第26話 ルカ・ラング
修道服に着替えたルカ・ラングと改めて顔を会わせる。
「どうも……」
気まずそうに唇を尖らせて頭を下げるルカ。
はっきりとした目元、しなやかだが引き締まった体つき。裸を見られたと言うのに、まず攻撃したことを謝るところを見ると体育会系の印象を抱いた。
「いや、こっちも知らなかったとはいえ、入浴中邪魔して悪かった……悪いのはだいたいこいつで」
ベイルの首根っこを掴む。
「はいはいどうせ俺のせい俺のせい」
肩をすくめる。
こいつ、回復魔法を一切使っていないと言うのに、自力で復活して、全く何事もなかったかのように元気に動き回っている。
「いや、本当にテメェのせいだろうが!」
ルカがベイルの胸倉を掴み上げ、今にも殴りかかりそうな勢いで顔を近づけ間近に睨みつける。
「ぼ、暴力反対……!」
「テメェ、どうしてこの場所を知っていた⁉ まさか兄貴にチクったわけじゃないだろうな!」
ブンブンと必死に首を振るベイル。
「なるほど、不良シスター……」
メチャクチャ口調が乱暴だ。
「兄貴にって、スタン隊長に知られちゃまずいんですか?」
ロッテが不思議そうに尋ねる。
「そ、そりゃあ……」
ルカは視線を逸らして、ベイルの体を離した。
喉元が解放されたことで、ベイルは得意げに、
「そりゃ気まずいよな。日課の滝行に行くって言っておきながら、実はこんな隠れ露店温泉を見つけてこっそり修行サボってつかってるなんて」
「………ギッ!」
「おおこわ」
なるほど。
「ルカっていつもこんな調子の女の子なの?」
「いえ……口調はぶっきらぼうですけど真面目で献身的なシスターの方ですよ?」
「そんなもん表の顔だよ」
岩場にルカは腰を落とし、足を組む。
「酒は飲むな。人には優しく当たれ。金は無駄遣いするな。貞節は守れ。戒律戒律ばっかでやってらんないっての。たまにはこうやってサボらなきゃ」
「でも、ベイルにバレてるってことは、たまにはじゃないんじゃないか?」
「…………」
プイっとルカは視線をそらしてしまった。
「ベイル。このルカを加えて『黄昏の花』探しにメリダ渓谷に行くのか? 回復役が必要なほどその場所は危険な場所なのか?」
「いんや。べつに。ここにはルカの裸を見に来ただけ」
バキッ! バキッ!
俺とルカの拳がベイルの顔面にヒットした。
「だから、俺王族……」
「わざわざ来なくてもよかったじゃないか。全く無駄足を踏ませて……悪いなルカさん。憩いの時間を邪魔して」
頭を軽く下げ、その場を後にしようとする。
「待ってくれ」
「ん?」
「レクス……さん。あんた、『黄昏の花』を探しに行っているのか?」
「そうだけど、こいつの依頼で」
ベイルを指さす。
ルカは目を細め、
「……知らないの?」
と、小さく尋ねるでもなく、呟いた。
「知らないって……何が?」
「え? そんなこと言った?」
尋ね返すと、細めた目をパッと見開き、すっとぼけたようなリアクションをとった。
「そっか、そっか、レクス……さんたちは『黄昏の花』を採りに行くのか。じゃあついて行くよ」
「え? いいのか?」
「ルカさんは頼りになりますよ。シスターだから回復魔法が使えるだけじゃなくて医学にも詳しくて薬の調合で使うから植物にも詳しいんです」
なぜかロッテが胸を張る。
「そこの追放王子は一応回復役を誘う
ルカは胸元を親指で指さし、
「改めて、オレはユノ村シスター、ルカ・ラングだ。よろしくな、レクス・フィラリアさん」
シスター、ルカ・ラングが仲間に加わった。
……オレッ娘かぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます