幕間:ミコラの不満
カズトに家まで送って貰った後、俺は湯船に浸かったままぼんやり考え事をしてた。
ま、今日は親父達も風呂済ませてたし。少し位長湯しても、怒られねーだろ。
……しっかしよー。
ロミナ達と仲間で、ほんと良かった。
俺が感情を隠しきれなかったってのは分かるけどよ。結局俺の力になりたいなんて言ってくれたんだぜ。
確かに聖勇女パーティーとしてずっとやってきたけどよ。そんな事言われたら、こっちだってジーンとくるじゃん。
流石に泣きはしなかったけどよ。ほんと危なかったぜ。
それにカズトもカズトだよ。
どんだけお人好しなんだよ。
確かに俺はお前の言葉に複雑な気持ちだったぜ。でも、あいつもあいつなりに俺達の事考えてくれてた。だから嬉しくなかった訳じゃない。
だから謁見終わった後、あいつが一人で頭冷やしてくるって去って行った時。俺はあいつが俺達を思って王子達に生意気な口聞いた事を、反省したんだって思ってたんだよ。
昔もああやって、俺達の為に無礼働いた事あるし、それを咎めた事もあったし。
それなのに、裏では俺の気持ちを察してくれて、この国の危険の事考えてくれてるとか。
どんだけあいつ、こっちの事思ってくれんだよって話だろ。
宿の前でどやりやがった時は驚いたけどよ。今考えたら、あいつらしいっていうか何ていうか……。
自然とあいつの笑顔が浮かんで、俺は思わずにやけそうになっちまう。
ったく。
ジャバジャバっとお湯を顔にかけて、火照りそうになった頭をごまかすと、俺は湯船を出て風呂場から更衣室に移った。
タオルで頭を拭きながら、ふっとこの先の事を考える。
明日、カズト達は宮殿に忍び込むんだよな。危険を犯してまでよ。
……ったく。なんで俺じゃないんだよ。
確かに俺じゃ、女王とまともに話なんてできねーかもしれねーけどよ。無茶するなら俺だったろって。
しかも皆して一緒に行くとか言い出してるし。
……やっぱあいつの方がいいのか?
……いや。
何となくカズトはそんな理由で相手を決めねー気がする。
それでなくたって、ずっと一人で行こうとしてたし。
くしゃくしゃっとタオルで髪を拭きながら、俺は少しだけイラッとしちまう。
あそこで俺が選ばれなかった事に。
まあでも、カズトを責めても始まらねーもんな。それでなくたってあいつ、自分から女王の元に忍び込むなんて危険を冒そうとしてんだぜ。俺の為にさ。
一旦洗面台の鏡に向かい、俺は自分の顔を見る。
……俺が言ったんだ。
この国で何かあったら救いたいって。力を貸してくれって。
だから、この事にあいつがどんな選択をしても言いっこなしだ。あいつらを信じてやらなきゃ始まらねーし。
「……とはいえよー」
くしゃくしゃっとタオル越しに軽く頭を掻いた俺は、タオルを首にかけると、近くにある下着や服に着替え始める。
いや。やっぱ待ってるって性に合わねーんだよな。大丈夫なのか心配で落ち着かねーじゃん。
明日は絶対深夜の行動だろ? 家でじっとしてて、翌朝結果を聞くなんて焦れってーし。明日はあっちの宿で皆と待つとするか。
寝巻きに着替えた俺は、鏡に向かったまま顔をピシャリと叩く。
おっし。
皆が力を貸してくれるってんだ。俺もこの先の事少しは考えるか。
何たって俺はフィベイル出身なんだ。俺にできる事だってあるはずだし。たまにはあいつらを見返さねーと。
まずは──。
「ミコラおねーちゃーん。お風呂あがったー?」
「ん? 上がってるけど。ミケ。どうした?」
「ミトラおねーちゃんが、一緒にお菓子食べよーって」
「お、マジか。今行く」
うん。
やっぱり最初は腹ごしらえだな。
ミトラの奴、今日は何用意してるんだ?
あいつ、お菓子のチョイス良いしな。超楽しみだぜ。
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