の町へ行く途中で倒れている死体があった。その死体の特徴がこれと同じだったのだ。
「ああ、東の町の伝染病と同じだ」
「伝染病?」
トクトが俺達にひっそりと教えてくれた。
「東の町で起きたことはここの住民には秘密にしています。謎の伝染病としてこれ以上住民を怖がらせないために」
「ああ~ついにこの町にも……」
「なんということだ……」
「おいッ! 町長!! なんとかしろよ!!」
「俺達を殺すのか!?」
「町長!!!」
町の人たちはパニックになっていた。無理もない感染症として話が広がっているのであれば、この死体を通じて周りにもうつると思われてしまう。
トクトを守るようにカギトがこの場を収めようと前に出た。
「みなさん、落ち着いてください。この方のご家族の方は速やかに火葬場へ連れて行きます。ですから、今は皆さんは消毒をして、防護服を身に着け、しばらくは家から出ないようにしてください。あとは我々が対処します」
カギトへの信頼が篤いのか住民は納得した様子でこの場から去っていった。
「お見苦しいところを見せました」
カギトは謝っていたが、俺達は別に関係はないと首を横に振った。
俺たちは部屋に通され、しばらくは出ないように言いつけられた。無理もない感染者がまた増えたのだから……。
しばらくするとカギトが俺達に会いたいと申し出て来たので、部屋を移動した。
「疫病について知っていることがありましたら教えてください」
俺たちの世界にはこんな病気は見たことがなかった。この世界独自の病気なのだと思うが、別世界の俺達にこうまで話しを聞こうとするなんて中々いない。
レイが考えた後口を開いた。
「そうですね……まずは死体の状況が似ていたわ。ただ、それだけね。死体の状態は詳しく知らないわ。でも……あの時よりも状態が悪くなっているように見えた」
「やはり、そうなんですか……」
鍵とは頭を抱え込んだ。あのときの恐怖が蘇ってくる。
「あなた方も、もし具合が悪いなどの自覚があれば、早めに手当てをしなさい」
「分かりました。ところで……ひとつ聞きたいことがあります」
レイはずっと考えていることを口にした。
「前、自己紹介の時に……あぁ、主人公から聞いたんですが、『東の町の役人をしていた』と話していたのですが、それはいつ頃でしたか?」
「あっえぇ……何年だっけか……?」
「覚えていないと?」
「なにせ覚えることが多くて、あっそうだ上手い食事があるんです今日はそこでどうでしょうか?」
急に話題を変えてきた。何か言いたくない雰囲気だ。
「質問を変えます。私たちは東の町へ化け物退治に行きました。ですが、化け物から逃げて来たであろう死体の山が道沿いに転がっていました。みんな感染症と同じようにして死んでいました」
カギトの額から汗が流れ出たのをレイは見逃さなかった。
「それに、東の町へ入った時、おかしなことがありました。ゴーレムが私たちを歓迎してくれました」
「それは、大変でしたね」
他人事のように話す。
「……おかしいんじゃありませんか?」
「なにがです?」
「ゴーレムは本来、住民を守るためにいるもののはず、それが化け物を攻撃せず、私たちを襲うのはおかしい。なにか知っているのではありませんか?」
カギトは口ごもる。
「なにか隠していることは正直に話してください。そうでなければ、私たちはこれ以上、あなたたちの手伝いはなにもできません」
レイがそう言い終えると、カギトは何も言えず黙り込む。
そうまでして言いたくないなんて、カギトは誰かを庇っているのか。
「レイさん、申し訳ないですが、それ以上はいう事はありません。俺はあくまでそういうように指示されただけなのです」
「それはどういう……」
「すべてをお話します」
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