3話 ▽太陽神アマテラス
一面真っ白の部屋に、神秘的な雰囲気を漂わせた美女と灰色の髪色をした少年が佇んでいた。
美女は長い黒髪に赤いメッシュとインナーカラーが入っており、その佇まいは上に立つことに慣れた者の風格を思わせる。
「いや愛してるとは言ってねーよ殺すぞ!!!!」
美女は暴言を吐くと傍にあったゴミ箱を蹴飛ばした。
蹴飛ばされたゴミ箱は壁にめり込んで離れなくなり、どことなくゴミ箱からは物悲しい雰囲気が漂い始める。
「ヒィッ、物に当たらないでくださいよ!そんなんだから他の神々に太陽神は戦争の神とか言われるんですよ!?」
灰色の髪をした少年、もとい時の神クロノスは頭を抱えて美女に言うが、太陽神は聞く耳持たずの様子だった。
彼女は太陽神アマテラス。
この異世界を統べる神であり、古の神々との戦に敗れて魂を半分に割られたアーサー王の生まれ変わり、リラを死後こちらの世界にに連れてくるように命じて半分になった魂をくっつけさせた張本人である。
「何故彼奴が召喚されているのじゃ、妾は許可した覚えはないぞ!」
「一応死んでから魂自体は保管されてて、その関係で召喚サークルの一覧にも入っていたらしいです。
実は召喚されそうになった人を押しのけて入っていったらしくて」
「ああ、四番目のやつか。そういやアイツ死んでおったな」
何百年前じゃったっけ、と彼女は首を捻った。
「クロノス、分かっておるじゃろう。
アーサーは敵によって魂ごと半分にされて死んでしまった時、兄であるケイに飲み込まれてしまった。
なんとか妾が殺したが、アーサーの魂の半分は地球に流れ着いた。
やっと見つけてくっつけたのに、記憶喪失の状態で一番ヤバイヤツを引き当ててしまう始末」
アマテラスはゴミ箱を引き抜いて床に置くとクロノスの方を向いて壁の亀裂を親指で指さした。
クロノスが溜息をつきながら亀裂を撫でると壁は元の綺麗な状態に戻った。
「あやつの能力は『気分の高揚による巨大化』だ。
弟が殺されて心が不安定になった状態で敵を手当たり次第に殺しているうちに鬼になってしまった。あやつは今リラの前で精一杯優男の面を被ってる筈だ」
分かるじゃろう、と太陽神は続ける。
「リラは何も知らない。自分がアーサーでケイが義理の兄であることも、今自分が命の危機にあることも」
「今リラに危険が迫っているのだ。妾は降臨すれば信者共に気取られてしまう故行けぬ。
クロノス、お前が行け」
クロノスはええ……と声を出して嫌な顔をしたが、アマテラスが行けば信者はまだしも、それこそ戦闘の余波でリラを殺してしまうと思いいやいやながらも行くことにした。
「―――承知しました」
うやうやしく頭を下げてクロノスはこの場から姿を消した。
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