幕間:素直過ぎるキュリア

 カズトが部屋を出ていった後。少ししてロミナ達、部屋に帰って来た。

 でも、機嫌を伺ってて、あの事、話そうとしない。


 きっと、私が暴れたから、怖かったのかな?

 だから、話しにくいのかな?

 そう考えたら、何か自分、嫌な子に思って。

 そんな子じゃ、カズトに嫌われちゃう。そう思って。


「ごめんなさい」


 私、すぐに謝った。


「え?」


 皆、ちょっと戸惑った顔、見せた。

 でも、ちゃんと話さなきゃ。


「ロミナ達、きっと沢山悩んでくれた。それなのに、嫌だからって、怒って話、聞かなかった。だから、ごめんなさい」


 カズト、ちゃんと話せって、言ってくれたから、頑張った。

 そうしたら、ロミナ達、少しほっとした顔、見せたの。


「え? あ、うん。こっちこそ、ごめんね」

「こっちも随分無理強いしてしまったものね。ごめんなさい」

「それで、謁見の話なんじゃが……」


 ロミナとフィリーネが、頭を下げてくれた後。恐々と、ルッテがその話、してきた時。ほんとはちょっと、嫌な気持ちになった。


 でも、カズトと約束した。

 だから。


「いいよ」


 そう、返事した。


「はっ!? 本当にいいのか!?」

「うん」

「じゃが、あの王子と会うのは嫌なのじゃろう!?」

「嫌。でも、我慢する」


 嫌な気持ち。勿論あったよ?

 でも。その時、カズトが小指を絡めて、約束してくれた事、思い出したの。

 笑顔のカズト見ると、元気になる。だから、また笑って欲しくて、頑張った。


 そうしたら、皆も安心した顔、してくれた。

 皆が笑ってくれるの、やっぱり嬉しい。


「お部屋の掃除までなされたのですか?」

「うん。私、汚しちゃったし。でもカズト、手伝ってくれた」

「そうなのですか」

「うん。カズト、優しかった」


 私、そう言ったら、アンナも笑ってくれた。


「では、お紅茶でも淹れますね」

「アンナ。手伝う」

「良いのですか?」

「うん」


 きっといい子にしたら、カズトにまた、誉めて貰えるかな。

 そしたら、カズトにまた、頭撫でて貰えるかな。

 撫でて貰えたら、嬉しいな。


 そんな事考えながら、私、アンナのお手伝いもした。


   § § § § §


「しっかしキュリア。お前カズトとどんな話したんだ?」


 皆で席を囲んで、クッキー食べながら、紅茶を飲んでたら、ミコラが質問してきた。


 どんな話……いっぱい、お話したよね。


 カズトとミサキの話、聞いたっけ。ちょっとカズト、寂しそうだった。

 その後、私の愚痴、聞いてもらった。

 カズトに、どうしたいって聞かれて、正直に話したし。

 カズトに仲間を傷つけちゃダメって、ちょっとだけ怒られた。ううん。きっと怒ってない。注意、してくれただけ。優しかった。


 いっぱい、お話した。

 でも、これ話したら、カズト、怒っちゃうかな?

 カズトと私、二人だけのお話だし。


「内緒」

「え?」


 私がそう返したら、皆、意外そうな顔、した。

 そういえば、今まであんまり、隠し事、しなかったかも。


『良いじゃないの。あなた達だって、カズトと二人っきりの話、ここでできないでしょ?』


 テーブルの上のアシェ、そう言ったら、皆、少し顔を赤くして、困った顔になった。


「え? ま、まあ、確かにそうかもしれないわね」

「お、お二人で話されたのですし、話しにくいお話もあるでしょうし」

「そ、そうだよな。悪い。キュリア。変な事聞いて」


 ……何か、変な反応。

 でも、カズトと皆、二人っきりの時の事。確かにちょっと、気になる。


「ううん。皆、カズトと二人っきりの時、どんなお話、してるの?」


 試しにそう聞いたら、皆、慌てふためいた。


「キュリア。あなただって内緒にしたでしょ? だから内緒」

「じゃあ私、話したら、話してくれる?」

「ば、馬鹿言うでない! お主に無理強いさせるようではないか!」

「無理じゃないよ。皆、話してくれるなら、私、話すよ?」

「話さなくって良いって! 俺が悪かったから。な?」


 凄く、皆、必死だけど。何で、こんなに隠すんだろ?

 ……あ。そっか。


「分かった。じゃあ今度、カズトに聞いてみる」


 うん。それがいいよね。

 また二人で、お話できるし。

 そう、思ったんだけど。


「キュリア。そ、それはカズトにもご迷惑になりますよ!」

「そ、そうよ! 流石にそれはお止めなさい!」

「あ、あいつだって話したくねーかもしれねーじゃん!」

彼奴あやつに嫌われても良いのか?」

「そ、そうだよ。あんまりわがまま言うと嫌われちゃうよ!?」


 必死に、皆に止められちゃった。


『そうね。流石にそれは止めておきなさい。絶対カズトも困るわよ』


 アシェだけ、ちょっと楽しそう。

 でも、私、カズトに嫌われちゃうの、やっぱり嫌。


「わかった。聞かない」


 私、我慢して、紅茶飲んだ。

 残念だったけど、皆、凄くホッとしてるの、ちょっと面白かったし、いいかな。

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