第12話 ヒカリダケを見つけよう!

「君が……スタン、さんが言ってた助手?」

「はい! 隊長から勇者様の元お仲間のサポートができるなんて光栄ですぅ! 今日からレクス殿の身の周りの世話をさせていただきますのでどうぞよろしくお願いしますぅ。奥様も」

「…………」


 【魔王】は警戒心を隠さずにロッテを見る。

 そんな【魔王】の様子に気が付かず、ロッテはにっこりと笑顔を向ける。


「ところでレクス殿! ヒカリダケはもう見つかりましたか⁉」


 ずいっと距離を詰めて聞いてくる。


「い、いや、まだだけど……」

「そうですか。それは良かった」


 ニコニコと笑う。

 そして、ロッテは落ち葉を突然蹴り上げた。


「ヒカリダケはこうやって見つけるんです!」


 舞い上がった落ち葉の下には、青白く光っているキノコが一株。


「おぉ……」


 思わず感心してしまう。

 ロッテは誇らしげにヒカリダケを一株採取し、俺に渡す。


「この森の事ならお任せください。私、十六年間ずっとこの森を遊び場に過ごしてきたんです」


 この調子でガンガンとっちゃいましょう! と、ロッテは落ち葉を次々と蹴り上げる。

 バサッと【魔王】もロッテのマネをして蹴り上げる。


「ちょ」

「…………」


 いきなりの事なのでびっくりしてしまった。

 舞おちる茶色い木の葉。

 それをどこかぽーっとした表情で【魔王】は眺めていた。


 バサッ!


 そして再び蹴り上げ、木の葉が落ちる。


「……楽しいな」


 【魔王】の口角が若干上がった。


「ですよね!」


 ロッテも微笑み返し、二人がどんどんどんどん落ち葉を蹴り上げていく。

 まるで、無邪気な子供の様だ。

 木の葉舞い散る中で遊ぶ二人の子供。ひらひらと舞う木の葉がゆっくりと宙をただよい、段々と雪のようにも見えてきた。



 そんな木の葉蹴りを一通り遊びつくした【魔王】とロッテだったが……。



「全然見つかりませんでしたね」

「うん……」


 ヒカリダケは2株しか見つからなかった。最初に見つけたのと合わせて3つ。依頼達成目標の30株には全然問数字だ。


「ロッテ、こんなにもヒカリダケって見つからないものなのか?」

「う~ん……今は時期でそこら中に生えているはずですけど、ヒカリダケって食べてもおいしいし胞子は集めて灯として使えるから需要が高いんですよ。だから、この村に近いエリアのヒカリダケはある程度狩りつくされたのかもしれません」

「そうなのか。まぁランク1の依頼だから腕に自信がない奴は気軽に受けるよな……」


 じゃあ、今日のところはお開きかな。

 この依頼は期限が近いわけでもない。のんびりとヒカリダケを見つけて納品すれば大丈夫だ。

 帰ろうと踵を返した時だった。


「どこに行く?」


 【魔王】が俺の服の袖をグイっと引っ張った。


「まだヒカリダケを取ってないぞ」

「見つからないんじゃしょうがないだろ。出直そう」

「やだ」


 やだ、って。

 振り返ってよく見ると、【魔王】の眼は少年のようにキラキラしていた。

 初めての遊びを覚えたての少年の目だった。もっとこの楽しい遊びをしていたい。まだ帰りたくないと駄々をこねる。そんな少年の瞳だ。


「…………あのなぁ」

「奥様の言葉にも一理ありますよ」


 何とか【魔王】を説得しようとしていたが、真剣な顔をしたロッテに阻まれる。


「ヒカリダケは大きくなるのに三か月ぐらいかかかるんです。一日二日でまた新しく映えるわけじゃない。それに、ここら辺をすでに狩りつくしてるってことは、他の場所も狩りつくされてる可能性はすでに高いですし、時間をかければかけるほど高くなります」

「まぁ、そりゃ言われたらその通りだが……」


 時間をかければどんどん失敗する可能性が高くなるということか。

 ランク1の依頼はそういう欠点がある。難易度が低い分だけ、みんながみんな受けてしまうから、出遅れてしまうと、今回のように狩りつくされて難易度が逆に上がってしまうと言うケースがある。


「ロッテ、穴場みたいなポイント知らないか?」

「ありますよ!」


 待ってましたと言わんばかりに食い気味で返事をする。


「ただ……ちょぉっと危険な場所なんですけど……」

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